第1条(制定の基準)
- 日本トライアスロン連合(JTU) 運営規則は、国際トライアスロン連合 (ITU)の運営規則 (ITU Operations Manual)、関連競技団体の規則、道路交通法および各所轄機関・団体の規則に準拠し、日本国内のトライアスロン競技、デュアスロン競技および関連複合競技に適用するよう制定された。
- 関連複合競技は、ウィンタートライアスロン、カヌートライアスロン、インドア(室内)トライアスロン、アクアスロン(スイムラン複合競技)などがある。
また、競技用具の規定によりマウンテンバイク・トライアスロン/デュアスロンやチームで行うリレー・トライアスロンなどがある。
なお、インドア・トライアスロンは、大規模施設内の特設コースで行うものと、エアロビックス用具を使用した模擬形式のトライアスロン・トライアルがある。
- 本規則の文中で「トライアスロン」とのみ記されていても原則として「デュアスロンおよび関連複合競技」の意味を含むものとする。また各名詞の複数単数は、基本的に両方を包括する。
補足説明
- ITUは設立年度の1989年に運営規則を草案し、世界選手権の開催基準とした。各国から持ち寄られた規則が集大成され、その後、大会開催ごとに見直されている。
- ITU運営規則は、世界選手権やワールドカップなどで適用されるが、各国に同一基準での運営規則の制定を要請している。
- 大会事情などからITU規則に適応できないものは、技術代表をとおしITU理事会の承認を受けることと規定されている。
- 競技規則と同じように運営規則も随時改定されている。総合的にみれば、競技規則より以上に運営規則の適用はむずかしい。また、競技規則の改定にともない、運営規則も変化することが一般的である。
- 運営規則は、大会実施面での不備が起こるたびに改定されるのが一般的である。競技団体は、大会を指導するとともに大会をケーススタディとし、ここから学ぶ姿勢が求められる。また、競技団体が複数の大会に関与していることを考えれば、問題の再発を防止し、優れた運営方法を他の大会で生かすことが競技団体の使命と考えるものである。
- トライアスロンに準じる関連複合競技は、バラエティーに富んでいる。いずれにおいてもスイム(水泳)、バイク(自転車)、ラン(ランニング)を基本に構成される。
- 規則で示された各用語は、JTUが規定するスポーツの公的用語であり、これらの名称をJTU以外の団体・企業が特記して所有権を主張するものではない。
事例
- 98年11月にオーストラリアのヌーサで、ワールドカップにあわせ、アクアスロンの第1回世界選手権が開催された。競技距離は、第1ラン3q、スイム1q、第2ラン3qという特別構成であった。
- アクアスロンは、英語では一般的に、“AQUATHON :アクアソン”と表記され発音される。ただし、国内ではトライアスロンとの語感的関係から、アクアスロンとしている。
- JTUでは、第1回の日本ウインタートライアスロン選手権を、99年に北海道のトマムで開催する。
第2条(指針)
- 日本トライアスロン連合(JTU)は、国際オリンピック委員会(IOC)の加盟団体である国際トライアスロン連合(ITU)のオリンピックムーブメントに賛同し、トライアスロンのスポーツ競技としての品格と社会的な格式認識(威厳)を高めるために、主催者と競技者そして関係者全員の一致団結した協力体制を確立する。
- 主催関係者はトライアスロン大会が一般道路・海浜河川・公共施設を利用して開催されることを認識し、本運営規則に順守し、所轄競技団体および所轄機関・団体との連携により安全で確実な競技のために最大の努力をする。また、ボランティアスタッフおよび地域住民に対する十分な配慮を行う。
- 大会に参加する競技者および主催関係者は、広義において公共から利益を享受する「受益者」と見なされる。一方、これに対し何らかの不利益をこうむる地域住民がいることを認識しなくてはいけない。そのため主催関係者は、受益者として不利益者に対する十分な対応を行う。
補足説明
- 競技団体の理想と主催者が抱える現実、そしてこれらの狭間で起こる問題は競技者そして地域住民や関係者に多大な影響を与えることがある。競技者にルールが適用されるように、主催者にも開催に係わるルールが適用されている。
- ルールを管理する競技団体そして技術・審判委員にもこれが適用される。ルールは、いずれも社会的な一般通念の上に築き上げられているものである。
- ここでいう受益者とは、JTU設立にあたり関係者から何度も引用された言葉である。「公共から享受する受益者」は、社会的見地からみれば《主催者側となる競技者》にも及ぶことである。夏場の大会で捨てられたゴミやバイクボトルが秋の刈り入れのときにゴロゴロと出てくれば、地域社会から大会への心からの協力を得ることはできない。
