以下は、気象予報士会のホームページの公開前の掲載例です。
掲載番号:19980927-理論−01
氏名及び原典:佐藤元氏(神奈川県、satoh@ny.airnet.ne.jp)のホームページからの引用です。
投稿日及び掲載日:1998年9月27日
天気図と気象理論
AZR26  理9 気象の理論  温位 (θ)
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[1]温位と相当温位 :

  「温位」は、任意の気圧高度にある大気塊を、乾燥断熱的
        に、1000hPa にもってきた、としたときに、
                その大気塊が示す温度のことです(K表記)。

  「相当温位」とは、特別な場合の「温位」のことです。
   即ち、
   ・大気が湿潤断熱的に曲線上を上昇するとき、
   凝結の潜熱分だけ温度上昇し、「温位」も上昇します。

  ・Γd>Zup>Pdown>飽和>凝結>ΔTup>未飽和>Γd>
      Zup>Pdown>飽和>凝結>ΔTup>未飽和>・・・
      ・・・を繰り返しつつ湿潤断熱的にΓm上を上昇。

  ・水蒸気はすべてが一度に凝結するのでなく、徐々に、
   段階的に凝結し、そのたび毎に「温位」が上昇します。
  ・「最後の一滴が凝結」し、「その潜熱」が大気に
   与えられた、とした時の「温位」が「相当温位」です。

  ・即ち、相当温位は湿潤大気の到達し得る最大の温位です。


[2]「温位」算出の理論的根拠 :
温位の予想方程式です。
    ∂θ/∂t=−(u∂θ/∂x+v∂θ/∂y+w∂θ/∂z)+H

  ・「温位」は、気圧P、温度Tを与えると
   下記定義式から計算できます。

    θ = T・(1000/P)の R/Cp乗、(R/Cp=0.286)

  ・図で見る様に、大気が水蒸気を含んでいると、
   LCL以上の高度で「温位」が高温側へ
   シフトします。−−−>このシフト先は
               湿潤断熱曲線そのものです。

[3]相互影響・関連についての考察 :    ・受ける影響<−−気温    ・与える影響−−>大気の安定性判別、前線の解析     ・プリミティブ方程式(P.68 参照)における「温位」の関与についての考察:     1.運動方程式はu、v、w、ρ で構成されますが、「温位」は直接関係しません。     2.熱力学の第一法則は、θ、u、v、w、で構成されます。 外部仕事と内部エネルギーの関係を       表すもので、温位θ そのものの変化を表しています。     3.気体の状態方程式は、P、ρ、Tで構成されていて、どんな高度においても、この式が成立       しています。 「温位」とは温度Tを経由して関係します。  その他の法則等との関連: ベルヌーイの定理−−−>流体のためのエネルギー保存則です。u、v、w、ρ、Pの関係式です。               気圧のためにこの保存則があるようなものです。 「温位」 は、鉛直流の               温度と関係し、P=ρRTにより、気圧にも影響する存在となっています。
[4]天気の予想への応用−−> 
      ・天気図に「等相当温位線」が描かれている場合は、乾燥大気の温度がわかれば、水蒸気量が
    推定できることとなり、かつLCL以上での大気の不安定性を議論することが可能となります。
   ・水蒸気の相変化の凝結過程で、その大気の温度は水蒸気の分だけ(混合比の分だけ)高くなりますが、
        温度上昇=θ−θe として、マグラム上で図式に求められます。
      (上図 及び P.47 湿数の頁の図参照)

[5]見方−−>「温位」によって、同一基準(1000hPa)で議論することが可能となります。大気が湿潤な
        時でも「温位」というものが存在します。「温位」は乾燥大気の専売特許ではありません。      
        P.34 相変化、水蒸気の飽和、凝結や、P.30  エマグラムも合わせてご検討下さい。

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掲載番号:19980927-理論−01