武宮正樹vs加藤正夫
なんて楽しいのだろう!
たったあれだけの道具で、何時間でも飽きることはない。
黒い石と白い石と碁盤、たったそれだけでいい。
それすらなくても、紙に碁盤目を書いて、鉛筆で交互に書き込んでいっても出来る。
何とシンプルで、何と奥の深いゲームであることか!
普段から、ゴルフとテニスで体の運動は足りているのだが、
年と共に忘却力が増すのに不安を感じ、「頭の運動」の必要を感じた。
丁度、近くのカルチャーセンターで、「コントラクトブリッジ」の講座が始まった。
以前から興味のあったことでもあり、早速入門した。
先生は全国ランキング5指に入り、海外対抗にも日本代表の一人として参加されるという腕前。
それから3年懸命に取り組んで、何とかクラブでプレイすることは出来るようになったが、
高度になるにつれ、力を維持し、クラブのメンバーについていくためには、
週に1回が2回、3回と増えてゆき、時間的に厳しくなってきた。
自分と同程度のパートナーが要る。又プレイするには4人が不可欠。
そんな制限に加えて、何より「此れは自分には向いていない」と感じるようになった。
確かに頭の運動には良い。 しかし楽しくない。
真剣にプレイする緊張感はあるけれど、ちっとも楽しくない。
そんな時、フト「愛好者の多い囲碁ってどんなものなんだろう?
ちょっとその世界を覗いてみたい」という誘惑にかられ、
「1週間で囲碁が打てる」と言う本を買い求めた。
1週間経ったら打ってみたくて仕方がない。
丁度我がブリッジ教室の先生のお父様がいつでも相手をして下さると言う。
「これ幸い!」毎週1回お家にお邪魔して、対局していただいた。
タバコを吸いながら黙々と打って下さるのだが、9つ置いても、いつも全部殺されてしまう。
口で教えて下さる訳ではないから、何も分からない。
自分は入門したばかりなのだからこんなものなのかと思い、一隅でも生きたら大喜び!
今から考えたら相当ヒドイ、「お話にならない」とはこのことだろう。
そうこうする内、ゴルフの仲間やテニスの仲間に囲碁の有段者が居ることを知った。
ゴルフの時はゴルフの話だけ、テニスの時はテニスの事しか関心がないので、
全然気がつかなかった。その後チャンスがあるたびに、お相手を頼んだ。
気のおけない人達だけに、批判も手厳しい。
「ナニ〜〜、そんな手を打ってバカじゃなかろか」
「ヘー、そんな一目が欲しいか」
「まだ投げないの??ーー」etc、etc…
まあ、そんなこんなで3年経ち、やっと4級といったところか…
入段を目標にするも、この年からではチト時間切れになるのではないかと恐れている。
しかし囲碁は楽しい。相手はひとり居れば出来る。
腕に差があっても、置き碁で何とか勝負できる。
囲碁の事を『手談』とは良く言ったものだ。何も喋らなくても石と石とで話ができる。
盤上で気の合う人も合わない人もある。あっさりした人もネチネチした人もいる。
もうのめりこんでしまった。一生止められないだろう!