CAMERA


 

子供達が幼稚園に通うようになり、時間にゆとりが出来たころ、
お花の形態を記録するために、カメラを買った。

ニコマート、50ミリと80ミリのレンズ、プロクサー、露出計、三脚。
先ずは我が家の庭に咲く花を次々季節を追って撮影。小さな娘達の喜ぶきれいなお花ばかり。
チューリップ、アネモネ、パンジー、ひなげし、はなびし草、ひな菊、カンパニュラ、金魚草…
お花の縦、横、斜め、裏からも。がくや葉っぱの形とそのつき方。枝の出方と、芽のつき方。
もう子細に子細に、念入りに撮影…。

つぎは2軒先のお友達のお庭。離れのお茶室の周りには、可愛い山野草がいっぱい植わっている。
いちりん草、にりん草、ひとりしずか、ふたりしずか、あまな、ちごゆり、ほうちゃく草、
おきなぐさ、イカリ草、おどりこそう、むらさきケマンにしょうじょうばかま、ざぜんそう、
くろゆり、なるこゆり、うらしま草、さぎそう、あまどころ……
見れば見る程可愛い山野草に魅せられて、もう夢中!
毎朝お天気と相談しながら日参。 

やはり園芸種よりも、自然に野に咲き、山に咲く野草の微妙な色合いはすばらしい。
そしてその花の形の絶妙さ!

今度は、日本中に眼を向けた。北海道から九州まで…
北に原生花園があると聞けば行き、南にふでりんどうが咲くと聞けば行き、蓼科高原に
マツムシ草がいっぱいと聞けば、又カメラかかえてとんで行く。まるでミツバチのよう…

しかしそれで又分かった。<太陽がいっぱい>が好きな花。<ちょっと木陰>が好きな花。
岩場が好き、湿地が好き、高い所が好き。みんな個性と性格を持っている。
あるがままの姿のお花は実に活き活きしている。いかにも安住している。

お花じゃないーー、カメラのお話に戻ろう!
そうしてファインダーからお花を追って写している内に、お花だけでなく微妙な光りの移ろいに
敏感になってきた。日の出時、日暮れ時の一刻一刻の絞りの変化。一瞬一瞬の光の色の違い。
そんなこんなで、どんどん何でも深〜く感じることができるようになって来た。

今まで見ていながら気付かなかった、本当に見ていなかった、そんな世界が見えて来た。
若葉を透ける陽の光、葉っぱの周囲に付く小さな小さな水玉、逆光に光る茎の産毛…
そんなことにいちいち感動。今まで何とものを見ていなかったか! 

そんなおり、夫の転勤でニューヨークへ移り住んだ。
これ又撮影意欲を駆り立てるのに十分過ぎる魅力的な所だった。
朝、娘達がスク−ルバスで登校し、夫を駅まで送ればそのままカメラを積んで西に東に、
気の向くままに車を走らせる。渡米前にフィルムの入れ方だけを教わって、買って来たハッセルブラッド。
50ミリ、80ミリ、150ミリ、250ミリのレンズ、大きな三脚。
もうお花だけではない。見るもの見るもの何でも興味ある被写体、めったやたらとシャッターを切った。


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