JTU競技規則<改定案と補足説明と事例集>
第5章 トランジションエリア規則 第22条(安全の確保と競技)
第22条(安全の確保と競技)
- (乗車禁止の原則)
- トランジションエリア内は、バイク乗車を禁止する。
- 乗車とは、「サドルに乗っている。バイクにまたがっている。ペダル片足走行(砂蹴り)」などの状態である。
- 降車とは、「バイクから完全に降りている。片手、両手でバイクを支えている。押している」などの状態である。
- (追加)エリア内ではシューズなしで走行できる。また、スイムからの通路、乗車ライン通過後の助走についても同様とする。
補足説明
- 従来は、トランジションエリア内の乗車に特別な制限はなかった。しかし、狭いエリア内で右往左往しながら乗車しようとする競技者たちは、接触の危険が高くルールの改善が求められていた。その結果、提案されたのが「乗車ライントと降車ラインの内側と規定されるトランジションエリア内での乗車禁止ルール」であった。
- 限定スペースを乗車禁止は、ごくあたりまえのように思えるが、欧米の合理的な考え方がもたらしたものだ。「だめなら、どうするか」の前向きな発想が、トライアスロンのすべてに当てはまる。
- 「ペダルの片足走行は乗車ではない」と間違えて理解している競技者がいるので注意が必要である。
- ペダルにバイクシューズをあらかじめ付けている場合があるが、許容範囲としたい。これを禁止した場合、エリア内をビンディング対応のエッジが付いたバイクシューズで走るのに違和感が伴う。
- また、バイクシューズをあかじめ付けることを禁止するメリットは、乗車直後に、シューズを履こうとして態勢が崩れ危険な状態を防止することである。
- いずれにしても一長一短であるが、現状から判断すると短距離タイプは、これを許可し、ロングディスタンスでは、禁止しても良いかもしれない。しかし、統一基準を示すとしたら、いずれでも容認されるルールでなけば実用的なルールとなりえない。
状況例
- ルール改定翌年のロングディスタンスの大会で、大量の競技者が片足走行状態でトランジションエリア内に入ってきた。マーシャルは必死に注意する...競技者が気がついて降車するという光景があちこちで見受けられた。
- ルール説明会で説明。ローカルルールには、新ルールとして明記されてあった。
判断例
- このような状態で、マーシャルが反省するのは、「もう少し、強調して、あるいは具体的に説明をしておけばよかった」ということである。
- 降車ラインについても、「競技者の、競技中の目線」に配慮した目印をいかに良く付けたかも反省すべきことである。競技者の目線は、両サイドには行きずらいもので、下を見ている傾向が強い。さらに、ライン付近での係員の増員も必要であったろう。
- 大量の違反は、主催者の運営不備であることが多く、双方に注意勧告が出されるだろう。また、審判長の対応としては、総評で注意するなどが教育的指導として適当だろう。
- この中でも悪質なものは、ストップアンドゴー・ルールを適用して注意することは当然である。
第22条(安全の確保と競技)
- (進路妨害等の禁止)
- 他競技者のトランジション・スペース(トランジット・スペースは英語として不適)に入ることを禁止する。
- 種目変更中または競技中に、他競技者の進路を妨害してはいけない。
補足説明
- 「トランジション」を“トランジット”と表現される場合があるが、正確にはトランジションである。
- 51. 5キロ:トライアスロン・ディスタンス(旧名称:オリンピック・ディスタンス)のスピードレースでも、昔は、トランジションエリアにベタッと座ってシューズを履き替えることが多かった。そのため、他競技者の進路をふさぐことが多かった。しかし、今日はこのようなケースは少ない。中腰で素早くシューズを履くことが一般化している。
- 設営で重要なことは、このスペースを白テープを張るあるいはペイントするなど明確な区分が求められる。しかし、現実には難しいことである。それでも、より良い状態そして理想を追求しながら大会を主催運営したいものだ。
状況例
