JTU競技規則<改定案と補足説明と事例集>
第7章 ランニング(ラン)競技規則 第33条(競技コース)
第33条(競技コース)
- (コース区分)
競技(削除:者の使用が許可される道路に沿って設定された)コースを交通規則を守りながら各表示看板、セィフティコーン、大会スタッフおよび警察官の指示に従い競技を行う。
補足説明
- トライアスロンのコース規制は、「全面交通規制、片側規制、一部規制、使用許可」に大別される。
- この安全に係わる重大な要因を、競技者に明確に伝えなければならない。これにより、競技内容、マーシャルのドラフティングのチェック度合いが変わる。
- ランにおいては、バイクコースより柔軟な対応が成されている。「歩道を走る。片端何メートルをコーンで仕切る。規制なしでキープレフト義務」などである。
- これら規制によってコース区分が明確となる。競技者が、交通規則を守ることは当然として、さらに交通規則順守を促すためにスタッフが配置される。
状況例
- 定期バスが通ることがあり、あらかじめ説明されていた。たまたま運悪く、先頭を行く海外招待選手の前がふさがれ数秒のロスにより優勝を逃した。この競技者は、海外でも起こりえることであるとし、ここは国際友好もあり納得するとコメントした。
判断例
- このようなケースが想定されていたら選手権レベルの大会は実施するべきではない。競技者に「納得して参加してもらう」良好な環境が必要である。
第33条(競技コース)
- (コース進路の確保)
- 競技者はコースを事前の視察などによりよく理解(熟知)する。
- (表現修正)コース進路の確保は、競技者の責任である。
補足説明
- 上記ルールは、「コース視察→熟知→責任確保」という簡単な図式で理解される。
- 現在の国内レースでは、ランでコースミスをするというケースはほとんど見受けられない。しかし、一方で、周回コースが一般化し始めると、周回ミスが問題化してくる。
- 周回ポイントで「手に印を付ける。色違いのゴムバンドを渡す。レースナンバー札を周回ごとに渡す」などが、古典的に行われてきた。
- 最近は、計測バンドに「触れる」「通過する」などにより周回確認が容易になった。それでも、周回数をその場で教えることは難しい。「個人の確認義務」を奨励し、周回コースの大会を実施する。そして、最新機器の導入を研究する。
状況例
- アジアの大会で、トップの選手に、左へ行くべきところを右と指示したスタッフがいた。数十メートル行ったところで、気が付いて戻ったが明らかにレース展開そして順位が変わってしまった。明快な4周回コースで一般には起こりえないことであった。
判断例
- かつて、国際マラソン大会でも、テレビ報道車が折り返し手前でターンしたものにトップ競技者が追従し、だれも注意しないでそのままフィニッシュ、失格となったことがある。さらに、別の海外国際マラソンでは、スタートからのグランドの周回数が1周足らないで、奮闘むなしく参考記録となってしまったこともある。
- いずれについても、「競技者自身がコースを知る義務がある」という国際共通ルールに基づく裁定である。競技者にはつらいことであるが、トライアスロンでも同様である。
- 他事例でも示したように、ここでは、「来期への改善決意を競技者に示し、状況を理解願う」のが“失望感に満ちた競技者”への対応であろう。どんなことがあっても、「ルールはルールである」とはねつけるような対応は慎む。
- なお、テレビ報道車にマーシャルが同乗していたらこのようなことは未然に防げたかもしれない。しかし、一般に報道車にはクルーがひしめきマーシャルの場所がないのもよくあることである。
- 国際大会であれば、言語問題もあり、主要地点には「監督・コーチ用ゾーン」を用意し、競技者に指示が出せるようにする案なども一考の余地があるだろう。
第33条(競技コース)
- (コース侵入の禁止)
- 総合フィニッシュ後に再度コースに入ることをを禁止する。
- 理由のいかんにかかわらず再フィニッシュを禁止する。
補足説明
- 応援、写真撮影などの理由で一度フィニッシュした競技者が再度フィニッシュしたり、コース内に入ったりするケースがある。これは、大会運営を混乱させるものである。計測(計時)の妨害、私的援助の防止からも禁止される。(以上、補則文案より)
- 特定の大会において“同伴ゴール”を認める場合がある。ただし、所轄の競技団体が認めた場合に限定される。(以上、補則文案より)
- “再ゴール、同伴/伴走ゴール”は、「トライアスロンの古き良き時代」に多く見られた。完走の喜びを分かち合おうとするほのぼのとした光景だ。
