JTU運営規則<改定案と補足説明>
<競技特性からの規制>
<運営上からの規制>
また、この制限時間はウェーブスタートの場合、管理が難しい。さらに、バイクコース上でこの制限時間を設定し、審判あるいはスタッフにより確認し、これを制御することは大きな困難が伴う。
このため、現実に則した規定は次のようになるだろう。「指定の区間を、基準とされた制限時間内に通過できないと審判員または大会スタッフにより判断された場合、その時点で競技続行を中止しなければならない。なお、制限する時間の確認については、“制限基準時間(タイム)”とし、状況によっては通過を許容する。
<競技遂行と安全面からの規制>
<大会特性からの制限>
以上のように、トライアスロンは、スイム・バイク・ランで構成されるものであることを考慮する。また、コース使用時間の範囲が広いとはいえ、世界選手権では、スイムで制限時間を設定した実施例はないことも報告する。
第90条(制定と実施)
補足説明
<ローカルルール作成基準とポイント>
〔基本理念〕
〔制限時間〕
〔スイム〕
〔スイム用具類〕
〔トランジション(スイム/ラン)〕
〔バイク〕
〔バイク用具類〕
〔ラン〕
〔アトラクション関係〕
補足説明
トライアスロンの競技と制限時間(一考察)
スイム、バイク、ランで構成されるトライアスロンは、3種目を完了して始めてトライアスロンとして成立する。そのため、“制限時間”は、最終種目のラン競技が終了する時点での制限、とするのがトライアスリートのための現実に則した考え方である。
交通規制そして運営時間の許す範囲で、可能な限り競技者に“トライアスロン”を堪能する機会を与えるのが主催者側の務めと考えたい。
各種目毎あるいはコース上の主要ポイントに制限が設けられるのは、競技の運営上(特に交通規制)の問題が第一にあげられる。
交通規制の限定時間を考慮し関門を設けるのはしかたがない。しかし、これは事前の告知により応募時点での選手の了解が必要である。
さらには、「..何時何分までに指定地点を通過できなかった場合はコースアウト(失格とは表現しない)..」と規定した場合、厳密には、バイクであれば、「..前車輪の先端が、指定ラインを規定時間前に越えなかった場合は..」というような表現になり、写真判定さえ必要となってしまう。
ただし、規定時間の1分を目安とする秒単位での超過は、審判員や大会スタッフの裁量により判断する。指示の方法は、指定区間での警告音による。競技者は、同地点で警告を受けた場合、競技を停止して指示を受ける」。
さらに、JTU規則では「制限時間の設定により、競技者のペース配分の確保を容易にし、安全に寄与する」としている。
スイム制限時間があまりに長すぎると、少数の際立って遅い泳者のために監視救助態勢の密度を高める必要があり、運営体制が対応しきれないことがある。
大会特性(選手権などの競技区分)により制限時間が設けられるのは、競技能力の均質化をめざしたものである。しかし、スイムが弱くてもバイク、ランで追い上げるタイプの選手も多く、選手権といえどもあまりに厳しいものは再検討する時期にきている。
全国の競技団体から派遣された選手が、エリートといえども「完走」する意義は大きい。
<事例1>
これまでの日本選手権(トライアスロン・ディスタンス51. 5キロ)では、スイムの制限時間が、男子25分、女子30分が適用されてきた。
日本一を決定するには適当な時間とされたが、コンディションによっては厳しい制限時間となる。これまでも、数名の選手がスイム制限でリタイアを余儀なくされている。
あまり厳しくするとスイムが弱く、バイク、ランに強い選手を阻むことになるだろう。主要大会で優勝したこともある選手が、25分のスイム制限が厳しく、一般部門にエントリーした例がある。
<事例2>
一般大会では、スイムの制限時間は50分から60分である。しかし、これをクリアしてしまえばトランジションエリアには何分いても構わないという矛盾が生じる。
スイムの制限よりは、むしろ「スイム/バイク・トランジションからのバイク・スタートタイムの制限」が適切とする考え方が現実的である。
