一般気象学輪読会 (#03 : 1999.03.13)
#03 001-02-024 [質問名:春のオゾン密度が大きい理由。オゾンホールの極大はいつ。] #03 002-02-028 [質問名:電離層の夜間の図はどうなるか] #03 003-02-036 [質問名:脱出速度はいかなる高度で実現されるか] #03 004-03-041 [質問名:平均分子量の(容積比を用いての)求め方] #03 005-03-044 [質問名:海面更正に用いるべき気圧として、平均値を用いるべきではないか] #03 006-03-xxx [質問名:対流圏界面高度の定義] #03 007-03-039 [質問名:「一般的な気体定数」の意義は何か] #03 008-03-070 [質問名:対流不安定等の「不安定」が分かりません] #03 009-03-042 [質問名:式「ΔP=−ρgΔZ」なる式を導くときの、考え方が分かりません] #03 010-03-0xx [質問名:温位θ、相当温度位等をよりよく理解したい] #03 011-03-065 [質問名:温度減率の問題3.10で、解答に至る道筋が見えません] #03 012-03-050 [質問名:熱力学の式の導出過程がわかりません] #03 013-03-056 [質問名:”気化””蒸発””沸騰”の意味の違いは?] #03 014-04-088 [質問名:落下の終末速度(V)の計算] #03 015-03-060 [質問名:混合比に関する計算問題の解き方] #03 016-03-068 [質問名:相当温位は飽和・不飽和のいずれの場合でも保存されるか] #03 017-03-0xx [質問名:対流圏内で、上空ほど気温が低くなる理由]
 #03 001-02-024  [質問名:春のオゾン密度が大きい理由。オゾンホールの極大はいつ。]

質問   P24下から4〜3行  高緯度では夏よりも春の方がオゾン密度が大きい...   Q)何故なのですか。この疑問と関連してですが、極地におけるオゾンホールには     季節変動があるのでしょうが、極大になるのは何時ですか。 -------- ----------- ------------ ------------------ 解答 ・ブリューワー・ドブソン循環+高緯度の高低気圧の存在が関係しているようです。 ・そのほか、大気中の微量成分エアロゾルの影響のある様ですが、ハッキリしたことは未知の様です。 ・オゾンホールには季節変動があり、特に南極において、冬から春に掛けて極大となる様です。 ・これは、冬場、成層圏に浮遊している塩素clの窒素n化合物の窒素酸化物が氷の中に入り込み  塩素が氷の表面に付着し、日光が出てくる春先に塩素ガスが、紫外線により塩素原子に解離し、  これが、オゾンと反応し、オゾン・ホールができるらしいです。 ・北極においても、オゾンホールは発生しています。  しかし、極渦のため気層が不安定で、低温にならないので、北極では、顕著なオゾンホールの  生成は無いようです。
 #03 002-02-028  [質問名:電離層の夜間の図はどうなるか]
 
質問 P28 図2.7   Q)夜にはこの図はどう変化するのでしょうか。特にD層はどのように描けばよ     いのですか。 -------- ----------- ------------ ------------------ 解答 ・電離には太陽光線が必要なようです。 ・このためか、夜間にはD層は無くなり、電子数密度は減る様な図になるようです。 ・また、F1層も夏場の昼間に発現する様です。 ・平凡社の気象の辞典p.385[電離圏]に詳しい説明があります。  同書には、各層で電離している気体の種類のについても書いてあります。 [回答者:深田浩平:3/13] 参考図:
 #03 003-02-036  [質問名:脱出速度はいかなる高度で実現されるか]
 