しかし、再度フィニッシュすることは、即刻失格宣告を受けるだろう。一方、友人や家族とともにフィニッシュすることは、大会の開催趣旨そして参加選手レベルによってはこれも容認されても良いと判断されている。
- 必要なことは、主催者が独自にこれを許可するのではなく、競技団体がこれを認めなければ競技の本質が失われる可能性がある。
- さらに、これを行うには同伴する者を管理するコース入口があり、違反がないかスタッフが管理する必要があるだろう。
- 余りに多い同伴者は、他の競技者のフィニッシュを妨げる恐れが多分にある。
- さらに、選手権レベルの大会と併用した場合、一般マスコミが、すべてのトライアスロンが同伴でよいのだと謝った報道をしかねない。今後、影響力の強いスポーツ報道において最も懸念することである。
状況例
- 友人がやっとの思いでフィニッシュに走ってくる、思わず伴走して勇気付けてやった。しかし、フィニッシュライン手前で、コース外に出た。
判断例
- コース管理状況は考えられる限り万全であった。管理面が悪いことによる情状酌量の余地は少ない。さらに、一級レベルの国際大会でもあり失格の裁定が出された。
- 執拗な抗議を受けたが、受け入れられなかった。
第33条(競技コース)
- (同伴/伴走フィニッシュ:ゴール) <追加ルール(下記、全文)>
- 適用基準:一般部門において下記の要件が満たされ、所轄競技団体が認めた場合これを許可する。選手権大会、予選大会レベルでは実施しない。
- 同伴を受ける競技者の心得:
- 同伴/伴走してのフィニッシュは、他の競技者への影響がない範囲で実施する。
- 自主的な判断により、状況に応じたスムーズなレース運営に協力する。
- タイムロス、順位の遅れなどは了解事項とする。
- 同伴者の規定:
- 事前に設定された「同伴者用ゲート(フィニッシュラインから50m以内)」から、係員の指示に従い、コースに入る。
- 複数の競技者が競っているときはエントリーを制限する。このときは、コース外からの応援とする。
- 同伴者は、若干名(1-2名)とする。幼児、子供の同伴も許可する。
- 持ち込めるものは最小限の旗(130 X 90cm以内) などに限定する。ペット類は禁止する。コース外からこれらを渡す場合も、この規定に準じる。
- 大会により、1位入賞タイムから規定時間が経過後にエントリーを認める。
- 大会に出場した競技者の同伴は認めない。
- その他の規定:
- 旗、花束や幼児を手渡す場合は、同伴者用ゲートから係員の指示に従い行う。一般コース上でこれらを行うことは慎む。
- 飲食物はいずれの場合にも禁止する。
補足説明
- トライアスロンの古き良き伝統はトライアスリートの励みになるものである。しかし、従来のように自由に行われた場合、安全面、運営面そしてスポーツ精神の面からも支障を来す可能性を持ち始めた。
- そのため、普及のための特別ルールとして同伴/伴走フィニッシュを認めるものとする
- なお、同伴フィニッシュが行われやすいロングディスタンスの大会では、まったく単独で最後の力を振り絞ってフィニッシュしてくる選手にも配慮しなければならない。このような選手は、FINISHのバナーのみを目掛けてもうろうとしながら走ってくるかもしれない。ここに大勢の同伴者がいれば邪魔になるだろう。
- 同伴が禁止される選手権部門と一般部門が前後して実施される場合の対応に配慮する。一般スポーツマスコミは、“感動的”な同伴フィニッシュにばかりスポットライトを当て、選手権での優勝シーンをおろそかにすることがある。
状況例
- トップレベルの競技者が、一般大会に参加し“家族同伴”で上位入賞を果たした。ローカルルールでは、併設した選手権は禁止であったが、一般部門は認めるものであった。インタビューで、当人は、「一度、家族ともども完走の感激を味わいたかった」ことをコメントした。
判断例
- まさに微笑ましい、上位選手といえども、家族の理解と協力があってトライアスロンができるという思いやりは称賛にあたいするものだ。これによって、トライアスロンのさらなる普及にも役立つだろう。
- ポイントは、同日に開催された別レースが“選手権”レベルの大会であったこと、そしてこの競技者が強化指定選手であったことである。「手本を示すべき立場」の競技者であってもたまには自由に競技したいと望むこともあるだろう。しかし、一方で、本人の意思とは別に、これが各地に報道されたとき「トップ選手が、同伴でフィニッシュしているのに、なぜこの大会が禁止するのか」という反応が出るかもしれない。
- これらを多面的に考慮して、競技団体そして主催者は、適用を検討してもよかったのではないだろうか。

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