一般気象学輪読会 (#08 : 1999.05.22)
#08 001-07-186 [質問名:傾圧性を維持出来る理由] #08 002-07-176 [質問名:図7.9「降雨量と蒸発量」の図の縦軸(Wm-2)の意味は何か。] #08 003-07-169 [質問名:ハドレーは誤って運動量の保存を考えていた、の本当の説明は?] #08 004-07-169 [質問名:北極方向からの風向きがどうして、北西流になるのか分かりません。] #08 005-07-167 [質問名:図7.2「熱の南北輸送量」の図の見方が分かりません] #08 006-07-177 [質問名:赤道低圧部、亜熱帯高圧帯、熱帯収束帯の一関係がよく分かりません] #08 007-07-183 [質問名:気圧の谷部分−低気圧性の渦、尾根部分−高気圧性の渦となる理由] #08 008-07-187 [質問名:「温度傾度の限度」を具体的に教えて下さい。] #08 009-07-173 [質問名:北半球の冬でフェレル循環の上部も偏西風となるのは何故か?] #08 010-07-189 [質問名:減少した位置エネルギーは何に使われたのか?] #08 011-07-169 [質問名:ハドレーは誤って運動量の保存を考えていた、その意味は何か] #08 012-06-153 [質問名:傾度風と地衡風の強弱関係] #08 013-06-153 [質問名:傾度風速の図の説明] #08 014-08-216 [質問名:フック型エコーが鍵型をしているとはどういうことか] #08 015-08-217 [質問名:角運動量保存の法則により、強い渦巻きが出来ることの説明] #08 016-07-190 [質問名:コリオリ力は地球の回転速度に比例する様に感じられますが、、] #08 017-07-150 [質問名:V=−(Δp/2ρsinφ・Δn)の式で、赤道ではφ=0になるが?] #08 018-07-156 [質問名:温度風の関係とは偏西風が吹くことの説明だけでしょうか?] #08 019-07-xxx [質問名:偏西風は南風がコリオリ力で右へ曲げられたものと考えてよいか?]
#08 001-07-186  [質問名:傾圧性を維持出来る理由]

質問   ・ P.186 L4     もし、地球が、回転していなかったら図7.19(a)や(b)のような状態は、     定常的に維持出来ず、流れが起こって図7.20に示したように等圧面と等密度面が     平行になり、順圧大気になる、とありますが、どうしてですか。  -------- ----------- ------------ ------------------ 解答 ・以下の説明のため、西から東向きに大気の状態を見ることとします。 ・西風はコリオリ力により南へ行こうとして、進行方向に右回りのトルクを生じます。  一方、温度傾度の原因である南側の大気には浮力が作用し、大気を左へ回すトルクを生じます。 ・この2つの逆方向のトルクの釣合によって、傾圧性が保持されます。 ・回転がなければ、コリオリ力は存在せず、従ってトルクの釣合もなく、時間経過後、  対流現象がおさまってしまうと、高度に応じた密度成層が形成されるでしょう。  即ち、順圧構造になってしまいます。 ついでながら: ・この傾圧性(等圧面と等密度面が交差している状態)は、  1.南ほど温度が高く、気柱も高いこと、  2.上空ほど風速大であること、 3.大気の上層と下層は温度風の関係で結ばれていること、 などとともに、みな一連の性質です。(順圧構造では、こういうことにはなりません)
#08 002-07-176  [質問名:図7.9「降雨量と蒸発量」の図の縦軸(Wm-2)の意味は何か。]

質問   ・ P.176 図7.9     の縦軸(Wm-2)の意味は何か。      -------- ----------- ------------ ------------------ 解答 ・Wm-2は、Atmosphere,Weather & Climate by R.G.Barry & R.J.Chorley を見ると、  境界層の熱収支を議論するとき、放射・潜熱・顕熱・地上の熱についての  Energy Flux Densityの単位として使われています。(熱フラックスと言う??) ・浅井等、「地表に近い大気」p.121等にも出てきます。 「降雨量と蒸発量」の説明図中に何故、このEnergy Flux Densityの単位を入れたのか??ですが、  蒸発の潜熱をみようとするためかも知れません。単位を換算するとほぼ合致します。 ・佐藤の計算では1mm/day=53W/m2/year となりました。  (この相異は潜熱の値の仮定如何によると考えられます)
#08 003-07-169  [質問名:ハドレーは誤って運動量の保存を考えていた、の本当の説明は?]

