JTU第2種公認審判員認定試験問題 解答例

全国実施日:1998年2月22日


 (TC)印は、技術委員会(Technical Committee)が想定した解答例である。記述式の問題は、採点が難しいが予想以上のできであった。満点に近い受験者も多数いた。そのなかで総合的に秀でていた佐賀県の白井誠氏と神奈川県の松岡喜久夫氏(以下、敬称略)の解答を本人の了解を受け掲出した。


問1 次の文章を読み、設問に答えてください。(2点×7 = 14点)

 審判員は、ルール違反を判定するばかりでなく、競技者が達成した『記録を立証』する立場にある。トライアスロンでは、競技のすべてを監視することが難しく、個々の審判員が、適切に役割を果たし、違反があれば確実に審判長に報告しなければならない。 一方で、審判員の誤認は起こりえることである。このため、競技者には《抗議する権利》が認められる。審判員は、技術代表、大会実行委員長などと“ルール違反の原因”に係わる報告を受け、裁定をくだす。

設問1 審判判定に抗議できないルール違反は、どのようなものがありますか。

(TC)ドラフティング、危険行為、スポーツマン精神違反など。
(白井)ドラフティングル−ル違反・危険行為・スポ−ツマン精神に反する言動
(松岡)ドラフティングル−ル違反・危険行為・ボトルの不当投棄・マナ−違反行為など

設問2 上記で、抗議できない理由は何ですか。

(TC)審判員の判断による判定は、再現できない。また公認された審判員の判断をよりどころとしなければ大会は成立しない。
(白井)違反したとされる現場を再現できないから
(松岡)違反行為が発生した状況を再現することが不可能なため、審判員の判定を信頼する

設問3 ルール上、抗議は受け入れられないが、審判長は、この競技者にどのようにして状況を納得してもらう。単に、「ルール上、受け付けない」としてよいでしょうか。

(TC)十分な状況説明を行う。納得の行くまで説明することが求められる。運営部分の不備が認められたら、これを再現できないが、来期への改善を約束する。
(白井)ル−ル上、抗議は受け入れられないが、審判構成などに関する改善要求はできる旨をていねいに説明する。
(松岡)競技者の主張を聴いた上で、審判員の誤認による処罰対象者の間違いの可能性も考慮すると共に、違反の起きた原因が大会設営・運営上の問題と思われる場合、それを加味した最終裁定を下すべきである。

設問4 審判長の裁定に不服がある場合は、次にどのような方法がとれますか。

(TC)口頭/書面で、抗議することができる。
(白井)抗議することができる。
(松岡)事実誤認による不当な裁定と考える時は、文章で状況を説明して裁定の変更を求める

設問5 上記で納得できないとき、競技者は、次にどのような措置をとれますか。

(TC)大会上訴委員会への上訴。
(白井)大会上訴委員会に上訴することができる。
(松岡)大会上訴委員会に対し、書面を以て裁定内容についての審査を求める。

設問6 大会上訴委員会は、技術代表を含め各団体の代表者3名から5名で構成されますが、構成メンバーの要点は何ですか。

(TC)同一団体から組織しないで、公正の論理を確保する。
(白井)主催者側、技術関係などの各々の立場の代表者で構成し、競技者の権利を守るため、いわゆる三権分立の観点で行う。
(松岡)所轄団体を代表する者、大会主催団体を代表する者、医療スタッフを代表する者から構成される。所轄団体とは、JTU主催・共催大会にあってはJTUである。

設問7 大会上訴委員会の裁定を承諾できない場合、競技者は、次にどのような方法をとることができるでしょうか。

(TC)所轄競技団体の理事会に上訴することができる。(JTU主催大会であれば、JTU理事会、一般大会であれば加盟団体の理事会に上訴する)
(白井)JTU理事会に申し立てることができる。
(松岡)大会上訴委員会の裁定が示された後、14日間以内にJTU理事会に対し、書面を以て裁定の再審議を求める。