- 競技者は、ゴミを捨てない。主催者は、これを抑制するための策を講じる。技術・審判関係者は、競技者のマナーにも及ぶ教育的指導が必要なゆえんである。
- 一方で、審判員を含む主催者側は、記録そして完走のために我をも忘れる競技者の心理を理解する。たんにルールで罰することを考える以前に、運営の工夫により、「ルール違反を起こしづらい大会」をめざすものである。
- ルール違反が起きにくい大会とは、「大会運営が明快で分かりやすい大会」と言い換えることができる。コース進路は、ハッキリと区分されている。エードステーションでは、スタッフが冷静で機敏に動いている。見た目にも良い。スタート前の競技者を必要以上に待たせることもしない。
- 人間はコンピューターのように動けるものではなく、ルールをうっかり忘れるかもしれない。審判員も競技者も同じである。その人間が、ミスを起こすことは必然と考えたほうがよい。
- お互いに完全とはいえない人間が織りなす大会を、ハード面のみならず、人間の心理面からも追求し改善するソフト面も、重要な成功への要因である。
事例
- 琵琶湖でのアイアンマンが、交通事情や経済事情そしてスタッフ動員の問題などから中止となってしまった。さすがに200キロのコースを確保し、これを継続することは、むずかしい。その後、再開を熱望する選手たちは、嘆願書を出すなどをしたが、実らなかった。
また、インターネットに集まった意見で多くを占めたのが、「自分が田んぼに捨てたバイクボトルが悪かったのか反省している」「運営に多少の難があったが、それでもなくなるよりはよかった」「距離を短くしても続けて欲しかった」等々である。
「なくなってから、その存在の重要さがやっと分かる」。古今東西で語り継がれる多くの言葉が残されている。トライアスロンに当てはまってしまった。
主催者、競技団体そして競技者が一致団結してかけがえのない大会をいかに存続させるべきか、そのヒントがここにあるといえる。
第3条(大会管理)
- JTUは、(削除案:オリンピック種目(2000年シドニー大会)として認定されたトライアスロンにふさわしい優れた大会)トライアスロンそして関連する複合競技の理想的な大会開催のために、本運営規則および競技規則、審判規則を制定する。
- JTUが主催・共催そして後援するトライアスロン競技大会および関連する複合競技大会の主催者は当規則に従い大会を開催する。
- JTU加盟団体が管轄する大会においても、本運営規則を順守することが求められる。
- 本規則は、開催地の特性により所轄競技団体の承認を受けたローカルルールにより補足される。
(以下削除)開催地の特性により本規則の適用が困難あるいは不可能と思われる場合は、代替案あるいは変更案を事前に所轄の競技団体に書面にて申請し、ローカルルールとして承認を受ける必要がある。
補足説明
- 上記1.は、94年にトライアスロンがオリンピック種目となったことを受け、広報的意味合いを込めて、明記した文面である。これが、周知した今日、当文面は削除し、オリンピックばかりでなく「広い普及をめざす」規定文に変更する。
- JTU運営規則は、主催・共催大会でも完全順守がむずかしいことが多い。そのため、「本規則と矛盾しないローカルルール」により現場に則した適用が必要なことがある。
- ルールの適用は、社会情勢を反映し、競技力の向上、競技用具の改善などにより、時とともに厳しさを増すのものである。
- 社会的な見地から、JTU規則は公的な基準としての重みを持つことがある。運営面での問題が起こったときの解決への拠り所となるものである。
事例
- ローカルルールについての事例は、JTUテクニカルガイドラインや事例集に紹介したとおりである。
例えば、「バイク追い越し禁止」という表現が不適切といわれる。もし意図的ながら疲れた表情を装って、その区間で、先行する選手が、スローダウンしたらどうなるか。あるいは、本当にメカトラブルで停止している選手でさえ追い越せないのか、などを想定してみるとこのルールに矛盾があることに気がつくだろう。
また、このルール順守を監視するために、相当数の審判員を配置しなければならない。現場での適用を考えれば、「追い越し注意」がより現実的な対応である。
- ローカルルールという表現は、「ローカル=地方」という意味合いに感じる。違う表現はないのか、という意見があった。
日本語で感じるローカルと英語本来の意味は、やや異なる。英語では、その地域という意味合いが強く、“田舎”という意味合いは強調されていない。
国際的には、ローカルルールと表現するよりは、直接的に「シドニー・ルール」などと表現することが多い。国内の大会もこれにならい、「宮古島ルール」や「天草ルール」として簡潔にまとまった特別ルールが、JTUルールを基本に一般化すれば、順守率も高まることだろう。

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