質問   ・ P.169 L4     ハドレーは誤って(コリオリを)角運動量の保存でなくて運動量の保存を考えていた、 とありますが角運動量を使って説明できるのでしょうか。 P.173問7.1で 角運動量の立場で問題がありますが、これだと大きくずれてしまいます。 -------- ----------- ------------ ------------------ 解答 ・平面上の運動は、運動量保存則でOKです。しかし、回転する地球上では、角運動を考慮する  必要があります。 ・問題7.1は、仮定の話です。大気粒子は、実際は、コリオリ力により東へ転向させられ、  60度N迄到達出来ません。 ・「誤って」と、著者が指摘したその対象は、亜熱帯地方における偏東風の方向を説明する事に おいて、ハドレーの言う様に「運動量保存」と地球の回転で、定性的には説明出来るが、 論理的には「速度は保存されないで」変わることに気付いていないことを、 言ったものと考えられます。
#08 004-07-169  [質問名:北極方向からの風向きがどうして、北西流になるのか分かりません。]

質問   ・ P.169 図7.3     北極方向からの風向きがどうして、北西流になるのか分かりません。 -------- ----------- ------------ ------------------ 解答 ・ハドレーがどの様に考えたのか佐藤にも分かりませんが、  図は、経験的事実としての偏西風を表現しようとしたものかも知れません。 ・北極からの風は、偏東風になりますが、そのことは図示されていないようです。
#08 005-07-167  [質問名:図7.2「熱の南北輸送量」の図の見方が分かりません]

質問   ・ P.167 図7.2で、     座標の左右についている単位が、1012・kjs-1、1016calmin-1と違っているのは     何を表しているのでしょうか。(目盛りも違っています。)   ・ また、このようなグラフの見方がわかりません。     (北半球ではプラス方向に、南半球ではマイナス方向に熱輸送されているのは      どうしてですか? 図7.21も同じですが...)   -------- ----------- ------------ ------------------ 解答 ・1cal=4.2Jの換算によるものです。 ・グラフは、図7.2(a)の熱放射の不均衡解消のための熱輸送の根拠を示した図です。 ・大気大循環のなかで、熱の放射や平衡の観点から、  EQ−−>N(EQ−−>Sも)向きに輸送される熱量を、  輸送の担い手(乾燥大気、海洋、大気中の水蒸気の3者)別に表示したものです。
#08 006-07-177  [質問名:赤道低圧部、亜熱帯高圧帯、熱帯収束帯の一関係がよく分かりません]

質問   ・ P.177 L1に、     赤道低圧部とありますが、亜熱帯高圧帯や熱帯収束帯との位置関係がよく分かりません。  -------- ----------- ------------ ------------------ 解答 ・赤道低圧部とは、−−−−>南北の亜熱帯高圧帯にはさまれた部分です。 ここで、  亜熱帯高圧帯とは−−−>亜熱帯、即ち熱帯に隣接する低緯度側になります。  熱帯収束帯とは−−−−>熱帯にあります。  以上のような位置関係と考えられます。
#08 007-07-183  [質問名:気圧の谷部分−低気圧性の渦、尾根部分−高気圧性の渦となる理由]

質問   ・ P.183 L1     すぐ上に述べたことから...とありますが、今ひとつ     気圧の谷部分−低気圧性の渦、気圧の尾根部分−高気圧性の渦になる     という理論が分かりません。 -------- ----------- ------------ ------------------ 解答 ・「すぐ上に述べたこと」が何を指すのか、解読作業が必要ですが、  「流れの中に+−の渦が存在すること」の様です。 ・「谷−低、尾根−高」の対応関係は非常に大事な理論の適用です。 ・渦位保存則の適用です。 ・気柱の回転を考える場合、伸縮に伴う相対渦度の変化の仕方を理解する必要があります。 ・「地球流体力学」等の専門書に説明があります。ここでの記述は割愛しますが、  5/22の輪読会の中で説明します。
#08 008-07-187  [質問名:「温度傾度の限度」を具体的に教えて下さい。]

