AZR66 基礎知識 プリミティブ方程式
    前頁 次頁 目次  PageLink Last Updated:1998-3/16
現在気象庁で使われている基礎方程式(プリミティブ方程式):
     1.大気の運動方程式(水平方向)(X方向、Y方向)
        流体力学のNavie−Stokesの方程式のまま。
         δu/δt=−(uδu/δx+vδu/δy+wδu/δz) 
               +2Ωsinφv−δp/ρδx+F 
         δv/δt=−(uδv/δx+vδv/δy+wδv/δz) 
               +2Ωsinφu−δp/ρδy+F 
         大気の運動方程式(鉛直方向)(静力学平衡)
         0=ーδp/ρδρ−g 
     2.気体の状態方程式
         P=ρRT
     3.連続の式(質量保存則)
         δρ/δt=−(uδρ/δx+vδρ/δy+wδρ/δz)
               −ρ(δu/δx+δu/δy+δv/δz)
     4.熱力学方程式
         δθ/δt=−(uδθ/δx+vδθ/δy+wδθ/δz)+H
     5.水蒸気の輸送方程式
         δq/δt=−(uδq/δx+vδq/δy+wδq/δz)+M
1. 大気の運動方程式〈水平方向と鉛直方向の2式あり)
          大気の塊を質点と見做して、その質点にかかる力の釣り合い(傾度力、遠心力、転向力)
     から速度が計算されます。そして、時間を乗じて大気の位置が求められます。
          地球という回転球面上の運動を考えるとき、渦度方程式が得られますが、
          通常は、移流項と収束・発散項のみ問題となる様です。(即ち、渦度移流と収束・発散を
     見極めること) 
       地衡風平衡、静水圧平衡、気圧傾度力、転向力、速度、鉛直P速度、渦度、遠心力等が
     ここで登場してきます。 温度や水蒸気量はここでの本質的な問題とはなりません。

2. 気体の状態方程式
     一様な状態の気塊は、P,V,Tの間に、ボイル・シャールの法則が成立します。
          この式には「時間」という概念は入っていません。即ち、時間を超越して成立している
     関係式です。時間に縛られている1.の運動状態のいついかなるときも、この気体の状態の
     関係は成立しています。  この認識は非常に重大な事だ、と私は思っています。  

3. 大気の連続の式(質量保存の法則)   
     大気は連続した流体であるから、或る断面を通過するとき、その断面への流入質量は、
          断面からの流出質量に等しい。 収束・発散と言う状態を論ずることとなります。
          天気図上に直接収束・発散が表示されることはありませんが、前線等の転移層や高気圧・
     低気圧における大気の吹き出し、吸い込みを考えるときに関係して来ます。
     大気の密度がここで登場して来ます。 

4. 熱力学の第一法則(エネルギー保存の法則)
     大気の運動、特に鉛直方向の上昇/下降の時断熱変化をします。
     温度や圧力は変化しますが、議論対象とする系の内外のエネルギーの授受はありません。
     エネルギー保存則も天気図上には表示されないでしょうが、エマグラムはこの法則の塊
     みたいなものです。          温度や温位、相当温位、気温減率がここで登場して来ます。

5. 水蒸気保存の法則 
     大気中の水蒸気は気温、気圧が変化するに伴って、相変化します。
     相変化があっても、系外に降水等となって去らない限り、水蒸気量の増減はありません。
     水蒸気の保存則はそれなりに重要なのでしょうが、むしろ水と言う物質の「相変化」を良く
     理解しておくことがもっと大事だと思っています。
          なお、ここで水蒸気量、湿数、比湿など降水量に関係する用語が登場して来ます。
     1.により大気の高度が決まり−−>大気の圧力が決まり−−>H2Oの状態が決まり
     −−>水蒸気の凝結、 という図式となるでしょう。 

以上の式に登場する変数は、
       3方向の速度、空気の密度、気温、比湿、気圧 
の7種類で、適当な初期値からスタートして、スーパーコンピューターにより手順に従って
計算されます。