一般気象学輪読会 (#02 : 1999.02.27)
#02 001-00-003 [質問名:偏微分方程式、非線形方程式、数値的な解の意味] #02 002-02-019 [質問名:成層圏、中間圏の温度の傾斜角度について] #02 003-02-020 [質問名:高度80km以上での空気組成成分の分離がおこる理由] #02 004-02-024 [質問名:オゾンが地表面付近で消滅する理由] #02 005-02-019 [質問名:標準大気の温度減率=6.5度は、何故か] #02 006-02-019 [質問名:大気の鉛直構造で、11kmを過ぎて、温度一定になる理由] #02 007-02-022 [質問名:光解離と光電離の違い] #02 008-01-011 [質問名:表の中の数字の表記において、小数点以下2桁と3桁の違いは何故か]
 #02 001-00-003  [質問名:偏微分方程式、非線形方程式、数値的な解の意味]
 
質問    序章p.3 4〜7行目    「大気中の運動は、連立偏微分方程式で十分精度良く記述できる。ところが、 その方程式は数学で言う非線形方程式なので、解析的解を求めるのは困難である。 しかし計算機で数値的な解を求める事が出来る」     連立偏微分方程式、非線形方程式、数値的な解 -------- ----------- ------------ ------------------ 解答 いずれも数学上の用語です。下記カッコ内に対応・対立する世界の用語を記載しました。 どこから説明を開始すればよいかは、何が分からないのかによりますので、質問書のおもて だけからは判断できかねますが、、、、 偏微分方程式(vs 常微分方程式)       ・物体・流体の状態を表現するために、未知数(uvptρなど)が        独立変数(xyzt)の関数として、微分方程式であらわされるとき、        ある特定方向の傾度(微分のこと)をあらわそうとする式です。       ・気象の予想を行うためには、大気の状態を数式モデル化しますが、その数式は、        大気塊の運動の状態や、質量の保存、水蒸気の保存など偏微分方程式で表現されます。 非線形方程式(vs 線形方程式)       ・この質問のポイントは線形・非線形の用語にあると考えられます。       ・線形とは「加法」の概念が適用できる状態を言います。         非線形とは、線形でないものを言います。−−−>乗法の世界と言ってもよいでしょう。       ・時間外挿して数時間先の気象予想をするのは、線形の性質を利用したものです。        速度に状態量の場の傾きを乗じたもの(移流といいます)は、非線形です。        (なお、乗法を加法の世界へ橋渡しするのが、指数・対数です) 数値的な解 (vs 解析解)       ・方程式の解は、例えば、中高校で習った二次方程式の根のようなものが解析解です。       ・微分方程式の解は、通常は数値解を求めることが出来ないため、近似的に求めます。       ・気象のプリミテイブ方程式系は(偏)微分方程式であるため、解析解がなく、従って        差分法を使っての近似計算が用いられています。       ・この近似のゆえに、即ち解析解ではない(厳密解と言えない)ので、        時間経過とともに誤差が増大し、予報精度の問題が生じる一因となっています。 参考:プリミティブ方程式:      1.大気の運動方程式(水平方向)(X方向、Y方向)         流体力学のNavie−Stokesの方程式のまま。          δu/δt=−(uδu/δx+vδu/δy+wδu/δz)                 +2Ωsinφv−δp/ρδx+F           δv/δt=−(uδv/δx+vδv/δy+wδv/δz)                 +2Ωsinφu−δp/ρδy+F        大気の運動方程式(鉛直方向)(静力学平衡)          0=ーδp/ρδρ−g       2.連続の式(質量保存則)          δρ/δt=−(uδρ/δx+vδρ/δy+wδρ/δz)                −ρ(δu/δx+δu/δy+δv/δz)      3.熱力学方程式          δθ/δt=−(uδθ/δx+vδθ/δy+wδθ/δz)+H      4.水蒸気の輸送方程式          δq/δt=−(uδq/δx+vδq/δy+wδq/δz)+M      5.気体の状態方程式          P=ρRT 3/22 (追加) 「線形と非線形」と言う用語: ・y=x という方程式(1)は「線形」です。 xがx1、X2の時、Yは Y1=x1、Y2=X2 となる(2)。 次に、xとして、加算した X1+X2 の値を もとの Y=X の式へ 代入したときの   Yの値が、X1+X2 となれば、もとのY=Xの式(1)は「線形である」と言います。 ・d2Y/dX2=−Y の式(3)は「線形」の微分方程式です。   この式の解は、2つあり、 Y1=sinxとY2=cosxです。   この二つの解を加えた sinx+cosx も、もとの式の解となっています。このように   解を重ね合わせてももとの式の解になる様な微分方程式を、「線形」の微分方程式と言います。 ・加算しても以上のようにならないとき、その式は「非線形」であるといいます。 グラフで描くと「曲線」になるような式をイメージすれば、それga[非線形]と考えて   良いでしょう。 ・要するに、ものごとを、直線で表し得ない場合「非線形」と言う様です。 
 #02 002-02-019  [質問名:成層圏、中間圏の温度の傾斜角度について]
 