問2 次の文章を読み、設問に答えてください。 (各項3点×4 = 12点) +( 設問3 : 7点) = 計19点

 広域に競技コースが特設されるトライアスロンでは、全競技者を監視することは難しい。特に、スイムでは危険行為が行われても判断することは不可能に近い。バイクは高速で走るため、瞬時に判断し、注意を与えることは、危険も伴い至難である。疲労が高まるランでは、内面的な事故も想定しなければならない。
 違反が起こる原因は、「競技者のルール無視による」ものと、「意図せずにルール違反がでる」ことがある。そのため、準備段階から、違反を起こしやすいコース設定を避けるよう心掛けなければならない。審判員は、《どこで違反が起こりえるかを想定》し、対応するものだろう。
 このように、複合競技では、単純に規則に反した行為のみを見て罰則を与えるべきではなく、周辺状況を入念に確認し、なぜ違反が起こったのかを検証し判断する。
 競技者に対しては、審判員から一方的に罰則を受けるばかりではなく、裁定に対し再考を求める権利を与えている。コース・運営に係わる抗議が許されているのは、より良い大会を行うためである。

設問1 これまでの審判経験から危険を感じたこと、あるいは想定される危険を述べ、その改善案あるいは対応策を書いてください。

シ想定危険:
(TC)バイク審判員で、違反をより確実に監視しようと思うと、接近しなければならず、必然的に接触の危険が高まる。
(TC)降車ラインで競技者を制止しようとして、競技者と接触する危険。
(白井)スイムスタ−ト時の混乱による危険行為:適正人員を超える競技者数の場合、スイムスタ−トで混乱が生じ、思わぬ重大事故につながるおそれがある。
(松岡)バイクパ−トのドラフティングチェックで、コ−スの道幅に比べて選手数が多いため、集団に接近して注意・警告を与えることが難しい状況があった。集団の横を通過しながら注意を与えてドラフティングを解除させようとすると、対向車車両との事故が定された。

シ改善案/対応策:
(TC)適正参加人数の確保。コース規制の強化努力。審判員の技術向上と事前訓練。
(TC)減速指示スタッフの配置。遠方からも視認度の高い降車ライン、看板類の設置。
(白井)運営上の対応策としては、一度にスタ−トさせるのでなく、年齢別・性別・競技力別などにグル−ピングしたウエ−ブスタ−ト方式をとるなどの工夫をする。
(松岡)先づ、コ−ス状況に応じた適正な参加選手数とすること。交通規制の許す範囲でウェーブスタ−トを採用し、集団をできにくくする。大会前の競技説明でも選手にコ−ス特性を説明しておく。

設問2 これまでの審判経験から、「ヌ競技者のルール無視あるいは認識不足による違反」と「ネ運営の不備によるルール違反」の具体例(想定も可)を示し、対応策や改善案を書いてください。

シ違反例/想定例:
(TC)トランジションエリアでの乗車禁止。
(TC)キープレフト走行違反。
(白井)バイクヘルメットのストラップを締めることに関する違反:安全面に関する認識不足。あるいはトランジションエリア内で、気分の高まりにより自分を見失うことなどによって起こる。
(松岡)バイク競技中はキ−プレフトの原則を順守しなければならないにも拘らず、路面状態が良くカ−ブで最短距離となる車線中央付近を走行する選手が多いため後方の選手が安全に追い抜きできない状態が作られる。

シ改善/対応案:
(TC)加盟団体レベルでのルール講習。大会案内での事前注意。現場での指導徹底。
(TC)上記に加え、コース左端の整備。観客がコースに入らない誘導。
(白井)トランジションエリアにおいては、あわてている競技者に対して「落ちついて」とか「ストラップ」などと言葉をかけ、注意を促す。
(松岡)選手に対してはキープレフトの順守を繰り返し呼び掛けるとともに、バイクコースの状況をチェックして、浮き砂利の撤去、注意表示の設置等適切な処置を講じる。

ネ違反例/想定例:
(TC)コースミス。
(TC)乗降車ラインでの違反。
(白井)バイク競技における乗降車に関する違反:乗降車ラインが不明瞭である場合などに起こる。
(松岡)トランジションエリアからバイクコ−スに出る際の乗車ラインおよびバイク終了時の降車ラインが不明瞭であり、その位置も不適当だったため、混乱が生じる例があった。