質問 P36   Q)人工衛星や惑星間飛翔体を打ち上げるとき,どの高度でロケットは脱出速度     に達しているのですか。 -------- ----------- ------------ ------------------ 解答 ・脱出速度の算出プロセスがわかれば、自然氷解のご質問と思われます。 ・理論的には、任意の高度で脱出速度を得る事が出来ます。 ・実際上は大気による摩擦熱発生をいかにクリアーするかの問題があり、それなりの高度から  地球重力圏外への脱出となるようです。 ・但し、人工衛星は地球を周回する必要があるため、地球脱出速度を与えると「行ったっきり」に  なりますので、要注意です。 ・惑星間飛翔体の打ち上げは、太陽の重力圏外への脱出ではありませんが、地球重力圏外への  脱出速度をどこかで与えてやる必要があります。 参考: ・地球からの脱出速度に達しない場合、地上に落下するか、地球を周回するようになります。 ・一般的に言うと、分子でもロケットでも、あるいは惑星間を飛ぶ飛行体でも何でも、  脱出速度は天体固有の重力とその天体の中心からの高度により決まります。  各天体の表面からの脱出速度は g、Rをその天体の重力、半径とするとき: V=root(2gR)となります。[質量には関係しません] ・大気分子が地球脱出速度をもっていれば、地球の重力圏外へ脱出出来ます(*)。  衝突等で得た速度が脱出速度以下の場合は、地球重力圏内(*)にとりこまれたままとなります。  (*:正確な用語法でない) ・気体分子運動論:この脱出速度が天体により異なりますので、天体の表面にある気体は、  その天体を脱出してしまったり、あるいは閉じこめられてしまったりしています。 ・木星型惑星に軽い元素H2、Heなどが多く、また月、地球、火星などにH2、Heが少ないのは、  各天体の表面上の気体分子の獲得する速度と各天体固有の脱出速度の大小関係によるものです。
 #03 004-03-041  [質問名:平均分子量の(容積比を用いての)求め方]
 
質問    P41 問題3.1   Q)・答えから類推すると,平均分子量を求める式はΣMv(%)(M:個々の分子量,v:個々      の容量%)でも良いのですか。     ・またR-asterisk(一般的な気体定数)の定義と答えとの関連から,      kmol-1=kg-1 と考えてよろしいのですか。  -------- ----------- ------------ ------------------ 解答   ・p.40に平均分子量の(定義)式(3.9式)がありますが、この式は、混合気体の    重量miとその分子量Miに着目している式です。   ・答えから類推せずに、「正攻法」で論理展開をお願いいたします。    定義式を前提として、「容積比を用いて書き直してみる」ことを考えてみよう、    と言う思考方法をおすすめします。   ・書き直すための、ポイントは、「モル」の概念をシッカリ理解・応用できることです。   ・もうひとつのポイントは、p.11の表1.4において、存在比率のうち    「容積比」の意味です。このような表を見るとき、「容積比」という意味を余り意識せずに、    「眺めるだけで」、それで済んでしまいがちです。じつは、「容積」以外の「圧力」と    「温度」について、何も言及されていませんが、圧力・温度は各成分気体において    「同一」であるということが前提となっています。   ・さて、N2、O2、Arの各重量(mi)を、mn、mo、ma−−−>A項目    及び分子量をMn、Mo、Maとおくと、    N2、O2、Arのモル数は:mn/Mn、mo/Mo、ma/Ma と表されます。   ・また、同温・同圧での「容積比はモル比」になりますので、      [注:同じモル数の気体があるとき、「同温・同圧で同じ体積をしめる」と言うことは、        同じ条件でモル数が半分になれば、体積も半分になると言うことです!!]    N2、O2、Arのモル比(mi/Mi)は: mn/Mn:mo/Mo:ma/Ma=78:21:1 です。    この比例式を思いつくことが大事です。この比例式から、N2、O2をArで表します:     mn/Mn=78ma/Ma、 mo/Mo=21Ma/Ma となります。 −−−>B項目   ・平均分子量の定義式(3.9式): Mmean=Σmi/Σ(mi/Mi)にA項目、B項目を代入します。   ・Mmean=(mn+mo+ma)/(78ma/Ma+21ma/Ma+1ma/Ma) =(mn+mo+ma)/(100ma/Ma) =(Mnx78ma/Ma+Mox21ma/Ma+ma)/(100ma/Ma) =0.78Mn+0.21Mo+0.01Ma −−−−−−−−−−−−−>C式   ・以上で各成分気体の分子量と容積比でもって平均分子量を表すことができました。    ・p.21で、p.11の表1.4を使って、空気の平均分子量を求めていますが、    このとき、組成の重量比でなく、容積比で重み付けしています。 即ち、C式に他なりません。   ・なお、一般的な気体定数(Universal gas constant)と各気体の気体定数とは、別物です。 単位も違います。 R*=MR の関係式が、P40で定義されています。      
#03 005-03-044  [質問名:海面更正に用いるべき気圧として、平均気圧を用いるべきではないか]

