JTU競技規則<改定案と補足説明と事例集>
第9章 抗議 第37条(抗議規定)
第37条(自己申告の奨励) <追加(以下、全文)>
- (定義)
- 競技中に、注意・警告(ストップアンドゴー・ルールの適用を含む)・失格宣告を受けた者は、競技終了後30分以内に、審判長に状況説明を行うことを奨励する。
- 上記以外の場合でも、ルール違反を犯したと自らが判断した場合、状況説明を行うことを奨励する。
- 競技中、あるいは競技終了後に、大会について改善意見などがある場合は、積極的に申し出ることを奨励する。
補足説明
- 《競技者も大会全体に参画している》《競技者自身がマーシャルである》この二つの重要な課題を具体化するために、上記を正式ルールとする提案である。
- 主催者そして審判側は、競技者が「競技環境を最もよく肌で感じている」事実を尊重し競技者の意見に耳を傾け、さらに競技者が感じる繊細な感情を察する努力をしなければ審判業務に求められる《真の信頼関係》は生まれないのではないか。
状況例
- 晩秋の紅葉が美しいデュアスロン大会で、スタート直前に雪のちらつく寒い天候に見舞われた。大会関係者は、防寒服に身を包み寒さに震えながらも「ピリリとしたスポーツ日和」ではないかと感じていた。
- スタート直前に、「寒すぎて危険であるからバイク距離を縮めてほしい」との申し立てがあった。
判断例
- 主催者側は、関係者の意見を総合し、一競技者の意見を客観性が高いと判断し、バイク距離を短縮した。それでも、寒さのため棄権者はでたが事故もなく大会は終了した。
第37条(抗議規定)
- (定義)
- 抗議は、第一段階として、競技者または代理人から口頭で審判長に行う。
審判長は、即決するか必要により、大会の審判委員会・実行委員会・技術代表・上訴委員会に意見を求めて決定する。
また、審判長は抗議内容により書面の提出を求める。
- 抗議は、「他競技者の言動、大会役員および大会運営」に対して行う。抗議を申し立てる者は、事実関係を明確にすることが求められる。
(削除/立証する義務を負うものとする)
- 「判定:ジャッジメント・コール(judgement call)」に対する抗議は受け入れられない。判定は、「ドラフティング違反、危険行為、スポーツマン精神に反する言動」などに対し審判長が宣告する。
<補則1> 抗議することができない判定は、次のような場合である。
- 「ドラフティング規則違反を繰り返し、ストップアンドゴー・ルールの適用を複数回受けての失格判定」には抗議できない。
(以下削除)「ドラフティングのルールで先行のバイクの車輪先端から10m以内につけて30秒以上競技を続行した違反に対する失格の判定。
- 「他競技者に対する失格判定」
- 「マーシャルとスタッフに対する横暴な言動に対する失格判定」
<補則2> 次のような場合は、抗議することができる。ただし、抗議は、必ずしも受け入れられるものではない。
- 対象競技者の誤認。
- 不可抗力による違反
- キープレフトを守らなかったのは、コース左端が荒れており危険回避の理由があった。
- (以下削除)コース指示板が異なる方向を向いていたためにコースアウトをしての失格の判定。
(以下、削除)その方法は、前述のように第一段階では口頭にて行い、さらに必要な場合は文書にて規定従い上訴することが許される。
- 抗議を申し立てる者は、審判長の指示により大会審判委員会の事情聴取に応じる。大会審判委員会は、審判長が、主任審判員(チーフマーシャル)を加え開催する。
また、大会運営が規則通りであったかどうかを確認するために、大会の運営委員長や技術代表の意見を求める。
- (以下、削除)抗議は、競技者本人または代理人によってのみ行なわれる。
補足説明
- 「判定に対し抗議できないというルール」がなぜあるのか。意外に認識されていない。
第一の理由は、「違反現場を再現できない」ことにある。
第二には、「公認審判員は、再現できないような行為を未然に防止する職務がある、とともに競技団体が認定した公認審判員の判断は正しい」と考えないと、レースが成立しないからである。
- 仮に、判定後に審判員あるいは審判長のミスジャッジが認められた場合でも、審判委員会としての判定は、原則として変わらない。これに意義がある競技者は、上訴委員会に申し出ることも許されない。現場の判定を再現できないからである。