シ改善案:
(TC)主要地点での看板・誘導員の適切な配置。
(TC)乗降車ラインの明確な表示と誘導員。
(白井)乗降ラインを明確に引く。選手が見たときにはっきり分かる位置に指示看板を立てる。違反が起きないよう「乗車ラインを越えてから乗車してください」と声をかけるなど。
(松岡)多数の選手が同時にトランジションエリアから出て来ても安全にスタ−トが切れる広い場所を確保し、地面に明瞭なラインを示すと共に、看板等で分かり易い表示を行う。

設問3 審判員が止め、直すよう指示した。この間、数名の競技者に抜かれ、結果、選考されなかった。終了後、口頭での抗議があり、確認すると、素材自体が弱く、切れやすいことが分かった。この状況で、審判長は、どう対応すべきであるか。順を追って出来るだけ詳しく書いてください。(7点+α)
シ審判員対応:

(TC)
 (1) 競技者の言い分を聞く。
 (2) 現場の審判員から事情を聞く。
 (3) 主催者から素材など状況を確認する。改善要求を行い、来期の改善を確認する。
 (4) 現場の審判員の停止・修正の指示はルールに適合していることを確認する。
 (5) 対象の競技者に、審判員の指示は正しかったが、運営の不備を認める。さらに、困難な背景を説明する。来期の改善を約束する。
 (6) 以上のことから、抗議は、受け入れられないことを丁重に伝え、理解してもらう。
 (7) これに不服があるときは、書面での講義、さらには上訴できることを伝える。
 (8) 選手権レベルの実力を認め、所轄競技団体に事情を報告する。
 (9) 所轄競技団体は、これを受け、別途推薦などの特別措置を検討する。
(白井)
○抗議の内容について事情を聴取し記録する。抗議者には抗議内容を書面で出すようにお願いする。
○指示を出した審判員から事実関係について事情聴取する。審判会議を開き素材の是否について技術代表に、また当該素材を選択した背景などについて実行委員長に意見を聴く。
○ル−ル上はタイムロスに関して再審査できない旨を抗議者に対し公式掲示板にて伝える。
○選考会であることを考えれば、理事会による特別推薦ができるような救済措置がとれないか理事会に対し進言し、事実関係を説明する。
(松岡)
 レ−スナンバ−が確実に視認できない状態のまま競技を続行させることは出来ないので、この審判員の取った行動は適切であったと判断できる。
 しかし、レ−スナンバ−の素材に問題があると分かったので、大会主催者に対して問題点の指摘と今後の改善を求める勧告を行う。
 同時に、選考のかかった大会で、大会運営の不備に起因するトラブルで資格を得られなかった選手に対して救済措置が取られるよう、所轄団体に要請を行う。


問3 審判活動での心得・ミスジャッジの場面・他競技者からのクレ−ムなどについて下記の設問に答えてください。(3点×3 = 9 点)

設問1 競技者には「競技者の立場に立って、思いやりと暖かみのある言葉」で対応する必要があります。この理由を書いてください。

(TC)大会で興奮状態にある競技者を落ちつかせる最適な方法は、この状態を理解し、穏やかな表現を心掛ける。強く表現すれば、これに比例してエキサイトしがちである。
(白井)日常は立派な社会人でも競技中は気分が高ぶっているものである。これに対処するには、競技者の気持ちを十分理解する必要があるから。
(松岡)競技者は、平常は常識をわきまえた立派な社会人であることが大半であるが、大会という特殊な状況で精神的に高揚していることがある。その気持を察知することが、大会をスム−ズに動かす鍵ともなる。

設問2 ラン競技中に、大半の競技者が前後にレースナンバーを付けていたため、前側だけに付けている競技者を注意した。後で確認すると、ローカルルールでは、ランは、前だけで良いことが分かった。この時の、審判員の取るべき対応は。

