AZR02 はじめに
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目次 索引 PageLink 青空ページ
筆者は「気象」を自分の「趣味」としているものですが、気象予報士合格後、自由な立場で勉強できる
ようになりました。その過程で、理論に関するポイントと思われる事項を、メモしておきました。このた
まったメモはジグソーパズルの一つ一つのピースのように断片的でした。この断片をひとつのまとまりあ
るものに、自分の意のままにまとめてみたい、という思いに駆られて作ったものが当書です。お断りです
が、当書はメモの寄せ集めですから気象の理論を体系的・網羅的に議論するものではありません。
ところで、「気象の理論」は言うまでもなく、多くの先人の労作です(P.56 参照)。
文献も気象学者の数ほどあると言われる位、多く発行されています。それぞれその目的とするところに
おいて、好著たること疑いはないと思いますが、ただ最近まで「象牙の塔」に入っていたためか、程度が
高すぎたり、あるいは難解であったりして、素人にとって必ずしも「手頃な」と言う感じの書物はそれほ
ど多くはありませんでした。筆者の勉強不足がその最大要因であることは、間違いありませんが、「余り
勉強しなくても分かるものはないか」と思ったほどでした。こんなことで、筆者には理解不十分な箇所が
多くありますが、気の赴いた、かつ手の届いた範囲内のものに限定してここにまとめて見ました。ただし、
習ったこと What の単なる受け売りに終わることなく、自分なりに Why と問いかけ、疑問を発し、
一段でも深く掘り下げようとしました。たとえ「サル」には分からなくてもよい、しかし「気象予報士」
には疑問が残らない様にしたいと思いました。
本書は決して完成したものではありません。 発展途上にあるものです。気象の難しい理論を、
「このように表現すれば」あるいは、「このように説明すれば」理解し易くなるのではないか、
という試行錯誤の過程にあるものです。誤解したまま記述している箇所があるかも知れません。
是非とも「批判的に」当書を眺めて下さい。
この様なものですが、当書は気象を本職としていない「ペーパー気象予報士」や「気象予報士受験」を
考えておられる方々を対象として、天気図を読む時、「何故、値がそのようになっているのか」という
論拠を求め・考える時、その「天気図作成のベースとなっている気象の理論」に関し、多少でも参考に
なるところがあるかと思い、製本化したものです。
なお、本書をまとめるにあたり、次のように5つの部分に「力」を配分しました。
「天気図を読む」 :本書著作にあたっての、筆者の基本的な考え方を述べさせて頂きました。
「気象の理論」のページへの道しるべ代わりとして、「天気図」を示し、
その天気図において、着目すべき項目や参照先を示しました。
「気象の理論」 :天気図に表現されている数字や記号が、そのようになるべき論拠を解説します。
原則として、項目毎に左右見開きのページで読み切りとし、 左ページには気象
要素等の定義や理論を述べ、右ページには補足的な説明を記載・配置しました。
気象理論の最重要項目と考えられる「温位」や「移流」を含む「理論のページ」は
本書の核心部分です。(雨や天気は対象外とします)
「気象の計算」 :気象の理論を、数字、方程式、図を使って理解を深めるためのページです。
単に数字を算出するよりも、考え方の本質を説明するようにしたつもりです。
「コラム」 :理論・計算の部分を補足するもので、筆者の個人的な意見や見方を含めて、
随筆風な感じで書きました。言わんとする意図を汲んでいただければ幸いです。
「付録」 :理論・計算を理解するための前提・参照用としました。
インターネット環境下で、本書の内容のダイジェスト版を見ることが出来ます。 [P.75参照]
本書の題名に「インターネット対応版」と附した所以でもあります。 特に図版や他ページの
参照については、マウス・クリックでリンク先を容易に参照出来ようにしてあります。
当書において、引用させて頂きました文献は該当箇所でその旨表示いたしました。
ここで、厚く御礼申し上げたく存じます。また、当書を複製される場合は、
著作権法に則り行うようにお願いいたします。著作権法に関しては、筆者のホームページの
http://www.ny.airnet.ne.jp/satoh 青空ページの[Information]
に掲載しておきました。ご参照下さい。
この本は、気象が本当に好きな人々のためのものです。筆者も出来る限り努力し、
ライフワークの重要な柱の一つとして、内容の改善を行っていく積もりです。
本書が読者の皆様にとって少しでも得るところがあり、また新たな視点を発見して頂く
ことができれば、筆者のもっとも大きな喜びとするところです。
1998年8月
佐藤 元
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