質問   P44の計算式。   ・気圧として用いるべき数値は、平均値にすべきでなないか。   ・いや、上層の気圧のままでよいのだ。   甲論乙駁で決着がつかない。 どう考えればよいでしょうか。  -------- ----------- ------------ ------------------ 解答 ・解答の中の式は、厳密な式ですが、そこへ数値を代入するとき、もともと記号で書かれていた  物理量が、いかなるものであったかを想起する必要があります。 ・そして、この式を実務上使う場合いかなる目的のための物かについても、注意を払ってください。 ・結論から言いますと、甲論乙論いずれもOKです。 ・OKと言う理由は、今厳密解を求めるのでなく、近似解を求めているのだ、と言う事に気付けば、  あとは、ご自分がどういう目的のために、いかなる近似で満足するか、と言う問題になります。 ・小倉先生は、この観点から、3種類の方法を示されたものと考えられます。 ・なお、気圧に平均値を使おうとすると、計算が複雑になり、  近似の観点から少し遠のく方法となります。 ・近似解を求める方法は、この他にもいろいろあります。ご研究下さい。 ・「式は、暗記する物ではなく」、式中の記号(物理量、変数)の意味と相互関係  (気象モデル)をしっかり「理解」するようにして下さい。 佐藤の感想: ・「問題の答えから、計算過程を類推する、と言う方法」は、余分な議論を生む危険性があります。 ・本来「こういう論理であるからこうすべきだ」、と言うご自分の理解している論理を適用する  ようにして下さい。 (もっとも、今回の質問の議論は建設的なもので結構でしたが、、) ・気象には、アバウトな所が結構沢山ありますが、論理はそれなりにあるのです。 ・この計算問題は気象の達人があらゆることを見通して、作ったものと考えられます。  話の展開の仕方を注意深く追っていきますと、そのようになっていることが読みとれます。 ・即ち、一般的・基本的な考え方の説明が、計算問題の前の頁P.xx〜Pxxにおいてなされ、  その考え方を実際の計算問題で確認すると言う2つのステップを踏み、  計算問題解答では、近似式と厳密な式の場合の2つの順に記述されています。 ・近似式についても、2つの考えるステップが記述されています。 ・即ち、計算式に直接代入している方法と、  (100m単位に)区切って,「もう少し精密な」値の求め方を示しています。 ・ただし、初学者が以上の様に読み切るには、少々努力を必要とするかもしれません。
#03 006-03-xxx  [質問名:対流圏界面高度の定義]

質問   対流圏界面の高度の定義を教えて下さい。    -------- ----------- ------------ ------------------ 解答 ・気温減率が、2度/kmになった、最低高度です。 (但しその上空2kmの平均値が2度/kmを越えないこと。) ・WMOで圏界面の定義がなされています。
#03 007-03-039  [質問名:「一般的な気体定数」の意義は何か]

質問   P39下2行目:一般的な気体定数と   P41上5行目:乾燥空気に対する気体定数の関係は。   気体定数が一般の各種気体に応用されるものと、   乾燥空気固有の定数と言うことか?   -------- ----------- ------------ ------------------ 解答 ・一般的な気体定数(R*と表記されている)とは、気体の種類に関わらない普遍的なものです。 ・「気体の種類に関わらない」と言う意味のよって来る所以は、[気体は同じ1モル(同じ粒子数)  であっても、種類が異なると、分子量が異なる。したがって、重量が異なる]ので、  この異なることを包含して(包み込んで)しまう概念として、「一般的な気体定数」なるものが  考案されたと思います。 ・逆に言うと、「N2でもO2でも、或る特定の種類の気体」を議論するときは、それぞれの気体の  「個性に応じた定数」が個別に定義される必然性が生じてきます。 (R*=m/M の関係式は一般的な気体定数と個々の気体の重量を結びつける普遍的な関係式です) ・なお、混合気体になった場合は、話がもう少し複雑になってきます。  −−>大気の平均分子量算出の議論を参照して下さい。
#03 008-03-070  [質問名:対流不安定等の「不安定」が分かりません]

