JTU運営規則<改定案と補足説明>
第19章 医療救護指針
第74条(総 則)
- この医療救護指針は、JTU主催・共催・後援大会の競技者の救護活動に関するものである。一般大会においてもこれに準拠する。
- この指針はITUのトライアスロン・ディスタンス(51. 5キロ)世界選手権の医療救護指針にもとづき、日本国内の実状を考慮し作成した。
- 医療救護体制は、開催地の気象条件・参加人数などにより十分な安全が確保できるように整える。
- 大会開催に際して、参加競技者の安全対策、救護活動が最重要事項である。
- 地域医療に大きな障害を与えないように、大会規模ならびに医療救護体制を整備することも大会成功のために重要である。
補足説明
- 「医療救護指針」は、“規定”ではなく“指針”として明示されたものである。トライアスロンや関連複合競技の大会現場は、個々に環境が違い、一律に適用することが難しことがある。
上記の5.で示されるように、地域医療に著しい影響があれば、大会の継続も難しくなるかもしれない。一方で、地域医療との兼ね合いをとりながら、極限的な状況にまで達することがある競技者の迅速な救護を考慮しなければならない。
- メディカル関係事項は、技術・審判や他部門とも密接につながっている。そのため、大会の準備会議や選手説明会などでメディカル部門の注意を直接説明してもらうようにしたい。
- 技術・審判員は、メディカル業務がスムーズに行えるよう支援する。
- 競技者と医療の関係にかかわるルールは、JTU競技規則第3章第12条1(個人的援助)に明記されたとおりである。
「競技者は、第三者の援助を受けて競技してはいけないが、エイドステーションやメディカルテントなど定められた場所での援助は認められる。また、大会医療スタッフによる診断・治療は援助とはみなされない」
- 以上により、医療スタッフが、緊急時と判断した場合は、すぐ対応するべきであることが分かる。さらに、ふらつきながら走っているような競技者がいたときは、「審判員に指示し、競技を停止させ様子を見る」ことも権限として認められる。
第75条(医療要員)
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- 競技医療責任者(Race Medical Director, RMD) :組織委員会より選任され、JTUメディカル委員会の指定を受けた医師が担当する。
- 競技医療責任者は、大会当日の医療要員の任命、医療テントの組織化、器材の準備において全責任を負う。
- 競技医療責任者は、トライアスロンや関連複合競技の医療救護の経験を有していなければならない。
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- 医師:参加競技者200名までは2名の医師が必要である。以後、200名増える毎に1名増員する。コース、テント数などにより適時増員する。
- 救急治療医学の経験を有する医師を、1名以上参加させなくてはならない。
- 看護婦:参加競技者200名までは2名の看護婦が必要である。以後、100名増える毎に1名増員する。
補足説明
- 大会により医療マッサージ・スタッフを置くことがある。一般に、ロングディスタンス・トライアスロンでの対応が多く、短距離タイプでは、設置しない傾向にあるようだ。
- トライアスロンが導入された当初は、競技者もマッサージが当然と考える傾向が強く、スタッフ調達も大変であった。また、「医療」に該当しないで受けることも多かった。マッサージを受けた競技者は、医療記録に残され、選手評価の資料とされることがある。
第76条(医療テント)
- 設置場所・サイズ:医療本部テントはランフィニッシュに隣接した場所に設置する。
- 医療テントの設置は他の全てに優先する。医療テントは参加競技者の3%に相当する数の簡易ベッドを置くことができ、また連絡と器材供給のためのスペースが確保できる十分な大きさにする。
- 必要があればコース上の危険な箇所などにも小規模の医療テント(ベッド数2前後で医師・看護婦1名ずつ)を設置する。
補足説明
- 大会の平均温湿度により、クーラー付きのコンテナハウス設置が効果的である。
- □医療テントは、競技者ばかりでなくボランティアスタッフや観客のためにも使用されるものである。
第77条(医療器材・器材補助)
- 参加競技者の7%の外傷(擦過傷、捻挫、骨折など)の処置に必要な包帯、副木、テープなどを準備する。
- 心臓の緊急処置用薬剤、呼吸障害その他の急性内科的障害に対処できるように準備する。医師と看護婦は全員救急器材の使用法に精通していること。