(TC)
 (1) すぐ探せる状態であれば、レースを止めないように、簡単に事情を説明する。
 (2) 一言あやまり「ガンバッテください」などの言葉をかけるのは適切だろう。
 (3) 念のため、審判長に報告する。
 (4) 探せなかった場合は、審判長講評などで、このことを伝え、率直に詫びてもらう。
 (5) 審判員、本人が直接詫びることも良い。
(白井)
 レ−スナンバ−を前後に付けることが奨励されてはいるものの、ロ−カルル−ルで前だけでよいということが分かった以上は、当該競技者を見つけたら誤りを説明し非をわびる。審判長に対し事実関係を報告し、レ−スナンバ−を告げる。後刻抗議があれば、事実関係を誠実に話す。
(松岡)
 他のラン競技マ−シャルに自分の誤ちを連絡し、ロ−カルル−ルの再徹底を図る。また、注意した選手のレ−スナンバ−を憶えていれば、自己の担当業務に影響の無い範囲で注意が誤りであったことを伝える。競技終了後に謝罪する。

設問3 「選手に違反行為があった」との他競技者からの抗議を受けた現場の審判員は、このことを審判長に報告した。審判長は、これにどう対応すべきでしょうか。

(TC)
 (1) 両者を呼び出す。
 (2) 状況を確認する。
 (3) 背景の補足説明をする。
 (4) これで罰則を与えてはいけない。
 (5) 改善の具体案を競技者に説明する。
(白井)
 当該競技者を呼んで双方から事情聴取する。抗議者には抗議内容を書面で提出するようお願いする。審判会議を開き、実行委員長・技術代表と相談する。裁定結果を公式掲示板にて告知する。
(松岡)
 該当する競技者の呼び出しを大会本部に依頼した後に、抗議した選手から状況の聴き取りを行い、それを書面にして貰う。対象となる選手が出頭して来たら相方の主張を充分に聴いた上で審判会議を開き、裁定を下す。必要に応じ技術代表に助言を求める。


問4 正しいと思われる項目の□に「○印」を、不適当なものに「×印」を付けてください。( 各1点×8 = 8 点)

×1 JTU主催大会の審判長は、大会会長が任命し、JTU理事会が承認する。
○2 一般大会の審判長は、所轄競技団体に届け出ることが義務付けられる。
×3 スイムスタートは、必ずしも水際にスタートラインを設定する必要はなく、広く安定した砂浜などがある場合は、テレビ写りなども考え、入水までの距離を長く取ったほうが良い。
○4 ストップアンドゴー・ルールは、コース幅が広いことを前提に欧米で開発された。そのため、国内の狭いバイクコースではこれを適用しずらいことがある。これに対応するため、タイムペナルティーが適用される。
×5 審判車両は審判業務に当たっているので、審判車両に対するドラフティングは適用されない。
○6 公式掲示板は、目立つ場所数カ所に設置し、公式告知を徹底すべきである。
×7 競技ルールは不変のものであり、これを変更しても運営を改善することにはつながらない。ルールは、問題が起こったからといってる変えるものではない。
○8 審判員の裁定を不服とした競技者は、大会上訴委員会に上訴した。聴聞会は、非公開で開催される。


問5 エイドステーションで、補給物を受け取ろうと減速していた競技者が、後続に追突され転倒した。ここで想定される双方の競技者の責任は何か、また運営の改善は。さらに、審判員が緊急に行うことを書いてください。 (各項 3点×4 = 12点)

追突した競技者の責任:

(TC)前方不注意と安全走行義務違反。
(白井)競技者は常に前方確認義務があり、特にエイドステ−ション付近では急な事態にそなえ、徐行・減速・停止ができるよう心がけておくべきだった。
(松岡)前方注意義務違反である。エアロポジションなど特に前方の確認が取りづらい状況であっても、常に変化するレ−ス状況に対応できるよう注意しなければならない。

ぶつけられた方の責任:

(TC)スタッフへの指示不足。後方確認義務違反。
(白井)補給物を受けとるときは、後方を確認し左手を水平に上げ車線変更してから減速すべきであった。
(松岡)エイドステ−ションで補給物を受取ろうとする場合、余裕を持って減速すべきであり、後方の競技者にぶつかられるような急激な減速、コ−スの変更は安全走行義務違反である。