質問   P70下2行目:対流不安定   P72下6行目:条件付き不安定   これらのθeとの関係。   又エマグラム上でどのような状態か? 又、CISK(第2種条件付き不安定)についても分かりません。       -------- ----------- ------------ ------------------ 解答 ・気象の世界には、多くの不安定性があります。 ・学問的・専門的な、主として力学的不安定性は、ここでは話の対象外とします。  ご質問の各種の不安定性は、いずれも、大気塊の「浮力」の問題に帰着します。 ・浮力如何で、大気は上昇発達、あるいは沈降衰弱などのストーリーとなります。 ・問題とする大気塊(層)の不安定性は、「浮力」即ち、「密度」の問題になります。 ・密度は、温度、圧力によってきまります。(P=ρRTです) ・このPTを議論できる道具がエマグラムです。 ・台風やポーラーローの話の時に、CISKがでてきますが、  たとえば、台風において、何故積雲対流が大規模に「組織化」されるのか、佐藤には分かりません。 ・個々の積雲対流の安定性は、上記の「浮力」の話で説明されると思います。 追記: 「浮力」を得て上昇すると大気塊中の水蒸気が凝結し、そのとき凝結と言う相変化のために、 潜熱が放出されます。この潜熱が水蒸気の周りの大気(問題とする大気塊)を暖め、暖められた 大気塊は膨張し、大気塊の密度は低下し、さらなる浮力を得る、と言うストーリーになります。
#03 009-03-042  [質問名:「ΔP=−ρgΔZ」なる式を導くときの、考え方が分かりません]

質問 ・P42図3.1で、直方体に下向きに働く力が ”P+ΔP”↓で表されていますが、  L3のこの表現も上空ほど気圧が低いと言うことなのか? −−>ΔP:高さZの水平面に働いている圧力と高さZ+ΔZの水平面に働いている圧力との差 ・なぜ、鉛直上向き方向の力”P”にΔP(負の値)を加えた式になるのか分かりません。 (値が小さくなるのは納得!!) (水平面の圧力差がそのまま鉛直方向の圧力の値になる意味がよく理解できていません) それ故、その下の式「ΔP=−ρgΔZ」につながっていきません。   -------- ----------- ------------ ------------------ 解答 ・”P+ΔP”と言う表現の仕方は、”T+ΔT”等のようによくある表記方法です。  この表記方法のうち +ΔPや+ΔT は、それぞれの座標軸において、あるTやPを基点として、  そこからの数値の増加方向に対する「変化量」を意味しています。  (P.65L7を参照)   (座標軸の原点から離れる方向が通常数値の増加方向とされます。   しかし、気圧座標系の場合は、原点から離れる方向を数値の減少する方向と定義されています)  (今議論しているP+ΔPは、まだ、気圧座標系を用いるとは、言っていませんので念のため、、) ・Δは変化を意味していますが、その変化は+なのか−なのかは、未知なのです。  (高いとか低いとか、を意味しているものではありません) 現象や状態をモデル化(即ち、数式化)し、その数式の数値解を求めて、初めて、そこで、  +となるか−となるか、が分かるのです。 ・今、仮にΔPだけ増加したものとして、(+−は不明なままにしておいて)、  大気の鉛直方向に着目して力の釣合を考えます。 ・図中、気層の下方からの力は単位面積当たりP↑となります。気層の下面でP↑の受け持つべき (即ち、支えるべき力↓は、2つあります。 気層の重量分↓ ρgΔZ に加えること   気層の上面に押しかかっている更に上層の気層の力 (P+ΔP)↓です。   ・このことが、「大気の鉛直方向の釣合のモデル」なのです。 ・そのモデルを数式表現します−−−> P=(ρgΔZ)+(P+ΔP) が得られます。 ・そして、この方程式から、ΔP=−ρgΔZ が得られます。   追記:ΔP(+ΔPと同じ意)とせず−ΔPとしてもよいのですが、    そうすると、「気圧座標系」を用いることを宣言したことになります。    「上空へ行くほど、気圧が低くなる」と言うことが「分かっている場合」は、    それでもよいのですが、科学一般において、そう言う事は未知である場合がおおいので、    一般的な座標の増分の考え方を使います。(学校の数学の時間に習ったでしょうか??)    いずれにしても、それなりの論理展開になるのです。 以上、ご検討下さい。
#03 010-03-0xx  [質問名:温位θ(乾燥空気)、相当温度位θe]

