「風」とは :大気塊がその位置に[存在]し、かつ運動の状態を表すものです。
「風」は、流れ、高低気圧の渦、前線などを[形成]し、大気の[存在]を主張します。
「風」は、寒気・暖気・水蒸気などの物理量を含む[大気]を[運搬]します。
「風」がなければ、[物理量]は運搬されず、[天気の変化]は生じません。
「風」があっても、[物理量]の[移流]がなければ[天気の変化]は生じません。
「風」は、3種の変数u,v,wで表され、他の4種の変数(P,T,q,ρ)とともに
プリミティブ方程式上で関係づけられ、GPVとして計算されます。
天気の予想への応用 :−−−>[時間外挿]及び[移流の状況把握]に用います :
大気の流れる方向(水平方向、鉛直方向)、強さ、それらの分布及び時間変化から、
大気を立体構造的に把握し、大気の状態を思考空間に、Virtual realityとして描き出します :
・ ある地点の大気がどの様に流されて行くかを[同一天気図上]で予測します。
即ち、物理量、観測値、予想値等のデータを読みとり、把握した上で、(次ページ図参照)
高低気圧の位置、 大気の回転状態(高低気圧の存在の暗示)、
大気の収束の状態(前線の存在の暗示)、大気の流れの形、通り道(流跡)
等の大気のインフラを決める現象が、風上の地点Aから、「風向・風速」によって、
どの様に流されて行くかを、ある時間経過後の風下の地点Bの状態として予測するため、
時間外挿します。−−−>全国天気概況 及び 各地の天気の推移を予想します。
・ 同一地点(AならA地点だけ)の大気の状態の変化(移流状況)を
[複数枚の連続的に異なる時刻の天気図]を用いて予測します。即ち、特定の1地点における
物理量(温度、気圧、渦度、温位、相当温位)
の単位時間あたりの変化量に着目し、それらの風速成分から[移流量]を求めます。
−−−>ローカルの天気変化がどのようになるかの予想につなげます。
「見方」 :気象においては、大気(流体)を見る見方に、2つの重要な「見方」があります。
1.一つは、大気塊の移動の前後の物理量の変化を見る、(同一大気粒子を観測対象とする)
2.もう一つは、ある固定点での大気の物理量の変化を見る(異なる大気粒子を観測する)
−−−>次ページ 及び P.59 コラム 視点を参照して下さい。
「風」が生じる[理論的]根拠 :
「風」は気圧傾度の大きさに比例した強さで、傾斜している方向に吹こうとしますが、
地球という回転球面上で移動するため、みかけの力により、方向が転向させられます。
地衡「風」の風速は、気圧傾度力とコリオリ力の釣り合いより、近似的に算出できます。
・台風や竜巻等の強い回転を伴う風は、遠心力の影響を無視できません。
・激しい鉛直流は、静水圧平衡や地衡風平衡が成立しません。
・地上風は、地表面の摩擦や地形等の影響を考慮する必要があります。
P.40の地衡風の風速算出及びP.41の鉛直P速度を参照して下さい。
プリミティブ方程式(P.66参照)における「風」の関与についての考察:
「風」の位置や速度は x,y,z,dx/dt,dy/dt,dz/dt 及び
u、v、wなどの変数で表現されます。(回転座標系では、半径や角度でも表現されます)
これらの「変数が入り込んだ式」は、皆「風」と関係します。さて、
1.運動方程式は、風そのものの位置、速度を表すものです。(各種の座標系で表現されます)
2.気体の状態方程式は、風の位置・速度を求めるためのものではありませんが、
常にこの式が成立しています。制約条件として機能します。
3.質量保存則は、大気が「連続流体」であることを示します。制約条件となります。
この法則が風の速度・位置を決める主役となるものではありません。
4.熱力学の第一法則は、外部仕事と内部エネルギーの関係を表すもので、
風とは一見関係ない様にみえますが、「温度の流れ」に関係しそうです。
5.水蒸気量保存則は、これも風とは直接関係なさそうですが、降水分布に関係しそうです。
その他の法則等との関連:
エネルギー保存則−−−>大気塊を質点と見なす事ができるときの風速や高度が関係します。
ベルヌーイの定理−−−>流体のためのエネルギー保存則です。風速、高度、気圧と関係します。
渦位保存則−−−−−−>渦の大きさと方向に関係します。
角運動量保存則−−−−>回転運動の大きさ、強さと関係します。
|
|