質問   ・ P.187 L4     「温度傾度がある限度を超すと、大気はその状態に耐えきれず波動を起こして..」とは、 限度に何か具体的例があるのでしょうか。  -------- ----------- ------------ ------------------ 解答 ・傾圧不安定は、大気粒子にかかる「慣性」と「重力」が密接に関連しているようです。 ・「慣性」はコリオリ力、「重力」は気圧傾度力を意味します。 ・「多分」ですが、地衡風の発達についての、なんらかの数式表現されると思われます。 ・海洋物理学概論、関根著p.79によれば、傾圧不安定は、フルード数Frが   Fr>>1で、PE>>KE  の時生じる、とあります。  Fr=U2/gLで定義され、速度の2乗に比例します。 速度が小さいときは、不安定にはならないようです。  g=10、L=1000km、Fr=1 とするとき、  U2>1x10x1000x1000...??なんだか現実離れした数字!!?? ・佐藤には、これ以上は分かりません。更に調査が必要ですが、、、、、 ・なお、「温度傾度」は「気圧傾度」と同義であることに、ご注意下さい。
#08 009-07-173  [質問名:北半球の冬でフェレル循環の上部も偏西風となるのは何故か?]

質問   ・ P.173 図7.6で、     北半球の冬でフェレル循環の上部の北から南への循環領域も偏西風となるのは何故か? 偏東風になるのではないか。     -------- ----------- ------------ ------------------ 解答 ・これは、冬場、南下してきている偏西風です。 ・偏東風と考える根拠は何でしょうか。
#08 010-07-189  [質問名:減少した位置エネルギーは何に使われたのか?]

質問   ・ P.189 図7.22において、          (a)-->(b)では位置エネルギーが減少していると書かれているが、この場合では減少した分     の位置エネルギーは何に使われたのか?  -------- ----------- ------------ ------------------ 解答 ・減少した分の位置エネルギーは、運動エネルギーに使われました。 −−>風速の発生となります。 
#08 011-07-169  [質問名:ハドレーは誤って運動量の保存を考えていた、その意味は何か]

質問   ・ P.169 L6 「ただハドレーは誤って角運動量の保存でなくて、運動量の保存を考えていたことになる」      の意味がよく分かりません。詳しく説明して下さい。 -------- ----------- ------------ ------------------ 解答 ・本日の資料:#8 003−07−169 を参照して下さい。
#08 012-06-153  [質問名:傾度風と地衡風の強弱関係]

質問   ・ P.153 L4−5 「低気圧性の風では傾度風は地衡風より弱く、高気圧性の風では傾度風の方が 地衡風より強い」  この理由を解説して下さい。 -------- ----------- ------------ ------------------ 解答 地衡風は  気圧傾度力=コリオリ力 の力の釣合で、この時の速度をV1とします。 ・ 低気圧性の風では、       気圧傾度力=コリオリ力+遠心力 の力の釣合で、この時の速度をV2とするとき、 気圧傾度力に釣り合うべきコリオリ力は、遠心力分だけ少なくて済みます。 ので、V2<V1となります。                高気圧性の風では、       気圧傾度力=コリオリ力−遠心力 の力の釣合で、この時の速度をV3とするとき、 気圧傾度力に釣り合うべきコリオリ力は、遠心力分だけ多く必要です。 ので、V3>V1となります。
#08 013-06-153  [質問名:傾度風速の図の説明]

質問   ・ P.153 図6.13     a)図の解説をお願いします。 b)点Bは何を示しているのですか。 -------- ----------- ------------ ------------------ 解答     a)図の解説:       図は、Pn−Vの関係を、低気圧と高気圧の場合をコンバインして、描いてあります。       速度のマイナス符号は理解できますが、気圧傾度力のマイナス符号は理解困難です。       ただし、気圧傾度力を「加速度」のことであると気がつけば、いいのですが。。。。         さて、3種の力の釣合をベクトル図で描いてみて下さい。図6.12の「力の方向」 と「速度の方向」及び「式の符号」をシッカリ対応させて下さい。       (但し、方向と符号は、他の文献では異なっているものがあります。)       この図を全て理解する必要は無いと考えられますが、著作者が、何をいかに表現した かったのか、その点がもう一つハッキリしませんね。「異常」な話は良いとして、       B−Cの説明がないのは、困ります。どういう状態でしょうかねーー。  b)点Bは:高気圧がとりうる「最大の気圧傾度力」を表し、従って、高気圧の気圧には       (例えば、1080hPaあたりの)上限値が存在するようです。       (低気圧は、マイナスにならない限り、気圧の下限値は無いようです。) 参考:栗原宣夫著、大気力学P.163−166
#08 014-08-216  [質問名:フック型エコーが鍵型をしているとはどういうことか]

