JTU競技規則<改定案と補足説明と事例集>
第4章 水泳(スイム)競技規則 第19条(安全の確保)
第19条(安全の確保)
- (小休止の方法)
- 危険回避、体調保全のため、競技を停止し小休止をとることができる。
- コースブイ、ロープ、フロート類および停止中のボートに捕まるなどによるが、これらを利用して移動することは禁止する。
補足説明
- 運営面からは、小休止が取れるようブイが張りめぐらされていることが大事である。
- これに救助ボートが配置され「競技者が、緊急時に1分以内に何らかの安全を確保」出来る体制を確保する。
- 小休止の判断基準については、基本としては、「片手を頭の上に挙げて振る」ような動作がなければ、「小休止している」と見なされるだろう。いずれにしても、救助員やマーシャルは声を掛け「状況を確認」するものである。
状況例
- 一般部門で、コースロープ付近を泳いでいた競技者が、コースロープを掴んで勢いを付けて前進していた。集団の中でこれを発見することは難しい。たまたま遠方の岸辺から見ていた観客の報告で事実が判明した。
判断例
- 泳力不足の選手が参加していたと判断される。参加選手への指導。そして、監視体制の強化。さらには、監視しやすい参加人数の限定。1ウェーブの適性人数の考慮など。
- しかし、評価できる点は、安全管理に重要な「コースブイ」が引かれていたことである
- レースナンバーを確定できない。大会後、審判長からの総評でルールを説明・注意を行った。
第19条(安全の確保)
- (緊急時の合図と心得)
- 救助を必要とする場合、競技を停止し「片手を頭上で振り、声を出して救助を求める」ことと規定し、救助を求める場合の合図として統一する。
- 競技者は、状況が変化しやすいスイム競技では、緊急救助が困難であることを前提に競技に臨まねばならない。さらに、救助を待つあいだ、余力を残して安全対策を講じることが求められる。
- 競技者は、コースロープの設定状況、救助体制を把握し、つねに「救助範囲」を考え(に位置し)ながら競技を行う。
補足説明
- 緊急時の合図は、ITUが制定しJTUが統一ルールとして導入する迄まちまちであった。合図の方法の認識の違いが主点となり、法廷で争われたことがある。一方は、「救助を求めるために手を振った」。救助側は、「大丈夫だと」いう意志表示と理解したというものである。
- 昔は、競泳中との判断を明確にするため、「スイムキャップを取って、振る」というルールが一部で適用された。しかし、これはキャップを取ればゴーグルが外れ、逆に競技者の負担が増えるという難点があった。
状況例
- テレビの実況解説者は、「魚の群れが泳いでいるようで壮観です..」と連発する。500名のフローティングスタートでレースが始まった。競技者は、足を引っ張られるは、上から伸しかかられるは、溺れる寸前となった。「救助範囲」といっても、周りは人だらけで救助用ボートも見えない。優勝候補の一人は早々とリタイアした。
判断例
- 適正人数。ウェーブスタートの完全実施。
- 主催者と競技団体が、じっくりと来期に向けて最善策を研究する。
第19条(安全の確保)
- (救助後の競技再開の禁止)
- 一度救助された競技者は、競技を再開することはできない。
(ルール化の研究課題:軽度の状況で監視ボートに乗せてもらい、状況の改善があったとき、特にエリートレベルでは競技の再開を希望する)
補足説明
- ITU : In an emergency, a competitor should rase an arm overhead and call for an assistance. Once official assistance is rendered, the competior must retire from the competition.
ITUルールでは、JTUの第19条2と3項が一体となって表現されている。つまり、「公式な救助:大会スタッフによる救助 (official assistance)」が及んだ場合は、競技をリタイアしなければならない、としている。
- 陸上では、一般に救護された場合でも公式スタッフであればレースに戻れる。スイムの場合は、これが危険を伴う。技術不足と体力の消耗。そのため、このルールが出来た。しかし、懸念するのは、このルールのためにギリギリの状況まで救助を求めない競技者がいることだ。
状況例
- 足がつってしまいゴムボートに自ら這い上がった。ストレッチをして一息入れたあと、回復したのでスタッフに「何とかお願いします」といって再スタートした。
判断例
- ルールに厳しくて良い場面である。再スタートは許されない。
- 救助ボートにつかまることは許容されるが、乗船した場合は、例え自らの力であっても「救助された」と見なされる。
- 同じように、大型フロートに上半身を乗せて休んでいるなどでも、競技に復帰することは出来ない。このような場合、早めの救助そして看護が必要な状況であろう。

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