質問   温位θ(乾燥空気)、相当温度位θe(混合空気or湿潤空気)について、どういう場面で用いら   れるのか。また、それに伴って、混合比、水蒸気(分圧)のかかわりについて、理解を深めたい。    -------- ----------- ------------ ------------------ 解答 ・温位θと相当温度位θeは、いずれも温位であることを理解してください。 ・相当温度位は、ある特別な状態になったときの温位に過ぎません。恐れるには及びません。 ・ご質問が広範囲にわたるため、ここでは解答を準備する時間的余裕がありません。  それだけで、1冊の本になってしまうからです。 ・一つ言えることは、エマグラムの使い方を自由自在にすることです。 ・エマグラムの利用の仕方、その図に描かれる大気の状態を子細に検討する過程で  「理解したつもり」のアバウトな状態が「相互関連付けられたかたち」として、ご自分のものと  なるでしょう。 ・エマグラムを自分で描き、読む必要があります。 ・エマグラムを使いこなす事は、別途「一般気象学輪読会」の中で実施出来れば、と思っています。
#03 011-03-065  [質問名:温度減率の問題3.10で、解答に至る道筋が見えません]

質問   P65の、   問題3.10が簡単に書かれていて分かりにくいので、解答がでるまでの道筋を教えて下さい。   (なぜ、答えのところで8Cの飽和水蒸気esを出してきて、従って・・・と続くのか。)    -------- ----------- ------------ ------------------ 解答 ・水分を含む大気の温度減率は、水蒸気が飽和している場合と飽和していない場合とによって、  値が異なります。  飽和していない場合の温度減率は、水蒸気を含まない大気の温度減率に近い値となります。  実用上は、同じとされています。 ・まず、P.59−65の本文において、「混合比」をよく理解することが大事です。  (3.52)式は、重要そうですが、見た途端投げ出したくなりますね。 ・投げだしてしまうと、この問題には答えられません。  根気よく、一つずつ、値を求め、確定し、3.52式へ代入してください。 ・値を求めるため、数表や数式のお世話になります。 記号・変数を列挙・整理すしてみます: Γd : L :凝結熱。 Ws :s状態の混合比。スモールsは飽和satulatedの意味 Rd : T : ε : Cp : p : Δes:s状態の水蒸気圧。スモールsは飽和satulatedの意味 ΔT : の値を確定して下さい。 ・この問題は値を求め、「なるほどその程度の減率になるのか」と言った認識をもつことと、  これまでの知識の復習・確認を行うことを目的としていると考えられます。 ・ので、下記の解答例を最初は見ないで下さい−−−>ご自分で Try & Challenge して下さい。 ・そうしないと、力はつきません。その場限りの暗記ものになってしまいます。 ・さて、各記号の物理的意味を再確認して下さい。そして、次の様になるでしょう。 方針・手順:   0.先ず、メインアイデアは「湿潤断熱減率」であること、及び考える系の状態を確認する。     ・気圧700mb、       ・気温10C、     ・空気中の水蒸気は飽和している。   1.記号・変数を列挙・整理する。(上記の様に)   2.既知の定数は何かを発見する。      Γd=10C/km(既知の定数、常識)      Rd=287mの2乗・sの2乗/K(既知の定数、P.41)      ε=0.622(P.60の3.43式:              この記号の説明が本文中にあれば分かり易いですが)   3.問題文中に与えられた数値はありがたく使う。      L=2.5x10の6乗J/kg(Given)      Cp=1004J/K・kg(Given)   4.上記以外に未知数が5つ残りました。個別に数表、計算、題意により求めます。     題意より、気圧、気温及び飽和混合比は分かりそうです(求まりそうです)。        T=273+10 K        p=700x100 hPascal        Ws=0.622x12.28/700=0.0109kg/mの3乗 =混合比としては10.9となる デルタΔのついたΔesとΔTの取り扱い方、対応のし方、考え方が難しいです。 式3.52をよく見ると、ΔesとΔTは Δes/ΔTなる形になっていて、 ΔesがΔTにたいする増分、を表していることに気づきます。 ΔesおよびΔTは個別に数値を求めることはできませんが、「傾き」を求めることが出来ます。 その方法は、p.58の表3.4の気温10Cを中心として、前後2Cの飽和水蒸気圧を読みとって 温度差4Cで除算すれば、近似的に勾配Δes/ΔTが求まります。 即ち、(14.03−10.73)/4=0.825 となります。 小倉先生の解答は、この勾配を求める作業を、上記のように10Cの前後(8C〜12C)でなく、 8C〜10Cのあいだの平均値(12.28−10.73)/2=0.775としたもの と考えられます。いずれも近似計算です。勾配を求めることに気付けば、 (その考え方が理解できれば)、いずれもOKと思います。 以上で、3.52式へ代入すべき数値は全て確定しました。 あとは、電卓での力仕事です。 佐藤の意見: ・丹念ではあるが、一見「ムダ」と思える様な作業が、最後には貴重な積み重ねとして残ります。 ・気象学は眺めて済む学問でなく、実践の学問です。当問題は、実践する事に意義があるのです。 ・この問題に、皆さんがいかに対応されたかによって、気象に対する取り組みかたの相異が、ご自分  で判定できます。(本気で気象を学ぶのか、それとも本気ではないが、試験レベルで十分だ、と。  −−−>皆さんご自身の方針・目標があるでしょうから、どちらが良いとは言えません。) ・「一般気象学」から何を学び取るかは、重要な自問自答です。是非とも、単なる技術的知識の獲得  におわることなく、方法論や論旨の展開にも目を向けて、精読して下さい。 ・話は少し外れるかも知れませんが、「一般気象学」の「一般」と言う意味はP.39の  「一般的な気体定数」の「一般」と同じ意味であると思います。即ち学問にたいする共通・  普遍的なアプローチの仕方を提供してくれています。 Universal approach to Meteorology !! ・「一般」と言う用語は必ずしも「入門とか平易さ」を意味しているものではないと存じます。
#03 012-03-050  [質問名:熱力学の式の導出過程がわかりません]

