一般気象学輪読会


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#03  4月15日(土曜日)  開催#−質問順−章−頁−[質問の小見出し]& コメント    #03 001-xx-xxx [質問名:爆弾低気圧に見られる様に高緯度で低気圧は発達しやすいか] 緯度60度で24時間に24hPa以上気圧低下すると、「爆弾低気圧」と言われます。 この限界値は緯度のsinに比例します。即ち、定義式で計算すると低緯度では高緯度 におけるよりも小さい気圧低下で「爆弾」なみの威力を持つこととなります。 もし低気圧が低緯度で得たエネルギーが保存されたまま北進すれば、相対渦度は小さく なるでしょう。相対渦度が小さくなることは、低気圧が弱まることを示します。 しかしながら多くの低気圧が北進して更に発達している事実を見るとき、「高緯度」は 低気圧発達の要因を持っているに違いない。この低気圧の発達要因としては、傾圧不安 定性と凝結の潜熱放出の両者が加味されたものと考えられていますが、上層の気圧の谷 の存在も影響している様です。しかし、なにが定説になっているのかは、分かりません。 なお、気圧傾度力は「加速度」であることを思い起こせば、傾圧場でその方向に運動 する大気粒子は、加速度を増しますので、「勢い」が良くなると考えられます。高緯度 そのものの存在が低気圧発達の要因と考えるより、低緯度と高緯度のあいだに物理的な 距離があることが、発達する(加速する)要因になっているのではないかと考えます。 なお、熱帯等の低緯度での低気圧発達は、傾圧性を原因とするものでは無く、台風の様   に水蒸気の凝結潜熱放出を原因とするものです。 #03 002-xx-xxx [質問名:気柱の伸縮と渦度の大小の関連について教えて下さい]   「渦位保存則」を思い出してください。気柱が伸びると渦度は、増加します。縮むと   渦度は小さくなります。拙著「天気図と気象理論」のP.116に説明があります。   ご参照下さい。 #03 003-xx-xxx [質問名:「エントロピー」というものを理解する必要はあるでしょうか]   エントロピーは熱力学第二法則で説明される事項ですが、気象予報士レベルでは 理解不要と思われます。エントロピーは、現象の「可逆性」、「不可逆性」について 話するときの熱移動の数学的・物理的取り扱いを行なうとき必要になる様です。 例えば、降水を伴う気象現象は「不可逆な現象」で、「降水」という現象を元の状態へ 戻すことは出来ません。(この状況は、「エントロピーが増大する」と言われます。) #03 004-02-039 [質問名:地球脱出速度と気体分子運動により得られる速度との関連]   速度算出の相違は、地球脱出速度の式の導出過程や方法をよく理解することが大事です。 一般気象学のP.39の表2.2の値を算出するのに、飛び出してゆく物質の   質量は、計算の対象外になっています。即ち、式2.12における物質の質量mが   左右両辺消えますので、物質の質量は脱出速度には関係しないことになります。   同書、2.13式は、気体分子運動論により、分子が得ることのできる速度を   表現しているだけです。脱出速度算出とは別の話です。 #03 005-01-018 [質問名:古代の地球大気の圧力はどの程度高かったのでしょうか]   全て水蒸気と仮定し、更に温度が300℃程度の場合の水蒸気圧力を考えて下さい。   非常に「高圧」(数百気圧)になります。 #03 006-01-020 [質問名:陸上に生物が出現したのは4億2000年か]   4億2000万年と考えて下さい。同書の誤植かも知れません。 #03 007-xx-xxx [質問名:渦度移流とはどんなことなのか、教えて下さい]   「移流」ということの意味や定義をシッカリ踏まえて話をすることが理解への第一歩です。 最も基礎的な理解事項としての「移流」と言うことを、以下概略説明します。 「移流」とは、或る1地点における物理量の変化を言います。 例えば、館野と言う地点において、その上空の渦度がある時刻において −50x10**−5であったとき、或る時間経過(例えば12時間経過)後、 +20x10**−5になったとすれば(A)、 この時間間隔における移流量は、70x10**−5rad/sとなります。 もし、−90x10**−5となったとすれば(B)、 移流量は−40x10**−5rad/sとなります。 即ち、「移流」とは、ある特定の地点においてその地点での物理量の変化を議論する ときに使う言葉です。これは数値予報に於ける、最も基本的な概念です。 (世の中には、「移流」と「輸送」を混同して使っている場合がありますので、要注意です) 拙著P.56−57(特にP.57)をご参照下さい。 #03 008-03-076 [質問名:沈降性逆転層はいかにして形成されるか]   気流が下降し、断熱昇温し、下層にあった大気温度よりも高温になったとき、 そこの所に形成されます。 #03 009-xx-xxx [質問名:低気圧性曲率と言う用語の曲率とは何か] 或弧の中心(曲率中心と言う)から、その弧までの長さを曲率半径と言います。   曲率半径の逆数を曲率と言います。弧長=ds、曲率半径r、微小角度Ψ、 とするとき、ds=r・dΨより、曲率κ=1/r=dΨ/ds となります。 rが小さいほど(きつい曲線・カーブとなります)、曲率は大きくなります。 トラフは、等高度線における低気圧性曲率が最大の部分を結んで描かれる様です。  #03 010-01-010 [質問名:太陽系惑星の質量・体積の求め方]   惑星の質量は、基本的には、求心力=重力、で求めます。惑星の質量を決定するには、   その周りを回転する物体、即ち、衛星あるいは人工衛星を必要とします。    求心力=mv**2/R、但しv=2πR/T 重力=GmM/(R**2)   これらより、M=(4π**2/G)・(R**3/(T**2)) この式は、ケプラーの第三法則にほかなりません。 M:惑星の質量、R:惑星とその回りをまわる(人工)衛星との間の平均距離、 T:(人工)衛星の回転周期、G:万有引力定数、m:衛星の質量 なお、金星や水星は衛星を持っていないため、人工衛星の出現までは、それらの 質量は正確には分かっていなかった様です。地球や火星の質量は、人工衛星出現 以前から分かっていたようです。試しに、上式で地球の質量を算出してみて下さい。 用いるべき衛星を、月にすると; G=6.672x10**−11 R=384400km=384400x(10**3)m T=27.32日=27.32x86400sec ....恒星月を採用した を代入すると、M=60.2x(10**23)kgとなります。 この2月に帰還したスペースシャトル を使うと; 地球周回の周期=110分?、R=6600km、と仮定すると、 M=57.1x(10**23)kgとなります。<−−検算して見て下さい。   なお、体積は別途惑星までの距離や望遠鏡で観測したときの視直径などから算出   されると思いますので、容易に算出されるでしょう。もうひとつ、恒星の質量は 光度から推定されています。   なお、惑星の大気組成や温度は、光のスペクトル観測から得られると思います。 #03 011-05-127 [質問名:宇宙の熱収支はどうなっているのか]   不明です。そもそも宇宙とは何かが分かっていませんので。想像の域を脱しませ んが、宇宙全体の温度が上昇する一方である、と考えるのは困難であると思います。 なぜなら、もしそうなら、その熱源は、エネルギーを失う必要があり、従って全体 はバランスすることになると思います。森山茂著「宇宙と地球の科学」が少し参考 になりそうです。様々な「宇宙観」があるようです。 #03 012-xx-xxx [質問名: 実際に起こった気象現象の事例を地上天気図や、高層天気図、 衛星雲画像等の気象データを示して解説しているような図書?] 「本」の形になった物は、「気象衛星資料の予報への利用」、気象協会編、5,800円 が有ります。様々な雲パターンが掲載されていますが、対応する高層天気図は、それほど 多くは有りません(殆ど無い?) 同じく気象協会編で、「気象FAXの利用法」Part2と言う本が有ります。 この本は、写真は少ないですが、FAX図は多いです。価格は3,590円です。 「気象衛星画像の見方と利用」気象業務支援センター発行の本も有ります。 40頁、1,000円です。簡潔に、基本的事項が記載されています。 また、最近「CD」の形にしたものが発行された様です。気象業務支援センター編、 だと思います。こちらの方が気象予報士の受験に有用ではないかと想像します。 1997年と1998年の代表的な気象現象が掲載されている様です。ただし、 価格がそれぞれ1万円余ほどする様です。 #03 013-xx-xxx [質問名: 順圧の生成因、その発現場所?] 順圧は等密度面と等圧面が平行な大気状態を言います。 大局的には、地上の大気は殆ど「傾圧」状態です。然し、ローカルに見た場合は、 「順圧」と考えられることもあります。工学に於ける圧力容器や管路内の流体は 「順圧」であり、気象学は、専ら「傾圧」を扱うことがその大きな特徴です。 傾圧不安定があるように、順圧不安定も有ります。アフリカ上空や熱帯における 台風の卵の発生域などが順圧状態であると考えられています。 #03 014-xx-xxx [質問名:慣性不安定とは?] 当項目は目下、調査中です。下記の事項をクリアーにしたいと思っています。 