運営の改善

(TC)エイドステーションの配置の仕方を改善。スタッフの適切な動きを研究する。
(白井)エイドステ−ションの設置場所は幅員が広く見通しのよい所とし、指示看板を立てて、競技者に分かりやすくする。エイドステ−ションエリアは追い越し注意とするなどのロ−カルル−ルを徹底する。
(松岡)前方の見通しの悪い場所や、道路幅の不充分な場合には、エイドステ−ションを設置しない。またエイドの充分手前から看板とスタッフでエイドのあることを明示する。

審判員の対応

(TC)転倒者の救護。あるいはその指示。後方競技者の追突防止。
(白井)事故による負傷の具合を確かめ、問題がなければ双方に注意あるいは警告を発した後競技に復帰させる。事実関係を違反度合チェックリストにて審判長に報告する。
(松岡)転倒した選手の負傷状況を確認し、適切な処置を取ること。


問6 次の(  )内に適当な語句を入れなさい。 ( 各 1点×3 = 3 点)

 審判員の判定を受けて、裁定を下すのは( 審判長 )であると規定されている。そのため、審判員に「警告、失格の宣言」を受けても、( 危険行為・悪質な違反 )を除き、競技の続行が許される。裁定は、審判員の報告を受けた審判長が行う。
 審判長は、裁定に当たり、実行委員長に運営状況を確認するとともに(技術代表 )に意見を求めることができる。


問7 スイムの救助を求める合図は、「競技を停止し、片手を頭上で振り、声を出して救助を求める」と、国際的に統一されたのは、どのような理由によるものですか。( 最高 5点)

(TC)
 (1) 最も簡単で、誤解がない、安全な方法を決めた。
 (2) 自らが救助を求めることを義務付ける。
 (3) スイムキャップを取って振る方法は、ゴーグルが外れ危険。
 (4) 最重要統一ルールとして必要であった。
(白井)
 競技者が「救助を求めるために手を振った」とする行為に対し、救助側は「大丈夫だと言っている」と誤解したことについて法廷で争われた事件があったことから。
(松岡)
 当初、スイムキャップを取って頭上で振るように決められていた時期があったが、この場合ゴ−グルも一緒に外れ、却って危険となる場合がある。また、単に片手を振っているだけでは「大丈夫」との意味に誤解されることもあるため、現在の規定に改められた。


問8  次の1〜3の文書で正しいと思われるいずれかの□に「(TC)印」を付けてください。( 各 2点×3 = 6 点)

1.国内のある大会では、コースの狭い部分を追い越し禁止区間としてローカルルールして規定していた。
■ 追い越し禁止とは、メカトラブルで減速走行中の競技者をも追い越してはいけないとも解釈できるため、「追い越し注意」とすべきである。
□ 追い越し禁止措置は正当である。

2.2位になったA選手は、優勝したB選手がドラフティングを継続していたと口頭で競技者のフィニッシュ後60分以内に、審判長に抗議した。
□ この抗議はルールに則したものであり、正当である。
■ 審判員が現場を確認していない場合、ペナルティーを与えることはできない。

3.ドラフティング違反があったと観客から報告があった。
□ 観客の報告の信憑性が高かったので失格とした。
■ 観客からの報告は重視するが、あくまで参考意見とすべきであり、当事者を呼び事実関係の事情聴取を行った。


問9 次の(  )内に適当な語句を入れなさい。 ( 各 1点×9 = 9 点)

  1. 強風や波浪などの( 注意報 )が発令されたときは、競技環境を考慮し、競技内容の変更や安全対策が十分とれると判断された場合にのみ競技を実施する。
  2. 暴風や波浪の警報の発令中は、オープンコースでのスイムを( 中止 )する。
  3. テレビ取材は、(自動2輪車)を基本に構成する。4輪車では、競技者に接近しない。
  4. 2000年のシドニー・オリンピックでは、男女各 ( 50 )名が出場する。
  5. 水温は、スタート(24)時間前と(1)時間前に計測し発表する。
  6. バイクの競技距離は、( 乗車ライン )から、( 降車ライン )までである。
  7. エイドステーションのボランティア・スタッフの安全は補給品の手渡し方法は、( 走らない/静止して渡す )ことである。