質問   P50L6式(3.25)から(3.26)への流れ(計算法)と   (3.27)が導かれた方法。またその式の意味。    -------- ----------- ------------ ------------------ 解答 ・このあたりの式の展開は、丹念に代入したり、省略したりして行きます。  自然に、3.26式が出てきます。 ・ΔQ=CvΔT+pΔα (3.24式)  この式へ、3.25式からえられる pΔα=pα(ΔT/T)−αΔp を代入します。 ・ΔQ=CvΔT+(pα(ΔT/T)−αΔp) <−−Cp=Cv+R 3.27式 を代入する。 =(Cp−R)ΔT+(pα(ΔT/T)−αΔp)<−−中身を分解し、カッコでくくる。 =(CpΔT−αΔp)+[−RΔT+pαΔT/T] =(同上)+[−RT+RT・ΔT/T]    <−−pα=RTの関係を代入する =(同上)+[ゼロとなる]    =(CpΔT−αΔp) 3.26式となる。 ・上記、で Cp=Cv+R の式が説明なくでてきました。  佐藤には、何故この式が成り立つのか、目下不明です。
#03 013-03-056  [質問名:”気化”、”蒸発”、”沸騰”の意味の違いは?]

質問   P56〜59   ”気化””蒸発””沸騰”の意味の違いは? 気象学的使い分けは?    -------- ----------- ------------ ------------------ 解答 ・水の相変化のP−T線図で理解すると良いでしょう。 ・いずれも、水と言う物質が、液体から気体に変わると言う「現象」の表現です。 ・気化=蒸発     水(液体)の圧力と水蒸気の圧力が、水面において圧力平衡になく、未飽和の場合に     蒸発現象が生じます。  沸騰=水が、外圧例えば、大気圧に等しくなるような温度をあたえられる(エネルギーを得る)と、     液体の内部から、気泡が発生する。これを沸騰現象と言う。 真空容器中に液体の水を入れると、「爆発的に」沸騰するであろう。     そして、容器内はすぐに「気化」はとまり、圧力平衡の状態に達するであろう。     (この実験は危険です。試みないようにして下さい。) 参考図:
#03 014-04-088  [質問名:落下の終末速度(V)の計算]

