気象工学 (風のエネルギー) 

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Originated: 2005-12/28,  Last updated: 2006-1/21, 2/16, 2/20, 2/23, 5/10

痛ましい事故でしたが、2005年12月下旬の東北地方での羽越線列車転覆事故は、 風が大きく原因していると考えられています。 以下、列車を転覆させた風の力や風速を力学的に考えて見ます。
羽越線、庄内平野概念図
最上川流域概念図

(1976年10月29日、酒田市の大火があった。 夏場、東高・西低のとき、新庄盆地から西進してくる風は、 清川ダシとして有名。およその強風域を円で示す。風力発電に利用している。 山峡は、芭蕉の俳句「五月雨を集めて早し最上川」で有名。山峡を流れる 最上川の傾斜状況は、庄内平野側の清川〜新城盆地側の津谷間の距離20Kmに対し、 標高差は約80mであり、勾配は、およそ 4/1000 で、ややきつい傾斜である。)
--------------------------------------------------------- 前提: 列車は、横方向から風速Vによる動圧を受ける。 動圧=(1/2)ρVxV (単位はN/m2となる)の計算式を使う。 仮定: 列車の台車を除いた客車部分の形状は、幅、高さ、長さが =2mx2mx20m とする。 風は、客車の中心部分(重心と考える)にかかるとする。 列車が風の動圧を受ける面積=高さX長さ=2mx20m、 列車の車輪の軸間距離=1.5mとする、 線路から重心にかかる横風の力の方向までの距離を2mとする。 客車の自重=40t。 力のつりあいを次のように考える: 線路と車輪が接する点において、 風による力のモーメントM1(線路の左方向へ押す力)と 客車の自重によるモーメントM2(復元力)の釣り合いを考える。 M1>M2 になったとき、客車は、転倒する。 ρ=1.25kg/m3 v=風速m/s2 M1=(1/2)ρVxV(縦、長さ)x(線路から動圧による力へいたる距離)   =(1/2)x1.25xVxVx(2x20)x2=50VxV M2=自重x重力の加速度x(軸間距離の半分)   =40,000x9.8x(1.5/2)=294,000 M1=M2 と等値して、このときの風速Vを算出すると、 V≒77 m/s と成ります。 ダウンバースト、マイクロバーストなら、これくらいの 瞬間風速は出ると考えられます。 (ちなみに、上空1万メートルでは、80m/sec の風速は当たり前に吹いています。) ★追記: 読者から、計算上の各種の仮定(条件)に関し、投稿頂きました。 下記条件を追加、変更等して計算してみます: 1.風速に対して、風力係数を1.2と追加の仮定をする、 2.線路幅を、狭軌道、約1.1mへと修正する、 3.列車に作用する揚力を列車重量の5%と追加見積りする。 M1=風力係数x(1/2)ρVxV(縦、長さ)x(線路から動圧による力へいたる距離)  =1.2x(1/2)x1.25xVxVx(2x20)x2=1.2x50VxV=60VxV M2=自重(1-揚力による減少率)x重力の加速度x(軸間距離の半分)  =40,000(1-0.05)x9.8x(1.1/2)=204,820 M1=M2 より、V=58.4 m/sec となります。 風力係数を2.0とした場合は、V=45.3 m/s となります。 (風力係数 2.0 は、客車が十分長いと仮定した場合に適用される。)
AZURE 青空