まだあたりは真っ暗の中、真っ赤な火の粉が舞う

     2000年1月15日(土)

< 賑わい会のトント >

肝川賑わいの里の車宮司から「15日に、トントするよ」と知らされた。
お向かいの明子さんと共にイソイソと出かける。
6時と言えばまだ真っ暗、何にも見えない。でも田んぼを見ると、10メーター以上に
青竹を積み上げて組まれた山のシルエットがうっすらと見える。アッチからもコッチからも
しめ縄や、お鏡もちをさげた人が集まって来る。

小山のスソに火をつけると、竹の葉に一瞬にして燃え広がり、空高く火の粉を舞い揚げた。
太い青竹が燃え出すと、
バチッ、バチッと、すごい音をたてる。豪快だ!

火力が強くなると熱くて近寄れない。離れて真っ赤な炎を見つめる。スゴク幻想的だ
持って来たしめ縄を火の中に放り入れる。
段々空が明るくなって来て、山の輪郭や、人影が分るようになる。長い竹の先をナタで
割って、大きな鏡もちを挟む。いつの間にか出来ている竹の台にそれを立て掛け、強火の
遠火で柔らかくなるまで焼く。

村の人達にとっては、昔から毎年恒例の事ではあるけれど、私にとっては何もかも珍しい
こと、明子さんも「私70年近く生きて来て、こんな素晴しいこと、知らなかった!!」
と、超興奮気味。

「どこから来なさった?」と、85歳のお婆さんが話し掛けて下さる。「わたしはの、昭和
19年に、紫合(ゆうだ)から、この肝川に嫁いで来てのー、その時にはここに観音堂があ
ってのー・・・」と話は尽きない。側では、1歳、3歳、5歳位の幼児が走り回っている。
何だか懐かしいよーな光景だ。

この火で焼いたおもちは家に帰って、小豆粥の中に入れて頂く。そしておもちを挟んだ竹は、
龍の口とも言い、それを持って、自分の家の周りを3回まわれば、厄払いになるという。

このトントはどこの地方にも残っており、Flower さんのふるさと山梨県では、
「ドント焼き」と呼び、子供の頃は、大きな櫓を立ててそこに寝泊まりして15日を待った
そうだ。
そしてこの15日の「小正月」には、米の粉で作ったおダンゴを柏の木か何かに沢山差して、
この火で焼いて食べると「無病息災」風邪もひかないと言い伝えられているそうな。。

今日もまた、肝川のやさしい人達に囲まれて、楽しい体験が出来た。