JTU競技規則<改定案と補足説明と事例集>
第6章 自転車(バイク)競技規則 第30条(競技自転車)
第30条(競技自転車)
- (基準)
- 競技用自転車は、次項の基準に適合したものであること。また、競技者の体によく合っていること。
- 小・中・高生の大会では、別途、基準を制定する。
補足説明
- 97年度ITUルールでは、ドロップハンドルにクリップオン(エアロ/DHバーの意味)の 先端は、ブレーキレバーをつなぐ線以内でなければいけないと規定された。
- ただし、当ルールは、エリートとジュニアのドラフティングレースに限定される。
- エージグループ選手は、従来のものが継続して許可されるが、方向性としては、安全のため異常に長いクリップオンや、この先端にシフトレバーなどの突起物を付けないことを奨励する時代である。
状況例
- ドロップハンドル・バーの下部を足が当たりやすいからと、ブレーキレバー付近までカットして使用している。
判断例
- 基本的な考え方は、「市販の規格品に手を加える範囲」が、どの程度であるかがポイントである。ここでは、下部を切り取ることによりドロップハンドルが有するの一つのポジションを犠牲にしており、明らかに違反であろう。
第30条(競技自転車)
- (基準)
- 大会規定により、基準適合検査(バイクチェック)を指定の方法により受ける。
- 検査で承認を受けても現場の抜き打ち検査で不可であればペナルティーを受ける
補足説明
- 一般にバイクチェックと呼ばれる。大会マーシャルにより検査方法そしてその内容なまちまちである。大別すれば次の3つがある。
- ブレーキの効き、フレームの歪みなど機能面までを検査ックする場合。
- 形状のみを検査する場合(フレーム、ハンドルなど)
- スポンサー表示の検査
- ここで、検査に通らなかった場合は、バイクメカニックサービスあるいは個人でで整備する。その後に再度検査を受ける。
- いずれにせよ、検査担当者の経験に左右される業務である。ここで関与するルールが、競技者の「整備点検義務」である。
- 現状、細部までやるのは、競技者を競技直前・直後に「失格を出さない」ためのマーシャルの気配りである。
状況例
- バイクに強い強化指定上位選手が、バイク検査を受けた。立会いのマーシャルは、ブレーキレバーを何回か握り、「甘スギル!」とぞんざい(少なくとも競技者にはそう聞こえた)に整備不備であることを表現した。
判断例
- 技術的にいえば、ブレーキレバーには遊びがあり、この度合いを決める尺度は、最深部まで握ったときに完全に停止するか否かである。また、当マーシャルの競技者に対する表現の仕方は不適であろう。「ブレーキの効きが甘いようですが、大丈夫ですか」というべきだろう。さらに、大事なバイクに対する扱いとしても「マーシャルのマナー不足」が指摘されるところだ。
第30条(競技自転車)
- (ロードレーサーの基本構造)
- 全長2m以内、幅60p以内であること。
(98追加検討)なお、プロ/エリート部門は、ITU基準に従い45p以内とする。
- ハンガーセットの中心と地面の間隔は24p以上あること。
- ハンガーセットの中心を通る垂線と前車軸との距離は54p以上65p以内であること。(選手の体格により、この限りではない。)
- ハンガーセットの中心を通る垂線とサドル先端の間隔は、後ろ15p以内前5p以内であること。また、競技中にサドル位置を変更することのできるシートピラーの使用はこの範囲以内において許される。
補足説明
- 97ITUルールでは、プロ/エリートは45センチ以内、エージ部門では65センチ以内としている。これは、プロ・エリートがドラフティングレース対応であるのに対し、一般は、ドラフティング禁止のためである。ちなみに、JTUが60センチとしているのは、国内の交通規則によるものである。(公的機関からの指導)
- 用具の許容範囲の広いトライアスロンは、多くの革新技術をもたらした。国際基準がこれを追っ掛けているという図式にも見える。フレームについても、センターフレームのないモノコック構造がある。ルールの適応が難しいものの一つである。大会ですでに使用されているが、ルールに照合すると分かったようで当てはまらない。
- 素材については、従来からのモリブデン、アルミそしてカーボン、チタンさらには複合素材など様々である。
- これらについて、JTUは「ITUに随時確認」する体制としている。国内では、日本自転車競技連盟に照会する。ITUでは、UCIを基本としてる。新規の場合、UCI本部に問い合わせる。
- 各メーカーが凌ぎを削り膨大な予算で開発するこれら新規用具をJTUが判断するには慎重でなければならない。印象や感覚で否定するべきではない。
- 現在、UCIは、自転車の安全と簡素化を重視する方向にある。さらに、UCIの用具に係わる規制の方法は、「現行のものは、数年先の何年には禁止とする」というように、メーカーの立場を考慮した柔軟な方法を講じている。