問10 次の内容を読み、個人の意見を述べてください。 ( 最高15点+α)

 バイクで、「前走者の左側から追越した競技者を、失格とするか否か」の状況がある。左側追越しを誘発したものは、キープレフトを守っていなかった前走者である。
 競技終了後の、事情聴取で、前走者の言い分は、「コース路肩付近が荒れていて危険を感じた。仕方なかった」というものであった。
 ルールを条文どおりに履行すれば両者ともに失格。しかし、現場確認も必要であるが、根本の理由は、コースが不良だったからともいえる。主催者が整備をするべきとの意見もあるだろう。一方で、すべてを完備することもできない。主催者は、このような不良箇所を事前に注意し、誘導スタッフを置くことが必要であっただろう。
 例えば、左側追い越しの《ルール違反度合い》を単純に100%とすると、前走者のセンター寄り走行が理由のため、50%程度は情状酌量の余地として相殺してよいかもしれない。さらに、センター寄りを走った競技者についても、ルール違反度は相殺されてしかるべきだろう。
 防止する方法は、競技者どうしが競技中であっても「声を掛けて注意しあいルール違反を防止」することだ。
 主催者も次の大会からは、さらにコース整備を心掛けるようにしたいものである。ルール違反の大半は、大会コース設定や運営の不備から起こるともいえる。

シ情状酌量と相殺について個人の意見(事例の提示や展開案も自在に書いてください。優秀なものには、特別ポイントを与えます)

(TC)評価ポイント
(1) 競技者責任と主催者責任を、前向きに検討しているか。
(2) 競技者どうしの双方注意義務の必要性を感じているか。
(3) 運営=舞台の設定がなければ、大会はないことを認識しているか。
(4) 大会は、競技者+審判員+主催者の三位一体で成り立っていることを理解しているか。

(白井)
 競技者はル−ルを熟知する義務があり、コ−ス状況・交通規則等を十分把握する義務があることから、ル−ル違反をすれば失格となるのは当然である。しかし、トライアスロンの競技特性として、ル−ル違反はコ−ス状況の不良などの大会設営・運営の不備により起こる場合が多い。
 このような場合に厳密に運用して失格をさせることは簡単ではあるが、それでは競技者が納得した裁定とは言いがたいものになってしまう。
 そこで競技者の違反度合と主催者側の不備の度合とを相殺する方法が考えられる。例えば、コ−スアウトした競技者の違反度合を100%とし、コ−ス設定の状況で無理がなかったか、誘導スタッフの対応、指示看板の有無などを考慮し、主催者側に改善の余地があれば仮にこれを30%とした場合、差し引き70%が最終的な競技者の違反度合となり、失格であったところが警告にとどまることとなる。
 これにより競技者も納得がいくし、双方の警告にとどまることとなる。これにより競技者も納得がいくし、双方の今後の改善、向上の努力を促すことにもなる。また、このことを常に念頭に置いていれば審判業務もスム−ズに正確に遂行できることになると思う。

(松岡)
 情状酌量の基本となるものは、違反を犯した時の選手の心理状況や、大会設営・運営面での問題点を充分に意識することである。
 コ−スの特性やその前後の状況から止むを得ずル−ルを破ってしまった場合であるとか、違反する積りは無かったのに無意識の内に規則違反に陥った場合は、選手の気持ちをはかり、今後同様の違反が起きないように選手を指導すべきであると考えられる。
 つまり「やってはいけないけど、やれば自分に有利になるから違反した」と云う確信犯を100とすると、上に述べたケ−スでは各種の要因を加味しながら80あるいは60、場合によっては40へと違反度合いを相殺して行くべきであり、そうすることによってル−ル違反の発生は改善されて行くものと考えられる。



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