JTU競技規則<改定案と補足説明と事例集>
第7章 ランニング(ラン)競技規則 第32条(競技概要)
第32条(競技概要)
- (定 義)
- ランニング競技は、競技者自身の走行(自力走行)により行う。
- 危険回避や体調保全のために徐行あるいは歩行を認める。
補足説明
- ロングディスタンスで初期の時代に、少しずつ這ってフィニッシュに近づくシーンが“感動シーン”として全米に報道された。この驚異的で未知なるものにスポーツファンが引きつけられた。
- 「自己の限界への挑戦」の時代であった。現在では、このような場合、メディカル面から、この時点で即刻救護されるだろう。
状況例
- 暑さ厳しい初期のワールドカップで、フィニッシュ50m手前でよろけながら、フェンス伝いにフィニッシュに向かおうとする競技者がいた。このまま行けば上位入賞の状況である。マーシャルそしてスタッフは、「このまま何とかフィニッシュしてほしい」と願う。そのため、瞬間的に救護に行けない雰囲気が漂う。
判断例
- エリート選手であっても「ペース配分」は、競技者の義務である。
- このように明らかな危険状況では、救護を先決するべきである。即刻、救護班を要請する。そばまで行き、状況を確認する。「安全はすべてに優先する」。
第32条(競技概要)
- (フィニッシュ)
フィニッシュは(競技者の)胴体の一部(頭、首、肩、腕足は含まない)がフィニッシュライン上に到達した瞬間とする。
補足説明
- 100m陸上スプリントでは、胸を突き出してフィニッシュする。写真判定が行われる。コンマ1秒の差が勝敗を決する。トライアスロンで見かけることは少ない。しかし、今後、スプリント(51.5km x 1/2) あるいはスーパースプリント(51.5km x 1/4) でこの正確な判断が求められるだろう。
- 地面に引かれるフィニッシュラインの両サイドに白のポール(5cm)を立てる必要が生じる。また、ビデオなど微妙なジャッジの補足機器を設置する。
- このような正確な設備が整えば、競技に対する真剣さは間違いなく変化するだろう。「大会運営が、いいかげんである」と感じれば、競技者の大会に臨む姿勢も自然とそのようになってしまうものである。
状況例
- 独走となった選手が、歓喜の表情でジャンプして足をフィニッシュテープに突き出すようにフィニッシュした。
判断例
- 短距離のトライアスロンでは、フィニッシュラインを駆け抜け、その後に観客・プレスに喜びを表すことを奨励している。
- 大会の象徴でもあるフィニッシュテープを蹴ったように見えることは好ましくない。また、この足が先に出るフィニッシュ方法は、フィニッシュの瞬間が判断しずらいことも競技者に伝える。
第32条(競技概要)
- (競技精神)
- フィニシュの瞬間は、単独でフィニッシュラインを走り抜くべきである。
- 選手権あるいはエリート部門において、意図的あるいは不自然な同着はペナルティーの対象とする。
ITU Rule: A competitor may be disqualified for: Contrived or intentional ties by elite/ pro athletes and junior athletes in ITU sanctioned events.
- <98年追加案>一般部門では、競技者どうしが“感動の余りに思わず”手をつないでフィニッシュしてしまったなどの状況は許容範囲とするが、着順を明確にすることを心掛ける。
補足説明
- 北京で行われた国際大会で、米国とオーストラリアの選手がランで抜き抜かれつを繰り返し、最終トラックに入ってから、フィニッシュ直前に歓喜の表現であるかのように、手に手を取ってフィニッシュした。
- 「微笑ましい」とする見方と、「オリンピック距離で、あれはないだろう」とする両論があり、国際的な議論となった。これにより、ITUは上記のルールを制定するに至った。
- 起こった事例をもとに新たなルールを制定する好例である。
状況例
- 待望久しい新人選手が、選手権のランを快走し、見事な優勝を修めた。フィニッシュの瞬間、テープと競技者が重なって見栄えよくなるよう直前でスローダウンし、一瞬立ち止まってガッツポーズを作った。計測員は、完全にテープを切るまで計測スイッチを押さなかった。
判断例
- 勝利を確信し、ウイニングロードで観客とハイタッチをする。観客から旗を受取り意気揚々と走る・・すばらしい・・しかし、タイムを確実にロスしている。
- トライアスロンでは、順位が記録より優先する傾向にある。しかし、一般のプレスは、記録で判断する。競技者は、二度と破られない記録を樹立する喜びを知るべきではないだろうか。それでも、レースをいかに行うかの最終判断は競技者自身が決める“権利”を持っている。競技団体は、より良いスポーツの競技方法を奨励する立場である。

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