状況例
- 80年代後半、モノコックのユニークなエアロダイナミクス構造のバイクを外国選手が使用した。選手に確認すると、外国のロングディスタンスの大会では許可されたと主張した。
判断例
- 「革新技術」でも触れたように、トライアスリートの新機材は、国際競技団体(IF)や国内競技団体(NF)の体制が整う前に、大会主催者が独自にこれらを容認してきた背景がある。
- これにより生まれた自由な機運は、独自の用具をトライアスロン界に招き入れたといえる。「状況例」のような時代は、米国が新用具をリードしており、マーシャルもいわば米国を先生と認め、米国で許可されているものは無条件で受け入れてきたという歴史がある。
- 基準を明確に競技者に伝えなかった競技団体とユニークな機能を確認しなかった競技者の双方に責任があるといえる。
- 現場での対応としては、基本形状が適合するのであれば認めるものだろう。後日、検討されることになるだろう。
第30条(競技自転車)
- (フェアリング、ホイールとタイヤ)
- 空気抵抗を軽減するためのフェアリングや備品類の使用を禁止する。また、加速を促すようなホイール構造は禁止する。
- 前輪はスポーク構造であること。コンポジット形状のエアロホイールは許可される。なお、前後輪は異なるサイズででもよい。
- ディスクホイールは、後輪にのみ許可する。ただし、強風など競技環境の問題がある場合は使用を禁止する。禁止される場合は、大会への応募の時点で発表されるものとる。
- タイヤは正確に装着する。チューブラータイヤは接着する。
補足説明
- ホイールとタイヤについてもフレーム同様各種の新製品が開発され市販されている。これらについては、過度の形態を危惧する声が高まり、規制が強くなろうとしている。新規用具についても国際的な動きに注目する必要がある。当面は、一般に市販されているホイールは、「製品保証」があるとして、これをを認めることになるだろう。
状況例
- バイク検査で前輪のリムが5センチもあるホイールがあった。有力メーカーの品であり、大丈夫だと言われたことを主張した。
判断例
- 現時点においてデープリムの数値的な規定はない。しかし、ディスクホイール同様の効果があり、横風に不安定であることを考慮し、「注意」を呼びかける。
第30条(競技自転車)
- (ハンドルとブレーキ)
- ハンドルバーはバーテープを巻かなければならない。そのグリップエンドはしっかりとふさぐ。
DHバーなどの備品類は、競技中の危険を最小限に止められるものとし、装着を確実にする。
- ロードレーサーの基本的なハンドル形状はドロップハンドルである。
エアロバー/DHバー(ITU名称:クリップオン・バー)ハンドル、ブルホーン型ハンドルの使用は、一般大会において許可される。ただし、一般においてもITU規定の導入を奨励する。Tバーハンドルは、ローカルルールにより許可される場合を除き禁止される。
(第30条3項と重複のため98年から削除:<補則>ハンドルバーに装着するアタッチメント類で空気抵抗低減効果が予想されるものは禁止する)
- 前輪と後輪に、ハンドル部のブレーキレバーで制御できるブレーキ(レバー)が装着されていること。
<技術アドバイス>ブレーキレバーを指2本で軽く(200g-400g の力で) 引けば、ホイールがロックするほどのものが有効とされている。
<補則>ハンドルバーに付属する競技用許可備品は、次のとおりであり、必要最小限の形状であること。
◇ブレーキレバー ◇ギアシフトレバー ◇肘当てパット ◇サイクルメーター ◇アラームベル ◇小物専用バッグ
補足説明
- トライアスロンで使用されてきたハンドル形状は多彩であるが基本は、ドロップハンドルである。エアロバーは、前傾姿勢で効率は良いが、一方で「前方注意義務(98年ルール化)」を守りずらい難点がある。競技者の安全のためにも、今後規制は進むだろう。
- グリップエンドを「エンドキャップ」でふさぐ理由は、パイプの開口部が太股などを傷付けるのを防ぐためである。さらに、バーテープをしっかりと固定し、ほどけてしまう危険を防ぐためでもある。
- 一般に、前方に向かって左ブレーキは後輪、右ブレーキは前輪が効くようにセットされている。好みによっては逆もある。右効きの場合、デリケートな前輪ブレーキを操作するほうに考えられている。
検査方法例
- 点検方法案として、おおよそ時速20キロで50mほどを走行させ、合図あるいはブレーキング開始ラインで、前後のブレーキレバーを引き、5m先(標準としては2−3m)の停止線以内で停止させる。ブレーキの作動状況を「競技者自身に体感」させる。
検査・管理は、人間の感覚に頼る部分が多く、「自主点検」とすることが適当だろう。
状況例
- ブレーキレバーを逆向きにセットしてある。「効き目は同じだし、操作しやすい」と主張している。
