JTU競技規則<改定案と補足説明と事例集>
第6章 自転車(バイク)競技規則 第31条(競技用具)
第31条(競技用具)
- (ヘルメット規定)
(競技者は、)自転車に乗車中、下記の基準のいずれかに適合したサイクリングヘルメットを着用する。(ストラップを正しく締めて競技しなければならない)
<改定>
自転車に乗車するときは、練習、競技中のいかんにかかわらずサイクリングヘルメットの着用は義務である。ヘルメットの適合基準は、次のような検査機構による。
○ American National Standard Institute (ANSI Z-90.4)
○ Snell Memorial Foundation
○ The National Swedish Board of Consumer Policiy
なお、(財)日本自転車競技連盟の公認 (JCF)ヘルメットは上記に基づくものであり、使用が許可される。
補足説明
- サイクリングヘルメットは、人間の最も重要な部分を保護する。マーシャルが、競技の安全と公正を守る立場であり、ヘルメットに係わるチェックは重要である。
- 同時に、これら用具は最新技術を駆使して製作されており、相当な専門家でないと的確なチェックを行えない。
- 主催者側が「問題ない」といって許可したものが、競技中に転倒してヘルメットが異常を来した場合、責任を問われるかもしれない。考慮しなければならないことだ。
- 競技者自身の整備義務を奨励することが適切であろう。
- モーターバイクの事故で最も損傷が大きいのは頭部、顔面で、50%を超えるとの公式機関の報告がある。自転車でも同様のことであり、ヘルメットの着用の意義の高さは、各地で繰り返し強調しなければならない。
状況例
- アジアの大会で、旧ロシアの競技者が持参したヘルメットが規定外であった。当然、審判長から、規格品と変えるように指示された。しかし、開催地周辺に規定ヘルメットの扱い店がない。また、あったとしても購入する金がない。
判断例
- アジアのトライアスロン状況を知る事例である。例えば、ウエットスーツを購入できるのは、日本、韓国、中国香港、シンガポール程度である。また、物価指数から比べ自転車や用具類は給料の何倍という一般には手が届かないほど高価である。
- とはいえ、ロードレースはアジア諸国でも比較的盛んであり規格ヘルメットを持参しない責任は競技者そしてコーチにあるといえる。
- 他競技者のものを貸与することも一案である。
- 結局、規格ヘルメットを購入することができずに、規格外ヘルメットで大会に出場した。これを失格とするかどうかは、現場の審判長あるいは技術代表になったつもりで判断してほしい。
- ルールに厳格であれば失格、大会の趣旨である国際友好そして世界の実情を考えれば、ここは指導のみとすることもありえる。ただし、オリンピックであればこのようなことが認められないことは明快な事実である。
第31条(競技用具)
- (ヘルメットの改造禁止)
- ヘルメットの改造は禁止する。
<表現修正>
- ヘルメットは、市販の規格適合品を使用する。いかなる部分も改造してはいけない。また、これに飾りなど付属品を付けてはいけない。
- ライナータイプのヘルメットカバーを取り外すことを禁止する。
<補則/削除> ヘルメットカバーの付いているヘルメットは、これを外してはならない
補足説明
- 最近は、エアロ形状で軽く通風の良いヘルメットが主流となり、ライナータイプは少ない。以前は、禁止品目のカスクのヘルメットも多かった。
- 「いかなる部分も改造してはいけない」と強調するのは、ストラップなどを改造するケースがあったためである。
- さらに、ヘルメット表面の滑らかで弾力ある構造は、転倒の際に路面を滑り、抵抗を分散し軽減するためである。従って、表面に塗装を施したなども厳密には適正とはいえないだろう。
状況例
- ヘルメットのてっぺん付近にピアノ線をくくり付けクラブマークを付けていた。
判断例
- 一般の大会でもあり注意として。選手権レベルであったなら失格もありえるだろう。
第31条(競技用具)
- (ストラップの着用) <96年改定>
- 自転車に乗車中は、いつでもサイクリングヘルメットのストラップをしっかりと締めておかねばならない。
- ヘルメット・ストラップは、「ラックからバイクを外す前にしっかりと締める」
- フィニッシュ後は、「ラックに掛けてからストラップを外す」。
- トランジションで、ストラップをあらかじめつないでおくことを禁止する。
補足説明
- 「ストラップをしっかりと締めてから」という表現が意味するところは重要である。トランジションでのスピード化が進むなか、始めから被りやすいようにストラップをつないだ状態にしておくケースが目立つ。
- そして、これを被って「しっかりと締める時間をセーブ」しようとする競技者がいる。重要なチェック事項でありながら、これをチェックすることは難しい。事前の指導が重要である。
- 「ストラップを締める動作」のマーシャル確認が必要である。
状況例
- 一見通常のストラップに見えたが、太いゴムバンドに変えてあった。強化選考レースの予選終了後に発見された。
判断例
- 競技者は、ストラップの果たす役割を強く認識していなかった。ゴムでは、「しっかりと締まらない」。また、市販の規格品に手を加えれば「規格外」となってしまう。安全の原点に抵触するもので失格もありえるだろう。しかし、午後の第2レースは、本戦では正規に変えることを前提に出場を許可した。
第31条(競技用具)
- (ヘルメットの着用義務/大会会場) <追加>
- ヘルメット着用なしのバイク走行を厳重に禁止する。競技者の安全そして大会への重大な影響を考慮し、大会開催地での違反者には、競技への出場停止を含む厳しいエナルティーが与えられる。
ITU : Competitors who do not wear approved helemets while cycling at the race site, within 7 days of an ITU events, may be disqualiofied from competition.(ITUでは大会7日前のヘルメットなし乗車は失格)
補足説明
- ITUルールですでに採用されている。ヘルメット無着用のプロレベルのロードレーサーが練習中重大事故を起こしたことを受けてルール化された。
- ITUルールでは、「ITU大会開催地では、競技日から1週間以前の間に無着用で自転車に乗っていた場合、競技の失格が申し渡される。
- もちろん、一般の練習でも着用は常識である。
- 大会会場でのヘルメットなしでの事故が、大会開催に直接影響を与えることがある。
状況例
- ワールドカップ会場で、大会前々日に、南米の選手がヘルメットを着用しないで練習していた。早めに会場入りしていたマーシャルから注意を受け、「何故いけないのかを懇切丁寧に説明された」。良く納得できたので、自転車を下りて宿舎に戻った。「もし、頭ごなしに注意されたら、悪いとは分かっていても、そのまま自転車に乗って気分を害しながら帰っていたかもしれない」
判断例
- 車の運転者が、安全ベルトをするとことによって事故の際の被害を最小にしていると同じほど重要なルールである。個人の自由意思の問題ではない。大会すべてに迷惑が掛かる。これまで失格には至っていない。今後は、少しずつ厳しくならざるを得ないきわめて重要なルールである。
第31条(競技用具)
- (整備義務) <追加>
- ヘルメットのひび割れ、ストラップの不良などは使用禁止とする。
補足説明
- 検査でこれらすべてをチェックすることは難しい。一度転倒したことのあるヘルメットや長年使用したものは競技者自身が注意するよう事前指導が必要である。
状況例
- ヘルメット検査でヒビ割れが見つかった。エリート選手でスポンサーロゴがあり代わりがすぐ取り寄せられないという。
判断例
- この検査を厳密に行うことは難しい。上記は、たまたま発見されたものだが、個人の安全管理義務の一貫としたい。これも、安全に係わる重要度がある。交換を依頼する。

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