質問   ・ P.216 L5     「フックエコーがかぎ型をしている」とありますが、かぎ型の意味がよくわかりません。   ・ また、P214の図8.11(C)で「オーバーハングしているエコー」とありますが     この意味についても教えて下さい。 -------- ----------- ------------ ------------------ 解答 ・スーパーセル型のストームの図8−11(b)で、  記号V付近の凹んだ状態を「かぎ型」と表現しているようです。 ・このレーダーエコーはスーパーセルの特徴である、との事です。 ・上から降りてきた中層の空気と、上へ向かう下層空気の接する所に陣風線が形成されています。 ・同図のVにて竜巻が起こる、と記載されています。 ・同じく、図8.11(c)で、「オーバーハング」の言葉の意味から推定すると、  レーダーエコーの濃い部分の垂れ下がっている部分、を指します。
#08 015-08-217  [質問名:角運動量保存の法則により、強い渦巻きが出来ることの説明]

質問   ・ P.217 L−3     「渦巻きを構成する空気の輪が中心に収縮すれば、角運動量保存の法則により、観測      された程度の強い風速をもった細く強い渦巻きが出来ることは理解できる」      この部分がよく分からないので詳しく説明して下さい。 -------- ----------- ------------ ------------------ 解答 ・角運動量保存の法則は(一般気象学P.146より)、R1V1=R2V2  です。題意のように、最初半径R1速度V1の状態が収縮して半径R2になったときの  速度V2は、V2=(R1/R2)・V1  となり、R1>R2となったのですからR1/R2>1となります。  従って、V2はV1よりも大きくなります。 ・フィギュア・スケーターのスピンと同じ理屈です。 ・偏西風が強いのも、大気が北上したとき、角運動量の保存の法則に従っているからです。
#08 016-07-190  [質問名:コリオリ力は地球の回転速度に比例する様に感じられますが、、]

質問   ・ P.190 コリオリ力は、sinφに比例する。低緯度ほど弱い。     p.145の図6.8を見ると低緯度の方が、地球の回転速度が速いので転向力が     大きい様に感じられるが、意味が違うのでしょうか。  -------- ----------- ------------ ------------------ 解答 コリオリ力は、地球の回転速度でなく、その上で運動している大気の速度の大きさに比例します。
#08 017-07-150  [質問名:V=−(Δp/2ρsinφ・Δn)の式で、赤道ではφ=0になるが?]

質問   ・ P.150 (6.16式) 地衡風の式       V=−(Δp/2ρsinφ・Δn)       赤道では、φ=0になるので、式が成立しなくなるのではないか?      (分母が0になってしまう) -------- ----------- ------------ ------------------ 解答 この式を直接使用出来ません。赤道では、この式(関係)は成立していませんので。
#08 018-07-156  [質問名:温度風の関係とは偏西風が吹くことの説明だけでしょうか?]

質問   ・ P.156L10辺(温度風の関係)とは     偏西風が吹くことの説明だけでしょうか? -------- ----------- ------------ ------------------ 解答 静水圧平衡と地衡風平衡の2者の関係から導かれる関係式です。 偏西風だけではありません。 南ほど温度が高く、更に上空ほど風が強いことを表します。
#08 019-07-xxx  [質問名:偏西風は南風がコリオリ力で右へ曲げられたものと考えてよいか?]

質問   ・ 偏西風は北半球では南風がコリオリ力で     右へ曲げられたものと考えてよいか? -------- ----------- ------------ ------------------ 解答 ・偏西風は北半球では南風がコリオリ力で右へ曲げられたものと考えてよいです。  さらには、角運動量保存則により速度が増加しています。