判断例
第30条(競技自転車)
- (クリップオン・バー/エアロバー規定) <ITU規定>
- ドラフティングが許可されるITU世界選手権エリート/プロ部門、ジュニア部門およびワールドカップでは、ドロップハンドルに付けるクリップオン・バー(通称エアロ・バー)を次のように規定する。
- ブレーキレバーの最先端の両端を結んだ線を越えない範囲のものであること。
- 直線状のクリップオン・バーである場合、その先端部分は、ブリッジ状につながれていること。2本のバーが独立している形状は認められないが、先端が完全に内側を向いているものであれば許可範囲とする。
- 先端部にシフトレバーなど突起したアッタチメント類を装備してはいけない。ただし、グリップシフターは許可。
- クリップオン・バーの先端は、前輪ハブ軸より15p以上前に出てはならない。
- 腕以外の部分をハンドルに接触させて走ることは禁止する。そのため、胸など胴体部分をハンドルバーに付けて走行することはできない。
- 国内大会においても、上記ルールの適用を奨励する。なお、ドラフティング許可レースでは、上記規定を98年度より適用する。
補足説明
- 国際トライアスロン連合(ITU)では、ドラフティング走行から起こりえる危険を最小限にするために、上記ルールを導入した。97年のワールドカップで使用が推奨され97年度の世界選手権(エリート/ジュニア部門)で義務付けられる。
- 現時点ではITU大会のドラフティングレースに限定されるが、今後、安全面からも、JTU規定としてドラフティングレースに導入されることになるだろう。
- 一般部門においては、従来のクリップオン・バーが容認されるが、異状に前に突き出たものや、先端部にシフトレバーがついたものは、安全のために使用を控えるよう指導されるべきものだろう。
状況例
- 数年前、世界選手権エリート部門で、1本のクリップオン・バー(通称、ユニコーンハンドル)が、バイク検査で問題とされた。転倒、追突時の危険度が大きいとの理由による。
判断例
- 当時の規定では、詳細が規定されてなく、使用許可となった。しかし、今後は、この形式は禁止備品となる可能性が高い。
第30条(競技自転車)
- (付属備品)
- (許可・推奨備品)(注)道路交通法で、夜間走行時に使用義務
◇反射版(TSマーク付きを推奨)*シールを許可するかは検討
◇クラクション/ベル
- (使用許可/推奨備品)
◇バイクボトル ◇エアロボトル(水を内包する以外の形状でないもの)
◇ウォーターバッグ(一般には許可。レースナンバーが隠れないこと)
- (使用許可/競技者の選択備品)
◇スペアタイア ◇インフレーター(空気入れ)
- (ローカルルール規定備品)
◇サイクルメーター(周回コースでの義務/推奨)
- (使用禁止備品)
◇泥避け ◇スタンド ◇車輪カバー
- (大会で使用禁止)(注)道路交通法で、夜間の使用義務
◇ランプ
- (サングラスの使用)
- 競技用サングラスの使用は許可される。
<技術アドバイス>日差しの強いところからトンネルや木陰など照度の低いところに急に入ると視力が著しく低下する。特に、濃度の高いサングラスは視力低下度が高い。クリア度の高いサングラスを奨励する理由の一つである。
- (形状の安全性と装着)
- 備品類は、競技中の危険を最小限に止められるような形状であること。
- 競技中に外れないよう整備されていること。
<追加>
- (ジュニア競技者用のギア比)
- ジュニアにおいては、使用するバイクのギア比を、男子7. 93m、女子7. 40mに制限する。(自転車競技連盟の規定、ITUでも検討中)
- (ジュニア競技者のエアロバー使用を禁止する)
- (新技術)
- 革新技術を有したバイクや備品類は、規定により事前の検査を受ける。
補足説明
- 付属備品で注意しなければならないことは、一般公道を走行するための「法定備品」と、レース中に制限される備品とを区分して理解することである。
- 規制が難しいのは、ホテルから会場にバイクで行く場合、規制なしの一般公道として道路交通法の適用を受けていること。そしてレース中は、免除されているものがあることだ。ただし、トライアスロンのような様々な状況下では、「バイクでは、反射シール(ガラス製でないもの)、ベルは必須/義務」として規定したほうがスムーズ運営が図れるだろう。
状況例
- 競技者は、表彰パーティの後、暗がりとなった道路を腕に付けた点滅ライトを付けてレースを振り返りながら軽やかに家路に就いた。
判断例
- 点滅ライトは後方確認には視認性には優れているが、前方を照らすものではない。別途ライトを付けることを推奨するが、ない場合は、徐行で走ることをお願いすることになるだろう。

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