●ここで知っておかなければならないこと
■ただここで知っておかなければならないのは、音には、強さ、大きさ、音色、とがあるという事です。
※音の強さ(Intenseness)は、音圧(物理的な量、エネルギーの密度等で表わされる。)
※大きさ(Loudness)は、音の高さ(周波数)を加味した相対的な感覚量で表わされる。
※音色と音量
ピアノの音は、異なった周波数の音が色々な強さや長さで混ざりあって構成されている、例えば、A440Hzの音の成分の主なものは440Hzの整数倍である880Hz.1320Hz.1760Hz等で、440Hzに対して倍音と呼ぶ。
■我々は高い音、即ち周波数の多い音を大きく感じるので、高い(周波数の多い)倍音を多く含んでいる音を大きな音、刺激のハッキリした音に聞こえるが、周波数の多い音は、エネルギーとしては小さいので、周波数の少ない期音、及び部分音(倍音)が多く含まれている音の方が、音の強さ、音量は大きく感じる。
従って、高い周波数の部分音(倍音)が多く含まれる音は、近くでは大きく感じるが、遠くまで音は透らない。反対に、低い周波数の部分音(倍音)を多く含む音は、近くでは地味に聞こえるが、良く透るのである。
以上のことから、
音の大きさは、音色によるところが非常に大きいことが推察されるのであって、刺激の強いハッキリした音のピアノが必ずしも音量のあるピアノであるとは言えない事が明らかである。
以上のことをふまえたうえで
「日本人の演奏は正確だが表情がない、国民気質のせいか、ピアノ教育の方法なのか、」 日本のピアノの生産台数は戦後急激に増加し、高度成長に乗り、ただ物として、商品として、88鍵ならんで叩いて音が出れば(どんな物でも叩けば音は出る)ピアノだという事で飛ぶように売れた。
■ピアノという楽器が本来どういう物なのか考えず。音色の変化など目もくれず、どうしたら生産台数が上がるかを考え生産しつづけた。
■そのため工業製品として、生産台数、機械的な精密さ、コストダウン等は、世界NO.1のレベルまで成功している。
■一応音階としてはドレミはちゃんと出るし、機械としては、かなり優秀だ、音が分からない素人には、値段が高く、また、長い間船に積まれて来て整調が狂ってしまっているが、表現力の豊かな舶来のピアノなど必要なかった。
■たくさん売れたという事は、ピアノを習う人も増えたし、習う人が増えれば教える人も増える、音も狂うので、調律というただ音を12平均率にする調律師も増えた。
■ただ音が出るだけで、弾き手の指の変化にはたいして反応しない。そんなピアノを使って練習していれば、おのずと、感性、表情は無くなり、ただ機械的に正確に弾く様になるだけだと思います。
■そうして、たまたま飽きずに続いた人達が音大に入り卒業して、ピアノ指導者になっている、このようなパターンが大部分を占めているのではないでしょうか。
(ほんのごくわずかの人たちが、本物の表現力の有るピアノを知っていて持っている、感性、表現力豊かな指導者に、指導を受ける環境にあった。)
●ピアノの表現力について
ヨーロッパやアメリカの一流のピアノ
■ヨーロッパやアメリカのピアノメーカーでは、機械としてはピアノになった物を、(これからがピアノになるか、機械で終わるか。)
※整調(機械の部分の調整)と、
※整音『(日本語では、単なる整える音、になってしまうが、
ドイツ語(Intonieren),イントネーション、抑揚を与える作る、
英語(Voicing)発声を与える作る』という、一番重要で、技術と経験と音に対する感性を必要とする、ピアノが音楽を表現するために、なくてはならない作業をするのです。(この作業をするには整調、調律が精密に出来ているのが条件です。)
■ドイツのあるメーカーでは、この作業に10時間以上かけ、それも連続ではなく、2回に分けて、まずVorintonieren(前整音、下整音)、長くかかる時で8時間、普通は6時間半、それから約一ヵ月後に、整調、調律をし直し、Fertigintonieren
(仕上げの整音)、これに4時間から5時間かけているそうです。
■この整調、調律、整音は、密接に関連していて、例えば音の出方によって、鍵盤が重く感じたり、軽く感じたり等、色々複雑で、ピアノの構造や部品の良否を理解し、整調、調律はもちろんの事、ピアノから出る音を技術的にどう対処したらよいかを知らなければならない。これは、音楽に対しても、深く理解がなければならないし、自らも多少のピアノ演奏が出来なければならないのです。