安定・不安定とはどう言うことなのか。 :変位の微分の正負により決まる。 「慣性」とはどう言うことか。 :その状態を続けようとする性質。 水柱の場合:規模が小さい?気圧傾度力と遠心力のバランス? 大気の場合:規模が大きい?気圧傾度力とコリオリ力とのバランス? 絶対渦度の変化率が負になると、慣性不安定となる。 順圧不安定とは? 傾圧不安定とは? の理解も併せて必要になります。 順圧不安定:鉛直方向のシアーなし、水平方向のシアーあり。 傾圧不安定:鉛直方向のシアーあり。 慣性不安定:上記2者とは異なる観点で力のバランスを考えます。 #03 015-xx-xxx [質問名:尾流雲の生成因は何か?] 尾流雲は雲底からの降水が鉛直下方/斜め下方に垂れ下がった様に見える、部分 です。高層の尾流雲は、氷晶から構成されている場合が多い様です。 雲底からの降水が地上に届かなかった場合の状況を指します。即ち、降水が発現 しても地上に届かず、途中で蒸発してしまう場合です。地上に届けば、降水雲と 言います。竜巻やスーパーセルの生成・発達とは直接関係なく、下層、中層、上 層いずれの種類の雲からも尾流雲が発現します。特に、低層の尾流雲は数km 離れた地点から、目視観測できることがよく有ります。 #03 016-xx-xxx [質問名:渦度が負の地点は、負の渦度移流域である、と言えるか?] 現在のその地点の渦度がいかなるものであっても、「移流」と言うことには関係あり ません。「移流」とは、その時点から或る時間経過後渦度の渦度変化の「有無」を 問題とします。 この観点から、上記設問に対する答えは「否」となります。 「移流」と言うことの「本質とその応用」を良く承知しておくことは非常に大事です。 #03 017-xx-xxx [質問名:上層の気圧の谷が地上低気圧の東にある場合の大気の構造?] 勉強会の時に検討しましょう。なお、気象協会発行の「気象FAXの利用法」の P.35の「暖かい大気の下降、冷たい大気の上昇」とは、どういう事か、に関し ては、著作者に直接問い合わせして頂けると有り難いです。実際の 大気の流動状態はどうなっているのか、どうも理解しがたい記述ですね。 #03 018-xx-xxx [質問名:オメガ方程式の渦度移流の鉛直シアーとは何か?] オメガ方程式は、渦度移流と温度移流がその主な構成要素ですが、調べます。 理論的に難しい話なので大分時間がかかると思います。 #03 019-xx-xxx [質問名:寒冷前線の移動速度が温暖前線よりも速い理由] 冷たい大気の方が密度が大きいこと、このため運動量が大きいこと、エネルギーが 大きいこと等がその理由になると考えられます。(要するに、パワフルなのです。) #03 020-xx-xxx [質問名:レーダーエコー合成図の記号に同じ様に見える物があるが、、] 確かに降水強度の記号に1〜と2〜および4〜と8〜、さらに64〜と80〜等も同じ ように見えます。気象庁お天気相談所所に聞いて見ます。 #03 021-03-055 [質問名:北半球の南北鉛直断面で、最も温度が低い地点は極地方ではないか?] P.54の図3.5で、確かに平均的には極地方の方が温度が低いように見えます。   しかし、「最も低い」と言う条件付きで見ると、熱帯地方上空に気温の極小となる部分   がある様です。参考図として、P.251の図をご覧下さい。時期は少し違いますが、   熱帯地方の上空に気温の極小になっている部分が見受けられます。   #03 022-03-058 [質問名:飽和水蒸気密度は、水と氷に対しいかに異なるか] P.59の表3・3で、零度以下の場合水と氷に対する飽和水蒸気圧の値が掲載   されています。P.58本文L−12付近にあります様に、水蒸気と液体の水が   共存する場合は、水蒸気は液面を境にして同数の分子が出入りします。   水蒸気と氷が共存する場合は、同書に記載は見受けられませんが、液体の水の   場合と同様に固体の水(氷)の面を境にして、同数の水の分子が出入りします。   では、水蒸気、液体の水、固体の水(氷)の3相が共存する場合はどうなるで   しょうか。(拙著、「天気図と気象理論」P.65をご参照下さい。)   答えは−−>氷がどんどん成長します。液面からも水蒸気が出てきて、氷の方に   移って行きます。このメカニズムは氷に対する飽和水蒸気圧が液体の水に対する   飽和水蒸気圧よりも(わずかですが)低いことによるものです。相対的に高圧側   の液体から相対的に低圧側の固体(氷)の間に圧力傾度が生じ、高圧側から低圧 側へ水の分子が移動します。このことにより、氷がますます増加します。 このことは、降水過程における非常に重要な現象です。
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