AZR53 コラム 航走沈下の話
    前頁 次頁 目次  PageLink Last Updated:1998-3/15
航走沈下の話
     
     1997.07.02の 東京湾タンカー座礁事故の原因について:
     07月21日付けの「朝日新聞」の報ずるところによれば、

     『船を海底に引きずり込む「航走沈下」により1メートル沈む?』
     ということの様です。

     これは、「船体が深く沈む大型船が浅い水域を航行すると、
     船底と海底との間隔が狭くなり、その間にはさまれた海水の流速が
     速まる」ということで、ベルヌーイの定理により説明できるとの
     専門家のコンメントがあります。

     『ベルヌーイの定理』とは:
     「飛行機が上昇できること」、「野球のボールがカーブすること」、
     「テニスでトップ・スピンの球は普通よりも早く落下すること」
     等の日常的な例があげられます。

     木村 龍治著「流れの科学」P.32〜36の「圧力体験」の中に
     平易な説明がありますので参考にしてください。
     ここでは、キー・ポイントのみ抜粋引用させて頂きます。
     『・圧力差がものを押す力となる(圧力勾配という)
      ・エネルギー保存則が成立している
       ( 1/2・ρVの2乗 + ρgH + P = 一定 )』

     上式より海水の速度Vが大きくなれば、その海水の圧力Pは
     小さくなり、従って船体上部にかかる大気圧との差が大きくなる。
     これにより船体は重力方向に押される(すなわち、沈降する)。

     追記)エネルギー保存則は、気象の世界では、有効位置エネルギーが
        運動エネルギーに変化して、下降流の風速が強まることの説明に
        使われていることを思い出して下さい。
     追記)それでは、回転しながら進行する低気圧の渦巻は進行が曲げられる
        のでしょうか?
        低気圧の上方は発散により逆回転となるため、全体として
        回転力は受けないこととなる!
                (コリオリの見かけの力を考えるべき)

        <<===これでよいか、どなたか教えて下さい。
     

          追記)回転するボールが何故まがるか?
         今、右回転しながら進行するボールを考えます:
        ボールの円周上の(回転軸をとおり)進行方向に直角な方向の
        相対する2点を考えます。円周方向の速度をVとするとき、
          ボールの進行方向の右側の大気の速度は:
           ( 進行速度−回転円周速度V )
          ボールの進行方向の左側の大気の速度は:
           ( 進行速度+回転円周速度V )
        となり、円周速度Vの2倍分の速度差が生じます。
        これが、大気の圧力差すなわち押す力となり、ボールが曲がります。