2004年12月16日


< 手術は人なり >


ゆみたんのお城、大製薬会社の図書室で、子宮癌に関する文献を見せてもらった。
だってさ、治療や手術については、信頼する正人センセに全てお任せしていたし、説明も充分受けてたし、余計な知識は持つ必要はない。と思って、なーんにも調べてなかったから・・・

ちえりんが子宮癌に関するウエブサイトのURLをいっぱい教えてくれてたけど、開いてもいなかった。ま、それまでに身辺に同病の人が数人いたから、その際にある程度の知識は得たし経験談も聞いている。

でもしかし、今日ゆみたんとここで待ち合わせて、膨大な医学専門書を見ているうちに、ちょっとひもといてみようかな・・・という気になったんだンダ。。


 

医学のおべんきょ・・・      ゆみたんのお城

 

 おいらにゃちょっち刺激が強い!    御堂筋のイチョウを踏みながら難波ー淀屋橋を歩いた


さすがにここにある書籍は、普段街の本屋さんで見かける本とは内容が違う。
専門的だ・・・そりゃあたりまえネ!
手術台で麻酔がかかってる間に、我が身に起こっていたことが、手に取るようにわかる。
ふぅーん、広汎子宮全摘術とは、こうして切って、こうして取り出して、こうして縫い合わせて・・・

手術経過のカラー写真を見、イラストの説明を読んでる内に手術と言うものは、医師の知識と経験、そして人柄を背景とした全人的な技術を駆使する手仕事だと感じた。



入院中に読んだ『癌を語る』(佐藤武男著・元大阪府立成人病センター総長)という本の中では「手術は人なり」と、記しておられる。以下に
その一部を抜粋させていただく。


手術が始まると、術者の手はシナリオ通りに自己の脳が命ずるままに迅速に動き始め、切開し、血管を結紮し、切断し剥離する。これらの運動を根気よく繰り返しているうちに、やがて癌を持つ臓器と所属リンパ節が一塊として摘出される。まさに脳の延長が手であり、その触覚と運動を組み合わせて手術が進行する。

(中略)こうして繰り返し手術を重ねながら、よく考え、一つ一つの指の動きについて反省し、より良い動きを求めるうちに、自然に手術のコツ、そして手術のスピード感、リズム感が会得され、身につく。

(中略)同じ手術をしても、術者の個性によってそれぞれに特徴がある。これは「文や書画は人なり」と言う言葉が手術にもあてはまり、「手術は人なり」と言う事ができる。

・・・(略)文も書も個人の行動様式の中の最大の表現だといえよう。手術と言う手仕事にもまた同じような事が考えられ、文筆、絵画を創作する精神作業と実によく似ている。うまく表現できると芸術的美となるが、もたもたすれば泥臭くなってしまう。メスの運び、ダイナミックな手の動きは、書画を描く時の線の流れ、つりあいなどと相同である。

手術はまた文を作るという精神作業にも似て、術者の思考の流れの表現である。部分部分の細密描写に優れた人は、一つ一つの部分を丁寧に剥離し、自分で納得しながらゆっくりと手術を進める。また事象を総括的に眺めて考える人は、手術全体のポイントを迅速に把握し、意思決定も早く、熟達者では流れるがごとく手術が進行し、手術時間は短い。

・・・(略) 同じ手術をしても、熟達した医師であれば、出血量は少なく輸血量も減少し、手術時間が短い。しかも術後合併症も少なく予後がよい。

志岐センセが、山嵜正人センセを尊敬して力説しておられたのはまさしく
この事だろう。「普通7時間もかかる手術を半分の時間でして下さった。よくある術後の合併症など、この病院ではほとんどありません。」と、、、

そしてまた、美学者・張源祥先生の」口癖、「世の中の事は全て
真・善・美、根底は同じなのです。」と言う言葉が蘇ってきた。