- 区分はされていなかったが明らかな通路部分にウエットスーツが散乱している。ここを通過する競技者はこれを乗り越えなければならないものの、大きなロスタイムはないと判断された。しかし、見た目には好ましくない。
判断例
- このような場合、ルールの適用よりも重要なことは、スタッフあるいは審判員で気が付いた者が、レースのスムーズな運営のために、この「不正状況をいち早く修復」することである。
- ルール以前のマナーにも基づくものである。全体のマナー向上を促進する。
- 一般的には、トランジション・スペースの区分があいまいなこともあり、厳しい適用はしずらいが、あまりにひどいものは別途の注意をうながし、教育的指導を行う。
- さらに、結果として競技妨害になっていなかったとしても、「現場の状況から、やもをえずに散らかったのではなく、まったく他競技者への迷惑・妨害を考えない“悪質な行為”とマーシャルが現場確認によりり判断したら、厳重注意さらには失格もありえるものだ。ただし、この状態で失格などを取るには、「主催運営レベルと競技者周辺の状況などを相殺して判断」しないといけないだろう。
第22条(安全の確保と競技)
- (乗降場所の指定) <96年度JTU改定>
- トランジションエリアのスタート地点に明示される「乗車ライン」では、バイク前輪の先端が乗車ラインを越えた直後に乗車できる。
- 「降車ライン」では、前輪の先端がラインを越える前に降車する。
補足説明
- 95年までは、「乗車ラインを越えた後に乗車する」「降車ライン手前で降車する」と明記されていた。一般的にバイク競技では、前輪がフィニッシュラインに掛かる瞬間にフィニッシュとなる。このため、ルールの明確化を図るため、このようにルールが改定された。
- 当ルールはJTU独自の詳細な取り決めである。なお、当ルールは、写真判定などで大がかりにチェックすることは難しく、今後の技術革新に期待したい部分である。
- ITUルールでは Competiors must mount and dismount their bicycle at the designated area or line. と表記されている。このことは、「指定エリア、あるいは指定ラインで乗降車する」との意味で、ラインを2本引きこの間(約10m)をゼブラゾーンとして印を付け、乗降車するようにとしている。競技者の目線を考慮した対応である。いずれにするかは、コースに応じて対応する。
状況例
- 降車ラインで慌てふためいて降車しようとした競技者が、転倒した。後続集団が、大挙してバイクフィニッシュに向かってる。
判断例
- 短距離レースでは、良く起こりがちな状況である。ルールを照らし厳密に判断すれば、
- 第2章競技者規範第7条(競技者の健康と技術)1.「..競技者は各種目の十分な 競技力を有し最良の健康状態を..」
- 第5章トランジションエリア規則第22条2.(進路妨害の禁止)
- 第6章バイク競技規則第24条1.(定義)「..他の競技者への妨害、危険行為を 禁止..」
少なくとも、以上の規則に抵触し、「他競技者の順位・記録に与える影響の重要度」と「競技者責任」の度合いは大きいといえる。これだけの「複合違反」が加算されれば、失格もありえるが、現実には、これを適用するほどにトライアスロンは熟成していない。
- 「レースのスムーズな流れ」を重視する場面である。マーシャルあるいは、スタッフは、速やかに転倒した競技者をコース脇に誘導し、後続に注意を与えるものだろう。なお、すぐ起き上がれないような状況では、マーシャルが安全のために手を貸して良い状況である。ただし、観客の目を意識しながらの「スピーディなアシスト」が肝要だ。
第22条(安全の確保と競技)
- (乗車禁止区域) <98年以降廃止(ダブリ)>
- 「乗車ライン」と「降車ライン」の中は、乗車禁止区域として規定する。
補足説明
- トランジションエリア内は、乗車禁止であることを再認識するルールと考えられる。さらに、競技者は、バイクコースによっては、一部乗車禁止エリアがあることを了解しなければいけない。
- 当ルールは、第21条(トランジションエリア定義)と第22条1(乗車禁止)に、包括される予定。

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