質問   P88〜89   落下の終末速度(V)の計算    物体が受ける抵抗力:mg=6πrηV   レイノルズ数が小さい場合(0.1以下)    m=(4/3)πρwr3 (ρw:水の密度) V=2ρwr2g/9η         平成9−2学科一般問い4で(4.9式)で半径10μmと5μmの水滴の落下速度の比の 問題が出た。(答えは4:1である)。 式による計算方法は? -------- ----------- ------------ ------------------ 解答 ・積雲発達の例−−>p.93〜94及びP.84〜90の情報を以下のようにまとめて見ました。 ・雲底高度付近の雲の中では、過飽和の水蒸気が水滴(雲粒:半径1〜20〜40μm)に  向かって拡散し、水滴の上に凝結します(拡散過程と言う)。 ・小さい水滴は上昇気流により吹き上げられる。 ・雲頂高度付近で、併合過程が活発に働いている。    ・水滴は、最初は急激に成長します。    ・水滴は、落下の途中で、大きい水滴が小さい水滴に追いつき、     衝突して併合し(併合過程と言う)、粒子のサイズが、加速度的に大きくなります。 ・0.5mm程度の、粒の大きい雨粒が、地上へ降ってくる(降り始め)。 ・落下は、地球重力により速度を増します。 ・速度を増すと、上式より抵抗力が大きくなり、ある程度以上の速度にはならない。 ・その限界の速度を、終末速度と言う。 ・落下速度(終末速度)は、 V=2ρwr2g/9η  であたえられます。 ・この式によれば、速度は半径の2乗に比例します。 ・試験問題においては、半径が10:5=2:1ですから、  速度比は 2の2乗:1の2乗=4:1 となります。   
#03 015-03-060  [質問名:混合比に関する計算問題の解き方]

質問   混合比w及び飽和空気の混合比wsに関する計算問題の解き方が分かりません。 p60問題3.8 p65問題3.10    -------- ----------- ------------ ------------------ 解答 ・p65問題3.10は既出の問題です。  [#03 011-03-065(本日第3回輪読会提出質問の11番目、第3章の65頁)]を参照して下さい。 ・p60問題3.8: ・方針−−>「混合比」の問題です。そこで、大気中の水の量を湿度から求めます。 題意の湿潤大気の水蒸気量を(質量で)求めて下さい。 ・湿度50%とは、飽和水蒸気量Wsにたいし、その1/2の水蒸気量が存在していることを  意味します。 ・飽和水蒸気量は、数表(P.56表3.4)から温度(20度)を与えて、17.31g/立方m と読みとります。 ・そのとき、同じ体積の大気の質量を求める必要があります。 ・混合比=水蒸気量/大気の重量 となることを思い出して下さい。 ・大気の1000mb、20度Cの重量は、P=ρRTより求められます。 ・ρ=P/RT=1000x100/(287x(273+20))=1.189 ・大気の質量は、1立方mx1.189=1.189kg ・ここまで来れば、あとは式へ代入するだけです。 ・混合比=(17.31x1/2)/1.189=7.28 グラム/kg
#03 016-03-068  [質問名:相当温位は飽和・不飽和のいずれの場合でも保存されるか]

質問  P68L4、5 「湿球温位は、相当温度位と同じく、飽和・不飽和のいずれの場合でも断熱変化している限り  保存される」とあるが、p66L2では、相当温位は飽和している場合に対して定義しており、  不飽和の場合も保存されるでしょうか。    -------- ----------- ------------ ------------------ 解答 ・相当温位は定義上、水分が0の状態です。 ・しかし、p.67L1では、不飽和のときは、3.53式に代入して相当温位を求めています。 ・「保存」の議論は、高度変化又は気圧変化の場合に、θやθeの値が変化するか否かの議論です。 ・ある温度、圧力、水蒸気量で計算される「相当温位」を持つ大気塊は、移動して、  別の温度、圧力になっても「相当温位」は変化しません。  ・変化しない場合、保存される、と言います。 ・そこで、逆にθe及びTが分かれば、水蒸気量wsが分かる筈だ、と言う見通しが付けられます。 ・このように式を見ることも大事です。式に使われる立場から、式を使う立場に変わりますので、、 ・ついでに、湿潤断熱線の延長上にある湿球温位とは、何者でしょうか。ご研究下さい
#03 017-03-0xx  [質問名:対流圏内で、上空ほど気温が低くなる理由]

質問 対流圏内で、上空ほど気温が低くなる理由はなにか。 -------- ----------- ------------ ------------------ 解答 ・「断熱」膨張により、気塊は自己のエネルギーを消費して外部仕事(膨張)する。 ・外圧に抗して膨張するためには、PΔVの仕事を必要としますので、  これに相当するエネルギーが必要です。従って温度低下(ΔT)が必要です。 ・多分、PΔV=nRΔTが成立するような温度の提供が必要でしょう。?? ・なお、地表面からの赤外線放射が、自分で低温化している大気を下からあたためます。 ・トータルして、対流圏における鉛直方向の気温分布を実現しているメカニズムを  「放射対流平衡」と言います。