- このような場合、ルールとはいっても、競技者には納得できないことが多い。そのため、「判定に抗議するのではなく、審判構成や審判資質に対し改善要求はできる」と考えることがフェアーな考え方であり方法である。
- さらに、余りに不適切な判定であったと後日判断された場合は、別途、審判長を任命したJTU技術委員会(後援大会では、所轄競技団体会長)と承認したJTU理事会(JTU技術委員会)の責任となる。別途の裁定が審判長に下されることになるだろう。一般大会においては、所轄競技団体が、審判長に対し全責任を負うものである。
- 「抗議を申し立てる者は、審判長の指示により大会審判委員会の事情聴取に応じる」とする規定は、これまでも行われていた方法であるが、公式ルールとする提案である。
- いかなるコース指示ミスがあっても《コースを知る義務》がある。「競技者の抗議は、必ずしも受け入れられるものではない」が、情状酌量の余地ありと判断されれば、ペナルティーの軽減を受けることができる。
- 主催者そして審判側は、「ルール違反がコース設定や運営の不備によって起こりえる」ことを考慮し、この《不備の度合いに応じてルール違反の度合い軽減》することを考えるべきである。
状況例
- 後援大会での審判長が、違反を犯したとされる競技者に対しきわめて不適切な言葉遣いで対応した。競技者は、そのときは「仕方ない、自分が悪かったのだから」と思って厳しい言葉を甘んじて受けた。
- 帰宅後、レースを振り返るために競技そして運営規則を読み返すと、大会運営に不備が多数あることが分かった。さらに、それらの運営不備について適切な説明がなかったことも思い出した。「これでは、日本のトライアスロンの将来は暗くなる一方である」と感じ、所轄の競技団体に文書で改善案を提出した。
判断例
- 競技者は、トライアスロン大会の運営が難しいことを理解し、余りに過度な抗議を行えば、大会の存続さえ危うくすることを知る必要がある。
- そのため、穏便な方法で意見提出を行ったことは奨励される。
- 競技団体は、主催者と総合的な運営改善を真剣に研究するとともに、誠意を持ってこの競技者に回答するべきだろう。
- 審判制度自体に反省事項があれば、個々の審判員を批判するのではなく、競技団体をあげて全体の質的向上に取り組まなければならない。
第37条(抗議規定)
- (抗議内容と規定)
- 競技者の参加資格に関する抗議:
競技の開始前に行う。競技開始前に裁定が下されない場合、訴えられた競技者の出場は許可される。裁定は、大会結果の発表前に行われる。
- 競技コースの安全にかかわること、運営規則に反することに関する抗議:
競技開始前の「24時間以上前」に行う。ただし、規定時間以降であっても、特に安全にかかわることは重要であり、大会主催者に申し出ることを奨励する。
- 他競技者の違反・危険行為や大会運営全般に関する抗議:
抗議者のフィニッシュ後「60分以内」に行う。
- 他競技者の用具に関する抗議:
抗議者のフィニッシュ後「60分以内」に行う。
- 記録計時に関する抗議:
最初の記録結果が掲示されてから「30分以内」に行う。
(追加)記録結果の発表が後日となった場合、所属競技団体から14日以内に文書で抗議を行う。
補足説明
- 競技者が抗議を行うためにどこにいったら良いのか。競技説明会で正確に場所を知らせなければならない。一般的には大会本部である。
- 判定や記録は、《公式掲示板》に掲示される。この適切な設置場所を知らせなければならない。そして、その場に審判長あるいは副審判長が立会い、抗議を受ける体制を整えるものである。
状況例
- 後日、送付されてきた大会記録に「警告」と明記されていた。公式記録とはなっているものの納得できない。
判断例
- 現在では、記録の速報性が高く、競技終了後に確認できるようになった。しかし、高性能コンピューターがないころは、このようなケースが多かった。また、長距離のトライアスロンでも起こりがちである。
- 主催者は審判長や技術関係者ともども、競技者からの意義申し立てを尊重し、次期大会への反省とするものだろう。

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