#02 001-00-003 [質問名:偏微分方程式、非線形方程式、数値的な解の意味]
質問 序章p.3 4〜7行目
「大気中の運動は、連立偏微分方程式で十分精度良く記述できる。ところが、
その方程式は数学で言う非線形方程式なので、解析的解を求めるのは困難である。
しかし計算機で数値的な解を求める事が出来る」
連立偏微分方程式、非線形方程式、数値的な解
-------- ----------- ------------ ------------------ 解答
いずれも数学上の用語です。下記カッコ内に対応・対立する世界の用語を記載しました。
どこから説明を開始すればよいかは、何が分からないのかによりますので、質問書のおもて
だけからは判断できかねますが、、、、
偏微分方程式(vs 常微分方程式)
・物体・流体の状態を表現するために、未知数(uvptρなど)が
独立変数(xyzt)の関数として、微分方程式であらわされるとき、
ある特定方向の傾度(微分のこと)をあらわそうとする式です。
・気象の予想を行うためには、大気の状態を数式モデル化しますが、その数式は、
大気塊の運動の状態や、質量の保存、水蒸気の保存など偏微分方程式で表現されます。
非線形方程式(vs 線形方程式)
・この質問のポイントは線形・非線形の用語にあると考えられます。
・線形とは「加法」の概念が適用できる状態を言います。
非線形とは、線形でないものを言います。−−−>乗法の世界と言ってもよいでしょう。
・時間外挿して数時間先の気象予想をするのは、線形の性質を利用したものです。
速度に状態量の場の傾きを乗じたもの(移流といいます)は、非線形です。
(なお、乗法を加法の世界へ橋渡しするのが、指数・対数です)
数値的な解 (vs 解析解)
・方程式の解は、例えば、中高校で習った二次方程式の根のようなものが解析解です。
・微分方程式の解は、通常は数値解を求めることが出来ないため、近似的に求めます。
・気象のプリミテイブ方程式系は(偏)微分方程式であるため、解析解がなく、従って
差分法を使っての近似計算が用いられています。
・この近似のゆえに、即ち解析解ではない(厳密解と言えない)ので、
時間経過とともに誤差が増大し、予報精度の問題が生じる一因となっています。
参考:プリミティブ方程式:
1.大気の運動方程式(水平方向)(X方向、Y方向)
流体力学のNavie−Stokesの方程式のまま。
δu/δt=−(uδu/δx+vδu/δy+wδu/δz)
+2Ωsinφv−δp/ρδx+F
δv/δt=−(uδv/δx+vδv/δy+wδv/δz)
+2Ωsinφu−δp/ρδy+F
大気の運動方程式(鉛直方向)(静力学平衡)
0=ーδp/ρδρ−g
2.連続の式(質量保存則)
δρ/δt=−(uδρ/δx+vδρ/δy+wδρ/δz)
−ρ(δu/δx+δu/δy+δv/δz)
3.熱力学方程式
δθ/δt=−(uδθ/δx+vδθ/δy+wδθ/δz)+H
4.水蒸気の輸送方程式
δq/δt=−(uδq/δx+vδq/δy+wδq/δz)+M
5.気体の状態方程式
P=ρRT
3/22 (追加) 「線形と非線形」と言う用語:
・y=x という方程式(1)は「線形」です。
xがx1、X2の時、Yは Y1=x1、Y2=X2 となる(2)。
次に、xとして、加算した X1+X2 の値を もとの Y=X の式へ 代入したときの
Yの値が、X1+X2 となれば、もとのY=Xの式(1)は「線形である」と言います。
・d2Y/dX2=−Y の式(3)は「線形」の微分方程式です。
この式の解は、2つあり、 Y1=sinxとY2=cosxです。
この二つの解を加えた sinx+cosx も、もとの式の解となっています。このように
解を重ね合わせてももとの式の解になる様な微分方程式を、「線形」の微分方程式と言います。
・加算しても以上のようにならないとき、その式は「非線形」であるといいます。
グラフで描くと「曲線」になるような式をイメージすれば、それga[非線形]と考えて
良いでしょう。
・要するに、ものごとを、直線で表し得ない場合「非線形」と言う様です。
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