質問 p.19図2.1    成層圏や中間圏の温度変化が対流圏のようにほぼ高度と比例せずに、    途中で傾斜角度が一度変化する理由は? -------- ----------- ------------ ------------------ 解答 ・正直なところ、分かりません:以下の様に考えます。 ・図の米国標準大気は(航空機の設計・性能比較等)異なった作業環境下の結果を同じ尺度で  議論・検討するため、曲線では扱いにくいため、観測事実に極力合うように、  人為的に定めのではないか、と想像します。 ・この図を見る場合、「標準大気」とは何かを知っておく必要があります。 ・なお、理科年表(1995年版)p.382に同様の図が掲載されていますが、線の勾配が微妙に  異なっています。 ・国際民間航空機関(ICAO)が採用した「ICAO標準大気」なる大気も同書に  掲載されています。 高度32kmまでは同一にしてあるそうです。
 #02 003-02-020  [質問名:高度80km以上での空気組成成分の分離がおこる理由]
 
質問      p20−26      高度80km以上で重力による空気の成分分離のおこる理由は? 熱圏では空気の運動(気体分子の攪拌)がないため? しかしp.33 ? 各気体分子の運動は活発のようだが。 -------- ----------- ------------ ------------------ 解答 ・もともと気層は、重力による分離がおこなわれるべきのようです。(p.20上から10行目)  (拡散分離作用 diffusive separation) ・しかし、80km以下では攪拌のため、一様になっているようです。 ・すなわち、重力による分離があってしかるべきと考えられます。 ・なお、ご質問における各気体分子の運動が[下層での]攪拌の主たる要因とも思えませんが、、、
 #02 004-02-024  [質問名:オゾンが地表面付近で消滅する理由]
 
質問       p.24−25 オゾン層について、オゾンが地面付近で消滅する理由 -------- ----------- ------------ ------------------ 解答  p24上6行目あたりの記述の類推ですが、 ・地面付近まで降りてきた紫外線によりO3が光解離を起こし、  O2とOに分解・消滅したたと考えられます。 ・さらには、NOxも消滅に寄与していると考えられています。 参考:  [成層圏オゾン」島崎達夫著、p.125−133、同書p.125の図   ・大気大循環で、「ブルーワー・ドブソン循環」と言う流れがあり、 高度50kmに達します。   ・この流れが、成層圏において、オゾンを輸送します。 参考図:
 #02 005-02-019  [質問名:標準大気の温度減率=6.5度は、何故か]
 
質問 p.19乾燥断熱減率10C/kmと、標準大気の温度減率6.5C/km の違いはどこからでているのか。 -------- ----------- ------------ ------------------ 解答 ・図の米国標準大気は(各種研究、航空機の設計・性能比較等)異なった作業環境下の結果を  同じ尺度で議論・検討するため、観測事実に極力合うように、人為的に定めのではないか、  と想像します。
#02 006-02-019  [質問名:大気の鉛直構造で、11kmを過ぎて、温度一定になる理由]

質問    P.19の図?? 大気鉛直構造で対流圏の11kmを過ぎて、温度一定になる理由は? -------- ----------- ------------ ------------------ 解答 ・観測事実から人為的にそのように設定したためと考えられます。 ・「温度一定になる」のではなく、「温度がほぼ一定になるように設定してある」と言ったほうが   良いようです。 ・高層観測事実(データ)として、「一定にはなっていない」事は、明白です。 ・一定になってないと言う事実を承知の上で、そのようにしてあるのは、それなりのワケがあると  考えられます。
#02 007-02-022  [質問名:光解離と光電離の違い]

質問 p.22光解離とp.30光電離の違いは? -------- ----------- ------------ ------------------ 解答   ・光電離 : 紫外線によりイオン化する。−−−−>電離層の形成となる。   ・光解離 : 原子に分解すること。−−−>オゾン層の形成となる。
#02 008-01-011  [質問名:表の中の数字の表記において、小数点以下2桁と3桁の違いは何故か]

質問 p.11表の中の数字の表記において、    存在比率の容積比のところで、窒素や酸素は小数点以下3桁あるが、    アルゴンは小数点以下2桁で記載されている。この小数点以下2桁と3桁の違いは何故か。 -------- ----------- ------------ ------------------ 解答     アルゴンの3桁数以下は「不確定」なためです。