JTU競技規則<改定案と補足説明と事例集>
第5章 トランジションエリア規則 第21条(概要)
第21条(概要)
- (定 義) <追加>
- トランジションエリアを、次のように定義する。
<第1トランジションエリア>スイムフィニッシュの計測ラインから、バイクスタートの乗車ラインまでの限定区域。
<第2トランジションエリア> バイクフィニッシュの降車ラインから、ランスタート・ラインまでの限定区域。
<共通トランジションエリア> スイムフィニッシュの計測ラインから、乗車ラインおよび降車ライン内側の限定区域。
- トランジションエリアは、競技種目に移るアクセス部分を包括する競技コースの一部として規定される。種目変更点として、バイク・ランの競技用具を設置する。
補足説明
- 航空ルートを競技コースと見立てれば、空港は「トランジションエリア」であろう。中継基地として、機材のメンテナンスそして乗客の食事の補給が行われる。
- ここには、管制塔があり、飛行機をコントロールする。トライアスロンのトランジションエリアでも、誘導スタッフやマーシャルが待機し競技者を制御する。
- 空港、特に滑走路がセキュリティ面からも完全監視体制にあるのと同様、トランジションエリアも一般客から完全に隔離され、完全な監視体制下に置かれなくてはならない。
状況例
- トランジションエリアのバイクラックに、自転車を置いておいたら盗難にあった。早い時間でスタッフはまだいない早朝のことである。
判断例
- 主催者が、前日からの預託を行い、トランジション内に設置し保管していたら、夜間には警備員などを置きこのようなことは起こりづらい。
- 管理時間以外であったら、これは競技者自身の責任に帰されるだろう。ポイントは、「間もなく受付時間が始まる」という頃に盗難が起こったらどうするかである。
- こういった場合、まず考えなければいけないのは、競技者の大会出場である。誠意を持って、代わりの自転車を貸与することであろう。この場合、本人にテスト走行を願い、借用自転車で問題ないことを確認する必要があるだろう。さらには、破損の際のことも考えなければいけない。
- このようなことから、主催者は、審判も含め、大会の管理時間の概念を明確に規定する重要性を実感するだろう。
- 保険請求などのため警察への盗難届けが必要になるかもしれない。
第21条(概要)
- (使用範囲の制限)
- 指定されたバイクラックのみの使用が許可される。
- バイクラック全面の一区画に指定される「トランジションスペース」の範囲内に競技用具を設置し、用具・ウェア交換を行う。
補足説明
- 当規定をよく守らせるには、「適当な広さ」が第一である。とかく、数百名を適正に置くスペースがあんばいよくあるとは限らない。必然的にきゅうくつになりルール違反が起こる。
- バイクラックは、ハンドルあるいはサドル部分を引っ掛けるものや、タイヤを固定するものなど様々である。一般的にスタートでは、多少狭くても良いが、フィニッシュでは、これより広くしないと慌ただしく置く場合が多く混乱を生じやすい。
- 最近、ワールドカップなどでは後輪タイヤ部分を軽く押さえてバイクを固定し、スムーズなスタートを行い、フィニッシュは、特定の位置を指定しないフリーラックの運用が試され好結果を得ている。古典的には、手渡しがあり大会独自の味わいがある。なお、手渡しなどはロングディスタンスではスムーズに実施できる場合はよいが、短距離型では、一般的に不向きである。
- ウエットスーツ用のボックスなども考案したい。
状況例
- バイクフィニッシュで上位競技者が先を競ってラックに掛けたが、他競技者のスペースに入り込んだ。両サイドのバイクが邪魔した状況で後続の競技者のスペースがない。
判断例
- 適度な広さがあったかどうかが争点となる。全体に狭い場合では、特例として係員あるいは審判員が、その場の判断で受け取って「スムーズにレースを進める」ことも必要だろう。あるいは、ラックの違反設置自転車をどかしてスペースを確保することも「スムーズな運営上」の許容範囲である。
- レース後、本人の事情聴取を行った。「無我夢中であり大勢のなかで指示もよく分かるらなかった。自分では正しく置いたつもりである。申し訳なかった」ことを審判長に説明した。
- 違反設置の現場に立ち会ったマーシャルは、即刻注意し、正しい位置に設置させる。これを怠たり、航続の競技者にタイムロスがあった場合の判断基準は次のとおりである
- 不正設置ペナルティ度合(60%)+指示無視(70%)+競技者タイムロスの着順に影響(90%)=罰則度合い(220%)
- 情状酌量度合(140%)=主催者責任/広さ不十分(50%)+個人責任度合(60%)+無我夢中と反省強(30%)
- 220−140=80%(総合ペナルティ度合)
- 以上の状況分析から、失格の裁定はやや厳し過ぎるのでは、と考えられる。なお、当ケースであっても、この競技者の置き方が一見して明らかに乱暴であり、自分のスペースから大幅にズレていれば、個人責任度合いが100%に近くなり、総合ペネルティー度合いは、120%となり、失格の裁定が当然のケースである。
- なお、これらのパーセンテージは、状況により微妙な差がでるのは当然である。

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