一般気象学輪読会


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#05  6月11日(日曜日)  開催#−質問順−章−頁−[質問の小見出し]& コメント    #05-001-xx-xxx [質問名:試験問題:実技(平成10−2回)雨雪判定で、相当温位の線が 雨雪判定のボーダーラインになっている様であるが、その様に考えて良いか?] 図を実用的に使える様にしておく必要がありますが、相当温位との関連は各自もう少し 研究しておく必要があると思います。 #05-002-xx-xxx [質問名:熱と温度の違いは何ですか] 「温度とは何か」櫻井弘久著、コロナ社、がよい本です。なお、「物理のことば」 徳岡善助著、講談社サイエンティフィックによれば、 「熱」とは、物体に冷温の差を生じさせる原因である。 「温度」とは、冷温の度合いを示す尺度である。 と記載されています。これでは、分かりにくいかと思いますので、以下補足します。 別の言い方として:熱の単位はJ、温度の単位はKですが、物体の固有の物理量で ある比熱Cpが、JとKの仲をとりもってくれています。即ち、Cp=J/(K・kg) の関係式があります。この式から推定出来ることとしては、熱と温度の概念的相違は あっても、数値的には比例関係にあることが分かります。 気象においては、エマグラムが大気と言う物質のエネルギー状態を表現しているもの ですが、大気に熱が加えられると大気の温度が上昇し、その大気は上昇し、対流雲が 発達することは、良く理解出来る事であろうと思います。 雲が上昇すると下層で加えられた熱は(熱エネルギーは)上空へ運ばれる事によって、 熱エネルギーが位置エネルギーへ変換されます。通常上層の大気ほど保有している位置 エネルギーは大きいものです。大気の温度は上層ほど低いので、温度が低いからエネル ギーが小さい戸は言い切れません。大気の場合は、「気圧」と言う物理量と共に、その エネルギー状態を云々する必要があるからです。大気の場合、普通の物理学とは異なる 概念「温位」という概念を導入しています。通常上層ほど「温位」は高くなります。 #05-003-04-089 [質問名:国際式天気記号で、雲量が1/4だけ塗りつぶされている記号は、 10分量で2〜3分量であるから、快晴となるのではないか。へんである?] 日本式の「快晴」は、国際式の雲量が「10分量で0〜1の場合」に対応します。 #05-004-04-089 [質問名:コリオリと気圧傾度力が、定常状態になるまでの時間はどれだけか?] この問題は、解答不可能です。というのは、大気の出発点を確定できないからです。 「気圧傾度力の場」に於ける大気粒子の運動は、気圧傾度力とコリオリ力との釣り合いから 計算できます。しかし、実際の天気図では、その時間如何にかかわらず定常状態を前提とし て描かれています。本当は、力の釣り合いがバランスしていないから、天気が変化する様です。 #05-005-06-162 [質問名:アメダス図とレーダーエコー図が1時間異なる理由?] 両図に於いて時刻を1時間異なって掲載していますが、その様にする積極的な必要性は 想像できません。この問題は、著者に、時刻を違えてあるその目的・理由を聞かないと 分かりません。 #05-006-04-089 [質問名:水滴のサイズが大きくなった場合の終端速度を求める式]     小倉先生の本文に有りますように、余り大きい直径の終端速度は、渦粘性等のため、     4.8式は適用出来ませんので、その式をベースにしての計算には、誤差が含まれ     てくることを覚悟しなければなりません。 #05-007-08-204 [質問名:レーリー数を求める公式は、空気の対流に対しても適用可能か?]     大気空間の様な大規模な空間の対流現象に対してのレーリー数を求めるために、 レーリー数の公式に当てはめることは困難と想像しますが、要調査です。 #05-008-xx-xxx [質問名:アメダスの数値がカッコで囲まれているものは何か] 雨量1以下の微小な雨量の表示かと想像します。 #05-009-xx-xxx [質問名:インド洋上に吹く季節風は、1月は北東風、7月は南西風という 風が吹くようなのですが、何故ですか?] 冬は相対的に冷たい大気が南下する事。夏は相対的に暖かい大気が北上する事。 これらの南下、北上する大気が地球の自転を原因とするコリオリ力を受けて、進行方向の 右側にズレル事が、北東風、南西風になるのでは無いかと、考えられます。 #05-010-xx-xxx [質問名:さらに、その風の影響を受けて、下にある海流も変動するのでしょうか?] この様な季節風により海流が変動するには、あまりにも時間が短いと思います。 地質年代のように何万年ものタイムスパンで見るとき、影響が顕著になるかと、 思います。(私には、実際のところ、風と海流の相互関係はよく分かりません) #05-011-xx-xxx [質問名:「潜在不安定」と言う用語が掲載されている文献は?] (著者、編者のお名前は全て敬称を省略させていただきました) 1.学術用語集(気象学編)、文部省及び日本気象学会著、丸善、 潜在不安定の対訳は、latent instabilityとしている。 また、対流不安定の対訳をconvective instability及びpotential instabilityとしている。 2.気象科学事典、日本気象学会編、東京書籍、 [小倉義光執筆の部分]、p.291、「潜在不安定」をlatent instability及びpotential instabilityとしている。 対流不安定convective instabilityと同義語として potential instabilityを紹介しつつ、更にこの potential instabilityを潜在不安定と呼ぶひとが有ることに 言及している。 3.気象力学通論、小倉義光著、東京大学出版会 p.167、対流不安定(convective instability)=潜在不安定(potential instability)と読み取れる記述がある。 4.新版 気象ハンドブック 朝倉、関口、新田共編、 [藤谷徳之助執筆の部分]、p136、対流不安定(convective instability)=潜在不安定(latent instability)と読み取れ る記述がある。 5.気象学ハンドブック、気象学ハンドブック編集委員会技法堂 [有住直介執筆の部分]、p.507、条件付き不安定を潜在安定と潜在 不安定に分けている。 6.大気科学講座2(雲や降水を伴う大気)、東京大学出版会 [浅井富雄執筆の部分]、p.39、条件付き不安定な大気の成層状態に 3種類有ることをノルマンド(Normand,1938)の文献 から紹介している。即ち、安定型、偽潜在型、真性潜在型の3つの 型がある、と。 同書、p.41には、対流不安定(convectively unstable)=潜在不安定 (poitentially unstable)と読み取れる記述がある。 7.気象の教室3水の気象学、東京大学出版会 [武田蕎男執筆の部分]、p.36、対流不安定=潜在不安定と読み取れる 記述がある。 8.気象熱力学、気象学講座第3巻、桜庭信一著、地人書館、 P.108、潜在不安定(latently unstable)に関して、 偽似潜在不安定(pseudo-latently unstable)及び 真性潜在不安定(real-latently unstable)を説明している。 9.気象予報の物理学、二宮洸三著、 p.114、対流不安定=潜在不安定と読み取れる記述がある。 10.Atmospheric Physics、Salby、Academic Press p.184の7.4.3に、potential instabilityと言うタイトルがある。 これは、明らかに「対流不安定」と考えられる。 11.An Introduction to Dynamic Meteorology、Holton、Academic Press p.185に、potential instability(sometimes called convective instability)、と言う記述がある。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
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