- 医療テントでの外傷の処置は、消毒、止血程度にとどめ、縫合は病院に依頼する(医療テントでの縫合は不潔になりやすいので)。
- 体温計は看護婦1人あたり1個用意する。できれば深部体温計(直腸・鼓膜温)も合わせて用意する。
- 心電計は1〜2台(必ずしも12誘導は必要としない)、除細動器は1台用意する。
- 聴診器は各人1個ずつ用意する。
- 血圧計は看護婦2人あたり1台用意する。
- 飲料水はエイドステーションなどで十分な量を確保できるように用意しておく(数・量についてはエイドステーションの項を参照)また、医療責任者の判断で医療テントにも飲料水を用意しておく。
- 電話は医療テントに少なくとも1台ずつ備える。
- 大会本部と医療本部テント間は確実に連絡をとれるようにしておく。
- 救急車との通信に使う無線設備を医療本部テントに備える。
- 経静脈輸液は参加競技者の5%の選手数に対応できる輸液を準備する。各セット当たりの輸液量は0.5リットル。推奨される輸液は、生理的食塩液かそれに相当する溶液である。
- 氷は参加競技者5名あたり1キログラムを医療本部テントに用意する。
- テーブルは大きなテーブルを3脚用意する。
補足説明
- 多忙ななか協力願う医療関係の方々にも、快適なメディカル業務をしていただけるよう十分な配慮をしなければならない。
- 大会主催者は、救急医療での経費関係を詳細に打合せておくことが必要である。
第78条(救急車両)
- 主催者は、救急車両の所轄機関に大会概要を説明し、緊急時の対応を要請する
- 大会現場に配置される救急車両は、2台体制を基本とする。また、参加競技者1000名当たり4台の配置を基本とする。
以上を基本とし、競技コースや現場医療施設さらには救急車両の現場へのアクセス方法・時間を考慮し、総合救急体制を確立する。
- 救急車には医療本部と直接連絡を取る事のできる無線設備を搭載しておく。
- 救急車には必要に応じて、医師または看護婦が乗る。
- ランフィニッシュ地点と医療テントは、救急車が直接乗り入れる事が可能なように配置する。
補足説明
- 大会の開催地は、一般に都市部から離れた所で開催されることが多い。そのため、救急車両を大会現場に張りつけることが難しいことがある。その場合は、現場体制を充実するなどで相互的に補足することになる。
第79条(病院の選定)
- 少なくとも1カ所、できれば2カ所の近隣の病院に大会中の緊急入院に関して承諾を得ておく。
- 救急室スタッフは予想される外傷・障害に関する教育を受ける必要がある。
- 病院の医師と、収容する競技者の到着する前に連絡を取り、その競技者の状態について詳しく報告する。病院に収容された競技者については、できるだけその後の経過を追うようにする。
補足説明
- 緊急時の医療については、「誓約書」において明記された内容が、主催者と競技者の間の基本的な合意事項といえる。
- 一般に、「競技者は、緊急医療を受けることを了解する」もので、それ以降の処置については、個々の問題とされる。さらに、大会傷害保険で適用される範囲内とされることが多く、一般に慰謝料などを含むものではない。
- 病院に収容された場合の経費については、競技者が持参する「保険証」での適用が一般的である。
- 傷害保険の適用には、大会での傷害であることを証明することが必要とされる。
第80条(医療記録)
- 処置をした競技者あるいは診察した競技者の医療記録は個別に保存しておく。
- 大会が終了したら速やかに記録のコピーを、JTUメディカル委員会に提出する。
補足説明
- 大会での医療体制は、現場での対応のみならず、ケーススタディとして他大会でも有効に利用されるものである。
- さらには、トライアスロンの医事科学面からの競技者育成そして強化にも活用されるものである。
第81条(医療監視員)
- 医療監視員は参加競技者150名当たり1名とする。
- 医療監視員には医療要員、医療補助要員があたり、医療処置が必要な競技者を識別し医療本部まで付き添うためにラン・フィニッシュ地点で待機する。
補足説明
- 長距離耐久種目ともいえるトライアスロン競技では、競技者の完走する喜びが大きく、必然的に限界ぎりぎりでフィニッシュすることが多い。
- 十分な水が素早く手渡せる態勢が必要であるとと同時に、倒れこんでくる競技者への緊急対応は必須である。医療本部は、フィニッシュ地点から至近距離に設置することはもとより、その場にも対応可能な医師や看護婦が必要とされる。
- 医療監視員は、Medical Spotters.

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