なお、バイク競技時間は、両トランジションタイムを包括すると規定されている。スイムの制限時間をバイクスタートに設定することは不適とする考えもある。
従来計測していたトランジションタイムを世界的なレベルで実施する場合、地域によってはこれが難しいこと、また、スイムフィニッシュでの計測が難しいため、トランジション・タイムを割愛した経緯を考慮しなければならない。
<事例3>
85年の天草トライアスロン(51. 5キロ)ではスイム制限時間が90分であった。ウェットスーツなしので制限間際まで1500メートルに挑戦した時代である。
全体の制限時間は5時間であった。ここで完走した選手たちが、数年後に3時間を楽にクリアする選手に成長している。
<現場レベルでの対応>
現実の大会進行中の現場レベルを想定すると、全体の制限時間がほとんどない状況では、バイクからラン競技に移る時点で制限することは了解されることであろう。
波、風、温湿度などの競技環境により制限時間を延長するなどは、現場の臨機応変な対応が必要である。
<標準タイムとしての提示>
今後、個々に制限を設ける場合は、「標準タイム」とすることが現実に則したものとなるだろう。これにより、参加選手の目標値とするとともに、競技レベルの均質化をめざすものとなる。
一方、大会運営上の問題もあり、スイムでの制限時間は、前述の各事項を総合的に検討された余裕のある「制限時間/制限基準時間」が設定されることが良好であろう。
そのため、スイムの制限時間は、「スイム(終了)標準時間/タイム」とし、バイクスタートに制限基準時間を設定することがより現実的である。今年実施される日本選手権では、スイム標準時間を25分(男子)とし、バイクスタート制限基準時間を35分間とする方向で検討中である。
これにより、例えばスイムを24分で終了したにも係わらず、トランジションで12分間以上も時間を費やした(スイムスタート後36分後)というケースを規制できることになる。また、スイムを26分で終了しても、2分でトランジションを終え、バイクをスタートした(スイムスタート後28分後)ような場合、スムーズに競技運営を推進できる。
さらに、1500メートルを制限時間ぎりぎりで終えようとする選手を急がすことによる思わぬ危険を避ける効用も考えられる。
また、制限時間の設定は、スイム、バイク、ランの各種目ごとに設定されるより、スイムスタート後から算出する方法が適当である。
<96年度(平成8年)日本選手権(51. 5キロ)での実施参考例>
選手権部門(男子)制限時間
スイム: 25分
バイク: スイムスタート後1時間30分(バイク想定時間 65分)
ラ ン: スイムスタート後2時間15分(ラ ン想定時間 45分)
選手権部門(女子)制限時間
スイム: 30分
バイク: スイムスタート後1時間45分(バイク想定時間75分)
ラ ン: スイムスタート後2時間30分(ラ ン想定時間45分)
一般権部門(男女共通)制限時間
スイム: 50分
バイク: スイムスタート後2時間30分(バイク想定時間100分)
ラ ン: スイムスタート後3時間30分(ラ ン想定時間 60分)
<97年度(平成9年)日本選手権(51. 5キロ)での推奨案>
選手権部門(男子)標準タイム
スイム: 25分(30分:アジア選手権選考)
バイクスタート:スイムスタート後35分(40分:アジア選手権選考)
バイク: スイムスタート後1時間30分(バイク想定時間65分)
ラ ン: スイムスタート後2時間15分(ラ ン想定時間45分)
選手権部門(女子)標準タイム
スイム: 30分
バイクスタート:スイムスタート後40分
バイク: スイムスタート後1時間45分(バイク想定時間75分)
ラ ン: スイムスタート後2時間40分(ラ ン想定時間60分)
一般権部門(男女共通)制限時間
スイム: 50分
バイクスタート:スイムスタート後60分
バイク: スイムスタート後2時間30分(バイク想定時間100分)
ラ ン: スイムスタート後3時間40分(ラ ン想定時間 70分)
あまりに遅いあるいは不安のある競技者は、マーシャルが制限タイムの有無によらずコントロールできる。